ブログのリニューアルスタート。初回は、この冬審査員として関わらせて頂いている同志社大学のビジネスプラン・コンテスト、New Island Contest 2012 から見えてきたものについて。 

「同志社発の起業家を創る」をコンセプトとし、広く「ベンチャーマインドの喚起」を促すことを目的としたこのコンテストの、1次、2次審査の審査員を、
同志社大学商学部の熊野先生のお声掛かりで仰せつかっている。今は1次の書類審査が終わり、12月12、13日の2次審査へと向かう段階だ。2次は1次審査通過チームのプレゼンテーションを審査をさせてもらうことになっていて、これを通過したチームが来年1月12日の最終審査へと進み、そこでグランプリ、準グランプリ、New Island賞、オーディエンス賞、NICT賞などが選ばれる。

1次審査を終えた段階で主に感じたことは、
①当世の大学生の「情報感度」は極めて高い。しかし「情報感度」の高い学生ほど、クリエイティビティに乏しい気がする、
②「ゆとり」のはずだが、総合学習などを通じて「ゆとり」の代わりに得たはずの「自ら考える力」に大きな変化はない気がする、

③若者の一番の変化は、「人の役に立ちたい」という公共心の高まりではないかという気がする、
の3つである。もちろん仮説の域を出ないのだけれど。

①と②はある意味根本は同じところにあると思う。

SNSをはじめとするネットメディアや多チャンネル化した放送メディアにこれだけ晒されていたら、中身の吟味や理解の程は兎も角、「情報の吸収力」は上がるだろう。これが「情報感度」が高いということの表面なんだろうが、発想を纏めるとき、モノを創りだすとき、まず必要なはずの「情報の評価」「情報の整理」に傾けるエネルギーと時間が根本的に少ないのではないかと想像する。だからビジネスプランを見ていても、キーワードとキーワードの単純な掛け合わせでしかくなく、具体的なサービスイメージを活き活きと描き出すことができないものが少なくない。

これは当然、今の大学生が「ゆとり」と引きかえに得たはずの「自ら考える力」がさほどの伸びを示していないことも意味する。我々が大学生だった1980年代の後半(今の大学生が生まれる前だけど…)でも、ハイテクじゃないけどモーニングコールをサービス化してベンチャーをやっていた学生や、電通から絶大な信頼を得てSP(セールス・プロモーション)会社を興した学生起業家なんて人は関西にもいた(両方とも今は上場企業のトップだけど)。考えるだけでなく、アクションを起こしていたという意味において、東京はそんなに変わらないのかもしれないけれど、関西の学生はその点、行動レベルで随分大人しくなったとも言える。

しかし①にせよ②にせよ、これを学生の側の問題とするのは早計である。むしろ教える側の質の劣化や、貴重な社会的経験の機会を与えてあげることができていない環境の側にこそ問題は大きい。だからこそ、今回のビジネスプランコンテストのような「意識的」な試みが多発的に持続的に行われるような動きが必要なのだと改めて思う。

また③は、私にとっても正直驚きであった。

Facebookでも書いたけれど、今回のビジネスプランコンテストの1次審査エントリー52プランの大体2~3割が、何らかの社会問題の解決を起点としたビジネスプランであったからだ。近年、社会起業家や社会的企業に関する書籍は数多出版されたし、そういものの影響も確かにあるのだろうが、こうした「社会起業的ビジネスプラン」のうち、約半分くらいは自分に身近な問題をビジネスによって解決しようとする、ごく自然なものであった。これは、ヒルズ族、ホリエモンに代表される00年代中盤のベンチャー・ムーブメントと一線を画した流れが、若者の中に確実に定着しつつあるということだと思う。

私は同志社はもちろん京都の大学は一つも受験せず、学生時代の遊び場は神戸・大阪であったため、極めて京都に縁が薄い。同じ関西でも京都の学生文化というものがよくわからないところがある。社会的企業や社会起業家に関する学生・若者の動きを見ていても、フローレンスの駒崎弘樹氏もそのプログラムに参加したETICという社会起業支援NPOが東京にはあり、関西ではedgeという大阪のNPOが支援組織の代表格となっているが、この分野になると最も学生が集積されているはずの京都、しかも「良心を手腕に運用する人物」の育成を建学の目的に掲げる同志社出身者で、めざましい活躍をしている人が少ないのが不思議で残念な気もしていたのだが、既述の様なビジネスプランの状況を思えば、それも何かのきっかけで変化しそうだ。

もはやこうした社会起業家や社会的企業を育む仕組みは社会の端ではなく、真ん中に位置づけられてしかるべきだろうし、この分野においては、東西格差もまだそれほど大きくはない。解決すべき社会的問題にしても、東京に居ては見えないものが、関西に居れば見えるというものも少なくないであろう。若者を賦活する大人の役割が、ここでも大きく問われていると感じた。

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