夢は儚く、願いは心の中で | 梟霊のブログ

梟霊のブログ

適当に詩をUPします。
評価に、興味なし
フクロウ大好き
きのこ大好き
山菜大好き
ハーブ大好き
とことん変り者なため・・・
絡み辛いこと必死
静かに、生暖かく見守ってください

夢は儚く、願いは心の中で




夜空を見上げた少女は
満月を前に
悲しみに沈む

英雄を夢見た少年は
朝日を背に
英雄に立ち塞がる剣となった

一枚の手紙は
唯一つの真実となり
唯一つの記憶である
愛で紡がれた
文字の一つ一つが
なぜ、その愚行へと導いたのか
疑問を投げかけるほどに
真っ直ぐである
抱きしめられて
クシャクシャに押しつぶされる
扉の向こう
最後に振り向いて笑った姿が
いつまでも焼き付いている
溢れ出る涙は
後悔を含んでいても澄んでいて
幾ら、この想いが冷たく褪めてしまっても
温もりを失ってはいなかった・・・

夢は儚く、願いは心の中で
少年は、青年となり
幾度となく
世界の希望と、剣を交えた
闇に染まろうと
血に染まろうと
希望だけは、決して揺らぐことなく
決して染まることはない
一点
死を見つめていた
憎しみはない
恨みはない
怒りも
ましてや、悲しみすらない
悲鳴を上げる身体と
喜びを感じる心
あぁ、今、生きている
あぁ、今、生きて大地を踏みしめている
交わる金属音
すれ違う想い
目の前の希望は
目の前の絶望に
肩を揺らす
交わす言葉は、数を重ねるたびに無くなり
剥き出しの魂となる
ただ宙を舞う二つの剣は
美しく、美しく
弧を描き
いつか語られる
伝説の一ページとなるだろう
強大な悪の一人として描かれ
英雄は、それをどのように倒しただろうか
ふと、ほころんだ頬に
何かが貫いた
あれ・・・?
理解している
なのに
それが追い付かない
もっと
もっと、もっと
この静寂を生きたまま・・・
あぁ、英雄は、大きいものだ・・・
いつの間にか見上げていた
いつの間にか、感謝していた
だが、残念だ
最後というものは盛大に敗れるものと思っていた
それが
あまりにも、あっけらかんとして
何も、なかった

遠い昔
独りの剣士が、英雄の前に立ち塞がった
その剣士は、英雄が幾度となく敗走を余儀なくされた武人
ただ、悪ではなく
純粋に、戦いの中で死ぬことを望む
孤独な青年だった・・・
英雄の剣が、彼を貫いた時
彼は、何かから解き放たれたかのように
微笑んでいたという
英雄は、語り掛けた
もし、この私が、お前と違う時代に生まれていたら
今、この現実を語り継ぐとき
お前こそが
真の英雄であっただろうと・・・
その後、強大な敵を目の前にしても
迷いなく
躊躇なく進み
英雄は、仲間と共に未来を切り開き
人々を平和へと導いた

一人の少女を除いて・・・

英雄が、英雄から一人の人間に戻った時
田舎町をふらふらと歩いていた
若い娘と恋に落ちた
二人は、結ばれ
子宝に恵まれ
満ち足りた日々をおくった
往年
老いた英雄が
旅立たれた妻の部屋の片隅にある
小さな、小さな箱を見つけた
その中に在った手紙に
目を疑った
愛した者が、かつて行く手を阻んだ
影の英雄の血縁者であったことに
さらに、綴られていた想いが
英雄に後悔させるのだ
お前は、生きるために死を望み
私を選んだのか
お前は、愛する者すら捨てて
自分の夢のためだけに
私に挑んだのか・・・
時折見せた、妻の悲しげな横顔の意味を
ようやく理解した
彼女にとっての悪は、私であったのだ
そして、彼女にとっての英雄は
お前なのだ
声にはならない
私は、なんという因果の中に
放り込まれていたのだろう
大きな溜息と涙で
夕暮れに染まる天井が歪んでいた
再び、手紙を箱の中へ戻す
その箱を
私は、愛した妻の墓石の下へ
そっと戻した・・・







by幻想師キケロw