森月
立ち込めた霧のなか
ぼんやりと浮かぶ月が
立ち並ぶ木々の影を
そっと僕に差し伸べた
静まり返った常闇の奥深くまで
切り込んでくる
青白い
不思議な光
ぱたりと落ちる水滴が
きらり、また、きらりと
強く、光を含んでは
瞬く間に吐き出して
どこかへ消えてゆく
僕は
恐る恐るその光の柱へと近づいて
水を掬い取るように
両の手を差し出した
ひんやりとした空気はそのままに
どこか
ふんわりと包んでくれているような
不思議な感触がそこには在った
寂しい・・・
悲しい・・・
ぽつり、ぽつりと
急に溢れ出てくる
涙
それもまた
青白い光を
これでもかと吸い込んでは
漂う吐息のように
瞬く間に消えて散っている
霧の遥か向こう側
微笑む月が雲の形を教えてくれる
震える身体を
温めてくれる温もりは無いけれど
誰かが、そっと歌ってくれているような
心地よさが心にまで染み込んでくる
あぁ、このまま眠ってしまったら
きっと、きっと
楽だろうになぁ・・・
あぁ、このまま落ちて行ったら
きっと、きっと
楽だろうになぁ・・・
影ばかりの森の中
確かに其処に在る月を眺め
肌寒い外の空気に身を寄せて
逃げ出したい僕と
何か、未練を抱きしめた僕が
何もない光の中で
誰にも知られずに
声だけは出すことなく
睨み合い
お互の胸にトンと拳を乗せた
いつの間にか
霧は晴れ
いつの間にか
空は星々で満たされた
相も変わらず森は影を
差し伸べて
僕を
月明りのダンスへと誘ってくる
あの白銀に照らされた
小さな空間へ
小さな黄色い花びらのドレスの裾を
持ち上げてお辞儀をしている
露をいっぱいに溜めた
瑞々しく、麗しい姿に
僕は、胸の奥を静かに高鳴らせ
そして、なぜか
ゆっくりと
お辞儀をしたんだ
そこまでは
覚えている
でも
いつの間にか
眠ってしまって
いつの間にか
朝になってしまって
目が覚めた時には
つまらなそうにそっぽを向いた
朝霧が
背を向けて
森の中へと
帰っていくところだった・・・
僕は
ただそれを
眺めることしか出来なかった
空には
青の世界に眠る
白い月がぽつんと
漂っているだけだった・・・
byキケロ