土地に、歴史に…人間は常に変化をもたらす | 019|まる・いち・きゅう

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丸い地球をまわりながら考えていることの記録

シンガポール本島から南へ6.5キロほどのところにあるセントジョーンズ島(St. John's Islan)、そして隣接するラザルス島(Lazarusu Island)に行ってきた。市街地からバスで5分~10分のところにあるMarina South Pierという埠頭からフェリーが出ているため、半日あれば気軽にいける。週末の気晴らしには持って来いの場所だ。



Lezarusu Islandの砂浜


シンガポールは埋め立てを繰り返し国土を広げてきたため、実は本島のビーチのほとんどは人工的なものである。先日友人に聞いたところによるとわざわざ砂をインドネシアから輸入して砂浜を作っているとか。それに比べて今回訪れたSt John's Island、Lazarus Islandの海岸は自然のままであるため、豊かな珊瑚やマングローブを楽しめる。運がよければイルカにも出会うことができるようだ(もちろん私は運が悪かった)。



島にはお店は一軒もないので食べ物を持ち寄ってピクニック


さて・・・もともとはPulau Sakijang Benderaという名称で知られていたSt John's Islandは、19世紀から20世紀中盤まではコレラや脚気、天然痘の患者を隔離するために使われていたという。また、移民の審査や薬物に手を染めた人たちのリハビリがこの島で行われていた時期もあるようだ。砂浜に座り、遠くに貨物船を眺めながら、その昔隔離されていた人々はどのような気分でこの景色を見たのだろうと考えた。そういえばかつてウガンダに行った時も、同じように過去に隔離施設だったという場所を見学に行ったことがあった。その時もその場所の言いようもない静けさになんともいえない感情をおぼえた。




今は隠れ家的無人島としてのんびりと自然を満喫できるSt John's IslandとLazarus Islandだが、聞いたところによるとシンガポール政府観光局はこの二島を含む南の島々を対象とした開発計画を進めているらしい。今ではユニバーサルスタジオや高級ホテルが立ち並ぶようになったセントーサ島と同じような娯楽・観光施設をつくるつもりだとか。隔離施設からのどかな無人島を経て、次は商業施設が立ち並ぶ島か…と人間の手によっていとも簡単に変えられてしまう島の運命の儚さを想う。このようにくるくると姿を変えながら、土地や文化というのは段々と形を変え、人々の記憶を変えていくのだろうか。


 


そんなことを考えながら今週末読んだのは角川文庫出版の「宋姉妹:中国を支配した華麗なる一族」(伊藤純・伊藤真 著)。宋王朝の繁栄と衰退を、宋三姉妹に焦点をあてて個人のエピソードとして紡ぎながら描いていく。この本は中国という国の共産党政治体制がどのような歴史のもとに築かれているのか改めて整理する上で非常にわかりやすく興味深いものだった。そして何よりも、今よりも半世紀以上も前の中国で女性があそこまで政治において中心的な役割を果たしていたというのは衝撃的だった。国際政治において欠かせないプレーヤーになりながらも(あるいはそれ故というべきなのか)時に強硬な姿勢を見せる中国についてもっと知識を深めたいと思う。