零
久しぶりに、誰もいない実家帰った
降り積もった静寂に足跡を刻み
目を細めて
見渡した
窓の遮光(ブラインド)を押しのけて差し込む
日差しには
どこか懐かしさと寂しさがあり
誰もいない
零の空間とは思えなかった
浮かんでは消える
母の笑顔
父の背中
兄の声
妹の小さな手の記憶
皆、それぞれに散ってしまった今
一つであったこの場所が
宝箱のよう
食器も、机もあの頃のまま
でも・・・
どこか鋭く光る違和感
焼き付いた光景に
身震いした
聞こえるはずのない声を
耳元に聞きながら
絡みあう
嬉しさと絶望に
大きく溜息を流す
もう、ここではなくなった
もう・・・、帰る場所ではなくなった
事実だけが
あの天井と柱に
まざまざと刻まれていた
忘れたくとも忘れられない
たった一つの日にちと時間が
ひび割れた時計となって
転がっている
あぁ、戻ってこないんだ
ぽつりと毀れた本音が
まるで自分ではない誰かの叫びのように
聞こえたのはきっと
私の勘違いだ、と信じたい・・・
by幻想師キケロw