父は初めて郊外に家を買ったときに、念願のピアノを買おうと思ったそうです。
田舎の古い家で隙間だらけ、土地は広く周りに何もなく、住宅事情の心配がありませんでした。
どうせ買うならグランド!と貯金をはたき楽器店に行ったところ、掘出し物と見せられたのがシードマイヤー
国産のに比べ少し高かったけれど、優しい音に惹かれ無理して買ってしまったそうです。
ちなみに本人ピアノ弾けません
ピアノといえば女の子の習い事・・・・ピアノを習い始めた小学生の私が、身分不相応にもこのピアノの弾き手となり、音大を出るまで長く付き合う事となりました。
可哀想なシードマイヤーは、ほぼ毎日数時間叩かれっ放し。
そして音大時代父の仕事の都合で両親と別居した私は、この相棒を実家に置去りにして、ヤマハのアップライトを抱え一人暮らしとなりました。
長い日々の後、やっと相棒を迎えに行きました。
誰も弾かないピアノは高温多湿の両親の家でボロボロ。ごめんね~
引き取りメンテしてもらいつつ弾いているうちに、やっと危篤状態から回復しつつあります。
再会当初はペダルは壊れ、鍵盤はガタガタ・・・塗装をしないと、崩壊寸前・・・・(お父さん、お金貸して!
)そして外装の後、信頼できる調律師さんが五感を駆使して大格闘して下さってます。
虫食いのフェルトをならし、ハンマーをほぐし・・・鍵盤のタッチを確かめつつ揃え・・
ついに白鍵に黒鍵が沈む様になり部品を交換しないと無理という事です。
又出費だ~~
と嘆く私に容赦のない一言「道化師の朝の歌の同音連打、今できないでしょ、これじゃ無理です!」・・・あ、ばれてる・・・
でもこのピアノは、とても優しい、けれどキラリとする音を求めると、それに応えてくれます。
ガタガタなのに私が求める音を一生懸命出してくれます。
ピアニストは耳で聴き、指の角度や動きの大小で音質の不揃いを調整してしまいます。
これは無意識にやってしまうので、楽器が変わればすぐ無意識に又調整してしまうのです。
調律師さんはあえて均等に弾きます。ピアニストにはできないな~・・・
調律は五感を駆使し、振動を腹で受け、指でタッチを感じ、耳をひっつけて行われています。
ピアノの状態から癖を見抜き、今どの曲を弾いているか、どんな音が欲しいのか、技術的な悩みは何か・・を質問し、解決してくれます。
この方は私と好みの傾向が同じで、繊細で美しい音を一緒に求めて下さいます。
ドビュッシーの霧の中にキラリと光る様な音、ラヴェルの一粒ずつ輝く様な、宝石箱の中の様な世界の音、・・・
相棒と、ホームドクターとともに、繊細な宝石の様な音を求めていけるなんて・・・
私は幸せものですね。