循環取引≒上場企業版の融手操作 - インデックス - | OX理論が測る企業価値

OX理論が測る企業価値

26年前、資金繰りに特化した財務分析手法が産声をあげた。
それは、【あらかん】から【OX理論(アラーム管理システム)】へと進化を遂げた。
【OX理論】を土台として、企業分析にいそしむALOX社専属ライターのメールマガジン、それに付随するこぼれ話を掲載。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━2013.07.02
【Alox】  『第三の眼 ~看破する力~ 』  http://alox.jp/    vol.1
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◆ 目 次 ◆

【1】  今号の一言   『第三の眼 ~ 看破する力 ~』

【2】  本文        『循環取引≒上場企業版の融手操作 - インデックス -』

【3】  編集後記     『毎日続ける。ただ、それだけ。』


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【1】  第三の眼 ~ 看破する力 ~
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本日より、アロックス社によるメールマガジン
『第三の眼 ~ 看破する力 ~』を配信させて頂きます。


人は、世界経済・日本経済・企業・個人・事象を評価する時、
自らの知識や経験に基づいた“”によって、
意識するしないに関わらず物事を整理し、評価しています。

この“”は、言うなれば、第三の眼
第三の眼は、日々の研鑽によって“開眼”することができ、
その結果として「物事を看破する力」が身に着くと考えます。

本メールマガジンは、
物事を整理し、評価し、本質を見抜く能力(看破する力)の向上に
寄与することを目的」として、配信させて頂きます。



<“件名”について>
件名から内容の区分ができるように、タイトルを下記のように記載します。
【Alox分析】 →  経済や企業の分析、所管を掲載
【Alox解説】 →  会計や法にまつわる解説を掲載
【Alox案内】 →  紹介したいサービスや製品、セミナーの案内を掲載
【Alox】    →  上記に当てはまらないものを掲載

<配信回数について>
基本、【Alox分析】を月に1回配信、それ以外はランダムに配信させて頂きます。
(ただし、月に1回配信できない場合もありますので、ご了承ください。)

それでは、記念すべき第1回の本文をお楽しみください。



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【2】  循環取引≒上場企業版の融手操作 - インデックス -━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━



【報道概要】
2013年6月12日、証券取引等監視委員会はジャスダック上場のインデックス(4835)に対し、
有価証券報告書等の虚偽記載容疑で同社や会長宅など数か所の強制調査に乗り出した。

同社は、複数の協力会社間で架空の仕入れや販売を繰り返す“循環取引”によって売上高を
数十億円水増しした疑いが持たれている。

2013年6月27日には、東京地裁へ民事再生法の適用を申請した。



---- アラーム管理システム(OX理論)の分析情報 ----

【会社概要】
社  名      株式会社インデックス
市  場      ジャスダック
証券コード     4835
業  種      情報・通信
従業員数     551人(連結)
所在地       東京都世田谷区太子堂4-1-1 キャロットタワー
監査法人     清和監査法人(2012年8月期)


【アラーム管理システム(OX理論)】
OX格付      B  【16】 (2012年8月連結決算)

【分析表1・7】



ALOXALOXALOXALOXALOXALOXALOXALOXALOXALOX
<アラーム管理システム(OX理論)とは>
<OX理論(アラーム管理システム)とは>

ALOXALOXALOXALOXALOXALOXALOXALOXALOXALOX


同社は、倒産した日本振興銀行と融資や株の引き受け、
資産の売却等で“連携”していた。

日本振興銀行の倒産後、負債の処理を実行し、昨今まで何とか持ちこたえてきたが、
その持ちこたえるために実行した会計上認められない行為”が露見したと言える。

アラーム分析(OX理論)においては、2010年から厳しい評価である。
直近の2012年の評価は、特別コメントが3つも表示されるという異例の結果であった。

コメント内容も、インデックスの財務状況を体現していた。

<2012年の特別コメント>
「売上規模が自社の体力を超えており、リスキーで1年以内での破綻あり。」
「保証債務過大。」
「貸付金、その他で長期的に不良化の恐れあり。」


---- 終了 ----


【驚きなき粉飾報道】
「インデックスに循環取引の疑い」というニュースに接した時、大半の人は
“報道が出たという事実”に対して一瞬だけ驚き、
即「さもありなん」と思ったはずだ。

ここ数年、インデックスは倒産危険度ランキング等の上位におり、
昨年配信したアラーム分析ランキングでも下位20位にランクインしていた。

<アラーム分析ランキング -2011年2月~2012年1月->



【循環取引の“地位確立”】
昨今、上場企業における粉飾手法として、循環取引は存在感を高めており、
“一定の地位”を確立した。

昨今の循環取引一覧を利用した企業は下記となる。
(「不適切な取引に関するお知らせ」のリリース順)
 <リリース日/証券コード/市場/社名>
・2012/02/20 7270 東証1        富士重工業
・2011/10/25 2140 アンビシャス   クラウドゲート
・2011/06/17 6660 アンビシャス   インネクスト
・2011/04/16 7538 大証2部     大水
・2011/03/24 2681 東証1部     ゲオ
・2011/01/24 7267 東証1部     本田技研工業
・2010/08/27 7723 東証1部     愛知時計電機
・2010/07/22 3823 マザーズ    アクロディア


【循環取引の目的】
循環取引とは、実態の伴わない商取引に基づき、
アレンジャー会社と協力会社間で製品の仕入れや販売を繰り返す取引である。

循環取引の主な目的は、業績が堅調であることをアピールすることである。
それが、上場企業において、多用されている一因である。

アピールの結果として、銀行からの融資や市場からの資金調達を行い易くなる
というメリットがある。

一方で、非上場企業における循環取引といえば、融手操作(俗にいう融手)である。


【融通手形とその目的】
融通手形とは、実態の伴わない商取引に基づき、
資金繰りに窮した会社が取引先に振り出してもらう手形のことである。
その手形を銀行で割り引くことにより、資金調達ができる。

往々にして、手形決済日には、手形の額面の金額を支払う必要があり、
それを“前回とは違う取引先”に“前回の金額を超える手形”を振り出してもらい、
前回とは違う銀行”で割り引いた調達した資金によって、
前回の手形”を決済するといったことがある。

このようにして、一度はじめた融通手形を決済するために、
さまざまな取引先に融通手形を振り出してもらうことを繰り返し、
循環取引と同様に“融通手形ネットワーク”が構築されるケースは少なくない。

とは言え、上記の通り、融通手形はあくまで資金調達の手段として利用されている。


【循環取引を行うために必要なもの】
循環取引と融手操作は、架空の取引をアレンジャー会社と
協力会社間で繰り返す点で似ている。

しかし、決定的に違うのは、「粉飾を行うための原資の有無」だ。

ほとんどの循環取引では、アレンジャー会社が架空売上を計上するために
協力会社へ出資や貸付け等で現金を融通する。

その現金がさまざまな取引を経て、最後は架空売上の回収という形態へ
変貌して戻ってくる。

融手操作では、現金が欲しいがために、
資金繰りに窮した会社同士が粉飾を行うのであり、
粉飾を行うため現金を用意することはない。

それゆえ、市場等から粉飾の原資である現金を調達することが
できる上場企業には、循環取引はお誂え向きである。

粉飾が発覚しなければ、業績好調というイメージのもと、
株価上昇や第三者割当増資、企業買収さえも可能となり、
業績不振の上場企業には魅力的な手段に映るだろう。

<循環取引のフロー>
1.アレンジャーである企業が現金を用意する。
2.アレンジャーが現金を子会社経由や出資等によって、出金する。
3.アレンジャーと協力会社で架空の売上を計上する。
4.協力会社からアレンジャーへ現金が売上代金として振り込まれる
5.1から4をアレンジャーは多数の協力会社と行う。




【循環取引を見抜く!】
財務分析によって、循環取引を見抜くことは難しい。
なぜなら、売上や仕入れの伝票があり、売掛金の回収もなされており、
通常の取引と何ら変わりがないからである。

しかし、循環取引の特徴に着目することにより、
「循環取引の存在する可能性」については、予測ができる。

つまり、循環取引の原資である「現金」に焦点を絞る訳だ。



【回収見込みのない出金を探せ!】
インデックスの財務諸表をもとに、身の丈に合わない現金の出金がないか検証してみよう。

<First Step:現金と月商  算式:現金÷月商>
現金と月商の推移を時系列で並べ、月商の何倍の現金を保有しているのか確認する。
                                            (単位:百万円)
          2010年8月 / 2011年8月 / 2012年8月
〔現金〕 4,369 / 1,485 / 875
〔月商〕 2,895 / 1,911 / 1,526
〔現金÷月商〕 1.51 / 0.78 / 0.57



月商の1.5倍だった現金が、直近では0.5倍となっている。

売上が上がらないから現金が減っているとともに、
売上に貢献しない現金の出金がある」とも解釈できる。


<Second Step:貸付及び投資と月商 算式:貸付金+投資有価証券÷月商>
短期貸付金・長期貸付金・投資有価証券の合計値が、月商の何倍となるのか確認する。
                                                     (単位:百万円)
          2008年8月 / 2009年8月 / 2010年8月 / 2011年8月 / 2012年8月
〔短期貸付金〕    0 / 6,651 / 5,100 / 3,134 / 186
〔投資有価証券〕  25,103 / 19,393 / 13,028 / 10,693 / 7,851
〔長期貸付金〕    9,114 / 11,404 / 12,285 / 15,020 / 6,164
〔上記合計〕      34,217 / 37,448 / 30,413 / 28,847 / 14,201
〔月商〕        10,295 / 6,188 / 2,895 / 1,911 / 1,526
〔上記合計÷月商〕 3.32 / 6.05 / 10.51 / 15.10 / 9.31
※算式に無形固定資産を追加して分析した方が良い場合もある。

2008年は月商の3倍だった貸付+投資額が、10倍~15倍となっている。

過去の数値と比べると、明らかに「外部へ現金を出金し過ぎている」という結果に
なっているのは間違いない。

これまでとは明らかに規模の違う貸付や投資の支出は、
循環取引の原資として利用される現金がそこに潜んでいる可能性がある。

ちなみに、投資活動に積極的なソフトバンクが、2013年3月の連結決算に
計上した投資有価証券の額(貸付金は無い)は、月商の3倍であった。
(現預金も月商の5倍ある。)



【総括】
インデックスは、民事再生法を申請した。
この結果、循環取引の詳細な内容を記載した
『第三者委員会による調査報告書』がリリースされることはないだろう。

今後、財務余力のないインデックスは、
「スポンサーを募り、不良部門を切り捨てた優良部門のみの会社となるか」
それとも「資産管理会社となり、優良部門等を他社へ売却してから、
ヒッソリと破産するか」のどちらかしか道はない。


言い古された言葉だが、インデックス事件は氷山の一角である。
あなたの取引先、融資先、投資先、子会社に、
過去数年の売上規模に比して、貸付金や投資勘定の額が多い場合は、その中身について
精査する必要がある。

取引先の決算書に、回収見込みのない貸付や投資の存在を認めることができた場合、
傷が広がる前に撤退しなければなるまい。


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【3】  編集後記   『毎日続ける。ただ、それだけ。』
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「毎日続ける。ただ、それだけ。」

10年以上前のテレビCMで、バレエダンサーが発した言葉だ。
なぜか頭に焼き付いている。


その言葉を私なり解釈すると、下記となる。

毎日続ける内に、効率が上がる。
毎日続ける内に、改善すべきポイントが見えてくる。
毎日続ける内に、質が向上する。
毎日続ける内に、意識せずとも、高レベルで出来るようになる。

「継続は力なり」とは言うが、何も考えずに継続しても力になるわけがない。

考えて意識して続けるからこそ、力となると思っている。

それゆえ、冒頭の言葉は
「毎日考えながら続ける。ただ、それだけ。」と私は捉えている。

アロックスも本メルマガも、考えながら走っていきます。
(息切れしない程度に適度に休みますが)


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<div> 【Alox】  『第三の眼 ~ 看破する力 ~』     http://alox.jp/      vol.1</div>