始天、終天
始天
見上げた空は
見たことのない
色でした
真っ白な空には
更に白い太陽が在り
大地には
黄金に輝く麦の原が
どこまでも続いていました
それはもう・・・
走っても
走っても
果てなど見えぬほどに・・・
ふと、手を見ました
しかし、そこに手はありませんでした
腹を見ました
しかし、そこに腹はありません
足もありません
ただただ、風に揺れる麦の穂が
カラカラと音を立てているだけでした
そう、身体という感覚があるだけで
私という存在は
無かったのです
気が付いた頃には
全てが曖昧であることに
胸を締め付けられました
ですが、そのもどかしさを叫んだところで
あの太陽も
あの空も
この大地も
麦の穂のひとたねでさえ
答えては、くれなかったのです・・・
終天
宙は、眩いばかりの命を鏤めて
星を眺めているようでした
かつて眺めた
見知らぬ空と違って
美しいと素直に思います
少しばかり肌寒い風と共に
青白い世界を眺めていました
そこは見渡す限りの銀色の花で埋め尽くされ
どこからともなく
懐かしい香りが溢れ
甘えてくるように
優しく絡んできます
また
何となく、ですが・・・
あの頃とは違い
私が誰で
何をしてきて
ここに至るのか
隅々まで響く声をもって
語ることが出来ることに
何故か、感謝、が込み上げ
さらには
残してきた者たちへ
謝罪、の言の葉も湧き上がり
今この場に在る
何ものよりも
熱く、熱く燃え上がるものが
頬を静かに
止めどなく流れています
そして
天空に聳える
およそ月と呼べぬ月が
輪を描いて輝き
私を
青き水晶の様な影に変えていました
それが
おそらく
私が壊れぬ理由であり
せめてもの救いでもあるように感じるのです
どこまでも歩き
いつまでも変わらぬ
終焉の園
静寂と平穏と平和が並ぶ
一言で言えば
つまらない場所
けれども
ここに出口はない
故に
私は、永劫
死を受け入れ続けなければ
ならないのだろうな・・・
と、溜息を一つ
白く暖かなものと共に流しました
by銀翼のキケロ