かかし | 梟霊のブログ

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とことん変り者なため・・・
絡み辛いこと必死
静かに、生暖かく見守ってください

かかし



遠い昔
約束の丘
夕日に波立つ稲穂の真ん中に
人影があった
見つめる
いつも同じ南の空
あどけなさが残る少女は
何かの幻影でも見ているのだろうか・・・
時折
苦しそうに、自らの胸の布地を
クシャクシャに握り締めた

少女が
女性として髪を靡かせる
決まった時間
決まった時期に
似たような場所で
ずっと、ずっと遠くを見つめる
悲しく、愛おしそうに・・・
あの時の余韻を引きずっているかのよう
田園は朱色に燃え上がり
青空に
彼女と
トンボの影を焼き付けた

杖を突いた老婆が
肩を揺らして
いつかの風景に重なろうとしていた
白く輝く髪は
美しく揺れることはない
遠くに在る人影よりも
遠くに在る物陰よりも
すっと消えそうな姿
背中が物語る
長い、長い年月
褪せぬ恋心
待ち続けた人生を
誇らしげに振り返るように
また、夕空を眺めていた

夕焼けに
どこまでも広がる
稲穂の海
時折、波のような人影が
通り過ぎているが
止まることはない
さらさらと擦れる豊かな音だけが
語り継ぐ
かかしと首に輝く指輪の物語
誰も気づきはしないだろう
遠くを見つめている
木と布に秘められた恋の物語
悲しい物語
最後の時までも
帰ってくると信じていた少女は
今もここに居る
そして、指輪の傍らに
壊れた鉄の筒がぶら下り
鈍い光沢をこちらに向けている
錆が酷く、元がなんだったのだろうと
知らぬものが首を傾げる
あまりにも不相応な吊り合いな代物
しかし
暖かな秋の夕日の中に在っては
どことなく馴染んで
なんとなく嬉しそうに見えた
二つの輝き
後ろに伸びた
抱き合うような影が
もしかしたら、その疑問の答えなのかもしれない・・・
だが、そのかかしは
微笑むばかりで
それが答えだ、とは言ってはくれなかった








by幻想師キケロw