監査の厳格化が破綻を招いた | OX理論が測る企業価値

OX理論が測る企業価値

26年前、資金繰りに特化した財務分析手法が産声をあげた。
それは、【あらかん】から【OX理論(アラーム管理システム)】へと進化を遂げた。
【OX理論】を土台として、企業分析にいそしむALOX社専属ライターのメールマガジン、それに付随するこぼれ話を掲載。

月刊BOSS 2006年7月号



OX理論は、独自の視点から企業の財務内容を格付しているが、2005年度OX格付評点ランキングにおいて、金融を除く上場企業3385社の中で最も低い評点だったのがアドテックスだ。CCC【-3】のOX格付評点から、財務的には壊滅していたといえる。

破綻の要因は2つある。1つは平成電電の破綻だ。アドテックスはジャパンワイヤレスに約50億円の売上を見込んでいた。しかし、ジャパンワイヤレスの大株主である平成電電が、200510月3日に民事再生を申請した。これにより、売上見込額を減額し業績予想を下方修正した。さらに調べるとアドテックスはジャパンワイヤレスの株主であることがわかった。つまり、平成電電の破綻余波により、出資先であるジャパンワイヤレスに見込んでいた売上が立たなくなった。それが破綻原因の1つだ。

もう1つは、監査の厳格化だ。アドテックスは昨年度の決算において、ゴーイングコンサーン(企業の存続可能性)を指摘されている。今年に至っては、決算報告の延期を3回も繰り返した。おそらく、度重なる決算報告の遅延が、『資金調達に関わる業務委託契約』を結んでいたLVI(親会社:バーテックスリンク)に二の足を踏ませたのだろう。LVIとの『資金調達に関わる業務委託契約』が4月10日に解除され、その3日後に破綻することになったのだ。

日本公認会計士協会は、3月30日に『財務諸表の監査における不正への対応』の草案を公開した。「職業的懐疑心」の項目では「経営者、取締役及び監査役等の信頼性と誠実性に関する監査人の過去の経験にかかわらず、監査人は、不正による重要な虚偽の表示が存在する可能性を認識し、監査の全過程を通じて、職業的懐疑心を保持しなければならない」とある。つまり、今後は企業を“性悪説”に基づいて監査する必要があるということだ。

カネボウやライブドアの粉飾決算事件により、世間の監査法人に対する風当たりは強い。今後は、“厳格”な監査によりマーケットから追放される企業が増えるかもしれない。

発行元 オックススタンダード() http://www.ox-standard.com/