傷成
私の使う
この眼鏡には
不思議な力が在る
真実との間に隔たり
見るものを捻じ曲げて
全てを絶望に変えるのだ
美しい水の流れは
人々の血潮に
あの木々の輝きは
閉じることのない眼差し
生まれたことを初めて恨んだ
生まれてきてしまったことを
初めて後悔した
あの日
閉じたくても閉じることのできなかった時間が
私の心体に焼き付いた
全てを否定したくて
それを叫びと共に海へ投げ捨てた
残された世界には
不安ばかりが霞となって
広がって
泣いても、泣いても開けることはない
誰もいない崖の淵で
蹲ることしかできなかった
絆を叫ぶ
人々の声
愛を謡う
人々の声
届かないのは
私だけだろうか・・・
絆を見せる
遠くの人々
愛を掲げる
知らない人々
拒絶するのは
私だけだろうか・・・
一人の背中に
目を奪われた
ある日の
浜辺
無気力な海月のように
歩く私
刻まれた深い傷跡に
似合わない決意の瞳
疲れた声で
浴びせる冷や水すら
蒸発してしまう
熱い、熱い答え
朝日も夕日も
光に包みきることができず
私に影を踏ませる
だらけた腕が持ち上がり
ようやく見つけた安堵の裾を
握り締め
倒れ込んだ
それすらも夢であると
気が付かぬまま
深く
深く
一息後に
眠る
永遠に
永遠に
幸せになれたと
錯覚したまま
by幻想師キケロw
傷は外だけでも内側だけでもない
心に付いた見えない傷は
人を無傷で殺すこともできるんだ
殺した本人には
殺した自覚なんてものは
ないけどね・・・