帰らない黒猫
(′・ω・)第八話、猫に戸惑う猫(そのご)
上下に揺れる度に、私の腹が肩に押され、鼻からすん、すんと音が鳴る。階段の時なんてまぁ、言うまでもなく。だが、普段は眺めることの無い弥勒の視点は、思ったよりも高く、そして、広いものだった。
「おい・・・、黒・・・。」
「なんだ?」
「何で、追いかけられてんだ?」
「知らん。校庭の木の上でだらけていたら、いつの間にか下に居て、絡んできたんだ。」
「へぇ~。自慢の爪も、役に立たないこともあるものだな。」
「・・・・。自慢した覚えは無いが、立てるほどの相手でもない。(むしろ、立てたくないのだが。)」
「どんな奴よ?」
「そうだなぁー」
普段は頭の上からコンコンと響く弥勒の声が、今は真横から聞こえてくる。どことなく、不思議な感覚を覚えつつ、弥勒との会話を楽しんでいた。すると突然、彼が立ち止まる。
「んだ?これ・・・。」
私は、きゅっと爪を出し、絶妙な力加減を保持しつつ、今の体勢を維持した。彼は、しゃがみ、何かを持ち上げた。
「ミャ!」
「子猫?しかも黒い。」
「あ?」
黒い靴下を丸めたような大きさの球上の物体に見えたそれは、先ほどから張り付いてくる子猫だった。
「お前の言ってた奴ってこいつか?」
「あ、あぁ・・・。」
「プツ(笑)・・・・。」
「弥勒・・・、さては馬鹿にしてるだろ?」
普段より、良く見える彼の顔が、ニヤニヤと歪むのが手に取るようにわかった。一方、子猫は、首筋をつかまれはいるが暴れる様子もなく、私と彼を、声を発する順ので交互に眺めていた。そう、とてもとても、不可思議そうに。