月刊BOSS 2007年1月号
9億3000万円(前年比22%増)。京都信用保証協会が2006年4月から9月までに繊維関連で代位弁済した金額である。代位弁済とは、返済不能となった信用保証付きの貸付金を保証協会が企業に代わって金融機関へ支払うことをいう。上半期で繊維関連の弁済が急増した原因は、8月31日に負債総額200億円で自己破産した企業の影響だ。それは、グループ全体で全国に500店舗を展開していた大手呉服販売チェーンのたけうちである。
たけうち自体の財務内容は、破綻するほど悪くない。むしろ、優良の部類に入る。しかし、展示会商法や来店した客を購入するまで帰らせないといった強引な販売手法が批判を浴びていた。各地の消費者生活センターには被害相談が相次いでおり、破綻は自業自得といえる。
この破綻の余波は、今なお呉服・着物業界を揺るがし、9月27日には呉服卸の次田が連鎖で破綻した。さらには生産調整に踏み切る業者、人員削減、一部の企業には信用不安が起きている。上場企業でも、3社がホームページ上で『債権の取立て不能又は取立遅延のおそれに関するお知らせ』を発表した。3社とは、ツカモトコーポレーション、ウライ、市田
である。通常、企業の倒産により最も被害を蒙るのは銀行だが、今回はほとんど無傷だという。ある銀行では、社会問題となっている企業との取引はCSR(企業の社会的責任)の観点から控えたという話だ。
昨今、企業のCSR対応が注目されている。企業は社会的存在として、法令遵守や納税といった責任を果たすだけではなく、社会の潜在的な要請に応え、社会貢献や情報公開を自主的に行うべきであるという考えだ。
政府は連鎖倒産防止のために、セーフティネット保証を発動し、経営相談窓口を設けた。しかし、各企業が銀行と同じようにCSRを意識した営業活動を行わなければ、根本的な解決にはならない。破綻の影響は下流から上流へ、小売業から卸売業、製造業へ広がりつつある。CSR経営が今後の企業活動の柱になる時代がやってきた。
市田株式会社
証券コード(市場) 8019(東証1部)
OX格付【評点】 BB【40点】(2006年3月連結決算)
株式会社ツカモトコーポレーション
証券コード(市場) 8025(東証1部)
OX格付【評点】 AA【80点】(2006年3月連結決算)
ウライ株式会社
証券コード(市場) 2658(JASDAQ)
OX格付【評点】 AA【83点】(2006年3月連結決算)
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