リーマン・ブラザーズ証券の倒産 -スズメバチの一刺し- | OX理論が測る企業価値

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26年前、資金繰りに特化した財務分析手法が産声をあげた。
それは、【あらかん】から【OX理論(アラーム管理システム)】へと進化を遂げた。
【OX理論】を土台として、企業分析にいそしむALOX社専属ライターのメールマガジン、それに付随するこぼれ話を掲載。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━2008.09.19
オックススタンダードメールマガジン 『 S T A N D A R D 』

リーマン・ブラザーズ証券の倒産 -スズメバチの一刺し-
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『事後解釈』


「事象が起きてから、さまざまな理由を見つけて解説すること」
と私は理解している。




サブプライム問題、リーマン・ブラザーズ証券の破綻など
評論家やアナリストが、理由を“探して”解説している。


それ自体は必要なことであるかもしれないが、重要性は低い。
より価値が高いのは、今後の“予見”である。


今起きていることの解説は、誰でもできる。
しかし、“今起きていないこと”の予見は難しい。
そして、その予見を言うことは勇気が必要であり、リスクも高い。





翻って、企業審査である。
これも勇気がいる。


なぜなら、生存企業を倒産する可能性が高いと判定し、
その理由を述べなければならないからだ。

その価値と重要性は極めて高い。



それでは、OXメルマガ『 S T A N D A R D 』をお楽しみください。



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リーマン・ブラザーズ証券の倒産 -スズメバチの一刺し-
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【報道概要】
米国第4位の大手証券会社であるリーマン・ブラザーズの日本法人、
リーマン・ブラザーズ証券株式会社が、9月16日に東京地裁へ
民事再生法の適用を申請した。


サブプライム関連損失による下方修正、資金調達・身売りの失敗、
市場の圧力等により、米国本社が連邦破産法11条の適用を申請した。
日本法人もその翌日、破綻した。




【会社概要】
社名        リーマン・ブラザーズ証券株式会社
          リーマン・ブラザーズ・ホールディングス株式会社
業種        証券業
従業員数      約1,300名
所在地       東京都港区六本木6-10-1


【破綻情報】
破綻日       2008年9月16日 民事再生法申請
負債総額      3兆9,473億7,300万円 (2社計)



戦後、協栄生命保険(4兆5,297億円)に次ぐ大型倒産


OX理論の分析対象外業種





【ハチが刺した程度!?】
ちょっと想像すれば、リーマン破綻の影響が甚大で
あることが分かる。
それゆえ、与謝野馨経済財政担当相の発言は、その見識を疑う。


「日本にももちろん影響はあるが、ハチが刺した程度。
これで日本の金融機関が痛むことは絶対にない。
沈着冷静な行動が求められる」


パニック抑制のための発言だとしても、
「ハチが刺した程度」ではないことは、
金融機関の破綻がもたらす影響を考えれば分かるもの。


たとえハチだとしても “スズメバチ”。
つまり、場合によっては、“死に至るほどの一刺し”である。





【広がる余波】
①<リーマンに融資していた金融機関の業績圧迫>

 
連日報道されているので詳細は省くが、
ある程度の担保を取っているとは言え、
影響が軽微ということはない。



公的資金返済の遅れや業績下方修正は起こる。
資金調達の必要性がある金融機関も出てくるだろう。
しかし、現状は資金を調達するのは難しく、
最悪のケースとしては米国と同様に、
身売りや破綻ということも考えられる。



金融機関の資金繰りが厳しくなれば、それは一般事業会社の
資金繰りにも影響を与えるのは、想像に難くない。




②<リーマン発行債券保有企業の損失>


これも同様にマスコミにて企業名が表示されているので
詳細は省くが、リーマンの債務不履行により
10億円前後の損失が発生する可能性が高い。


その損失に耐えることができる企業ならば問題ないが、
耐えられない企業は資金調達の必要性を迫られる。
しかし、①と同様に、今は容易に資金調達できる
環境にはない。
それゆえ、最悪のケースもありえる。




③<リーマンが大株主企業に対する触手>

該当企業には、今後どのようなことが起こってもおかしくない。
資金がある買収ファンドやハゲタカにとっては、
今はチャンス到来だろう。

リーマンが保有する株を何らかの形で入手しようと
画策することは容易に想像できる。


リーマンの後釜は、英バークレイズという憶測はあるが、
株を保有し続ける義理はない。
高値で売れれば、どこにでも売りさばくだろう。




④<不動産マーケットの信用収縮が加速>

リーマンというプレイヤーが退場したことにより、
さらに不動産市況は低迷し、関連業種は影響を受ける。
9月末、さらには10月前後の決算短信提出前後には
大手企業の破綻が起こる可能性は高くなった。




【市場の圧力は強まる】
今回のリーマン破綻劇で驚いたのは「市場の圧力」である。



詳細なデータは、2008年9月18日の日本経済新聞
『株価が物語る危険度』に詳しい。


日本においても、山一証券破綻時に金融株が“狙い撃ち”された。


多少の問題はあるようだが、日本企業にも情報開示制度が浸透した。
以前と比べて、投資家が入手できる情報多い。


今後は、有事だけではなく平時でも、
市場圧力による倒産や上場廃止が起こるのではないだろうか。



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【編集後記】
<リーマン訪問>

私は六本木ヒルズのオフィスへ行ったことがある。
かなりのカルチャーショックを受けた。


①エレベータが広くて豪華
②オフィスの椅子や机が最上級
③名刺印字部分(名前や部署名など)が凹凸している
④面談者の半分以上が外国人
⑤基本は、英語によるコミュニケーション


「こんなオフィスで仕事するためには、どれだけの稼ぎが
必要なんだろう。」
と短絡的かつ物欲的な感想を持ってしまった。



<新聞>
最近、新聞を読むのに時間がかかる。
それは、読まなければならないと感じるキーワードが
多いから。

信用リスク、倒産、上場廃止、ゴーイングコンサーン、
などなど・・・。

日本は、“バブル崩壊以来の危機にある”と言っても過言ではない。
(HNW)

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