前編では、①日本の明日を担う産業の振興、企業の育成のためにリスクマネー供給が不可欠であること、②その実現のために米国直輸入のベンチャーキャピタル型リスクマネー供給システムが機能しないことは、この10年超の歴史が証明していること、③リスクマネー供給には現実的に使えるリソースを使いつつも新しい枠組みが必要であることを述べた。

よくベンチャー企業、中小企業をタイプ分けして議論しようという人がいる。確かにこれは短期的な議論としては有効かもしれないが、長期的にはあまり有効だとは私は考えていない。経済学ではよく短期の議論と長期の議論を分けて論ずるが、経営学においては短期と長期という論法を殆ど用いない。だが、実際の経営においてもこれは重要な問題である。

やり出すとそれだけで本が一冊書けてしまうような議論になるが、少なくとも株式会社というのは、その成り立ちからして、長期的には配当たるインカムゲインを得るか、株式そのものの売買によってキャピタルゲインを得るための器である。だから利益拡大は宿命づけられている。

経営者によって色々な考えがあり、一定規模以上の事業の成長・拡大を望まない人がいるも事実だろう。しかし、それで企業としての長期的な存続が可能かと言えば、なかなか難しい。スピード感の違いこそあれ、あるいは事業規模の拡大に結果的にならなくても、新しい収益源を絶えず求めることは、どんな安定企業にも課されている。

その場合に、自己資金と借入だけでそうした新しい収益源としての事業探索と展開が可能であれば良いが、長期的に見ればそれは難しい。銀行の人間は、それが商売だから資本コストの論理から、相手が“貸したい企業”であれば、「IPOのために必要という様な特殊事情でもない限り、エクイティファイナンスなどメリットがない」というが、借入過多の“これ以上貸したくない”企業には「資本を厚くしてもらわないと、もう貸せませんよ」と吐き捨てる。しかし企業経営はそんな理屈に振り回されているわけにはいかないから、いくら日本の企業社会が間接金融中心の金融システムで長く培われてきたとしても、もう少しポピュラーな選択というかオルタナティブとしてのエクイティファイナンスの一般化が必要だと私は思う。

そのためには一つの流れとして、インカムゲインの獲得と地域金融機関の間接金融の呼び水となることを目的とした、新たな地域インベストメントセクターの創設が欠かせない。

それは基本的性格においてキャピタルゲインを目的としている銀行系VCなどとは異なったものであり、かと言って直接金融や投資のプロでない地域金融機関の人間がデューディリジェンスをし、投資の意思決定をするというものでもないであろう。

またある独立系のVCがこうした地域金融機関から資金を集め、地域産業の振興を目的に掲げ、ファンド組成するケースは過去にもあったが、これもまたキャピタルゲイン目的を基本的性格とする限りIPO等を視野に入れざるを得ず、地域で必要とされるエクイティ需要とは大きなギャップがあって機能しなかった。また彼ら自体がVCとは名乗りつつも、大半のメンバーが事業運営経験のない金融機関出身者で占められており、投資判断軸において極めて稚拙でもあった。

インカムゲインの獲得と地域金融機関の間接金融の呼び水となることを目的とした、新たな地域インベストメントセクターの創設には、「地域投資委員会」のようなものが必要である。それは、ファンドに拠出する地域金融機関の人間とともに、地域を代表する経営者、広い視野を持ちつつも地域の事情に精通するビジネスコンサルタント、会計士・税理士等の会計・税務スペシャリスト、弁護士・司法書士・社会保険労務士などの法務スペシャリストで構成され、多様な観点からデューディリが行われ、地域を引っ張っていく志高い企業、地域資源を活かして事業拡大を図ろうとする企業等に、長期的視点で投資を行う委員会であり、これが額を含めた最終的な投資意思決定を行うというものだ。

「責任の所在を明確にせよ」という時に、特定の個人や法人をやり玉にあげることができるのを求めるのは新自由主義者の悪弊であるが、そんなことでは法外な報酬でも準備しない限り責任者をかって出る人間はいない。もちろんプロセスの透明化やスピードアップには十分に留意する必要はあるだろうが、こうした「地域投資委員会」の投資意思決定を前提とした、長期的な視点に立った地域投資セクターが機能してくれば、地域産業を構成する企業群からも、きっと新たなチャレンジャー生まれる。そうした風土が年月を重ねて、地域産業を甦らせていくのである。

今回は「これからの産業振興に欠かせない地域インベストメントセクター」について言及してみた。議論をすればきりがないので、この問題はこれぐらいで切り上げ、次回は「これからの日本を牽引する先端企業を生み出すインベストメントセクター」の話をしようと思う。乞うご期待。