リスクマネー供給の話に戻る前にもう一回だけ脱線させて頂く。

産業政策に限った話ではないが、ここ20年この国で強調されてきたものは「競争」である。しかし、それにもかかわらず、経済は低迷・沈滞し、実質的に家計は貧しくなり、若者の雇用環境は悪化の一途を辿っている。

そりゃあ、そうでしょう。ゼロサムゲームの上で、他人をどう蹴落として、自分一人が利益を得るかを考えているだけの人間は、「新しい市場を切り拓こう」とか、「矛盾の中にまだ新たな価値構築のヒントがある」などというような発想はしない。なぜならそれは、まわりくどくシンドイことだからである。

綺麗事を言っているのではない。「競争」というのは、どこに帰着するかというと、大抵は「手っ取り早く果実を獲る方法」に行き着くのである。それは多くの場合、イノベーション(広い意味で)に繋がらない。

イノベーションの基本的な構えは、常に「協奏」である。先人やパートナーの知見の上に、課題解決の意思を持って新たな仮説を構築し、そしてジョインしてくれるメンバーとともに、トライ・アンド・エラーの果てにソリューションを見出す。これは学術研究の徒に限った話ではなくて、本当に価値あるビジネスを世に送り出した人にも共通のものである。

リスクマネーの問題といった具体的な事を論ずる大前提として必要なのは、少しでもイノベーションの環境を整えることである。

そうであるなら、「協奏」の風を吹かせ、土壌をつくっていくかということは、産業政策を語る上で欠かせないもののはずである。そうした事を口にする人は残念ながら皆無に近いが…。




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