ケンブリッジの風 27 『サバティカル休暇』 | 019|まる・いち・きゅう

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丸い地球をまわりながら考えていることの記録

先学期までスーパービジョン、いわゆる個別指導(20106月号参照)を担当してくれていた先生に今学期の予定を決めようとメールを出すと「すまないが今学期はサバティカル休暇なんだ」と言われた。



サバティカル休暇とは研究のための有給休暇のこと。フィールドワークに出かけたり、大学に残って論文・本を執筆したりと休暇の使い方はまちまちだが、生徒の指導はしないのが原則だ。当初は「そんな無責任な」とこの制度に戸惑いを隠せなかったもののさすがにもう驚かなくなった。ケンブリッジ生活も3年目。今まで何人の先生から「サバティカル通告」を出されたかわからない。



先日チャーチルカレッジ客員教授の山中燁子氏と話していると、チャーチルではカレッジ長が1年のサバティカル休暇をとって世界一周の旅に出ているそう。しかもブログでその様子をカレッジの教員に随時報告しているというのだから驚きだ。



ケンブリッジでは6学期につき1学期分サバティカル休暇が与えられ、6年勤続すれば1年のサバティカル休暇がもらえる。私の印象だとほとんどの教員が短いほうの6学期周期でこのサバティカル休暇をきちんととっている様子。



さすがイギリスと思われるかもしれないが、実は日本でも多くの大学がサバティカル研修の制度を設けている。例えば東京大学では平成16年度に「東京大学教員のサバティカル研修に関する規程」が定められ、勤務期間が
7年を経過するごとに原則として6カ月以上1年以内 
の継続した期間をサバティカルとして自主的調査研究に専念できるらしい。ただ、正式な統計はないものの取得実績は
東大で平成 20 年度に 21人 、京大では平成20年度に8人、翌21年度には3人だとか。今年度だけで私の指導教官の実に4分の1がサバティカルをとっているケンブリッジとの定着度の差は明らかだ。日本ではサポート体制の欠如もネックのようだ。ケンブリッジにサバティカル制度で来ているある日本の大学の先生は、研究室がうまく機能しているか不安だと漏らしていた。



前述のチャーチルカレッジ学長のエピソードはかなり極端な例だろう。しかし研究大学の役割を考えた時、大学教員が気兼ねなく自分の知識と能力の向上、他国の学者らとの交流に時間を使えるのは大切なのではないだろうか。


今年の春はだいぶ遅れてやってきました 

(ねっとわーくSAITAMA 6月号より)