帰らない黒猫
(′・ω・)第六話、猫に戻った猫(そのご)
なんともまぁ、人間と言うのはどうも状況を勘違いする生き物らしい。と言うのも、今の私がその状況に陥っているからである。あのがっしりとし体つきの大男が、気を使わせて開けた窓が、どうも原因らしいが、どうすることもできず。暫く大人しく座っていたのだ。が、どうやら侵入者として認識されてしまったようだ。一通り逃げ回った後、結局は、あの隙間からスルリと外へ飛び出るほか道はなく。現在、四方の綺麗な箱に収まった水溜りを、番号の書かれた少し高い台の一つに座り、眺めていた。
「はぁ・・・。この鼻を付く匂いさえなければ、良い水溜りなのだが・・・。」
日当たりもよく、ころころと体をしならせて時を過ごす。ふむ、本日二度目の暇と言う奴か。腹を天に向けて、だらしなく下げた尾を、振り子のように揺らして逆様の水溜りを眺めていた。
「あれ?そこの猫ちゃん。君、朝5組の彼、えーと純君だっけ?・・・一緒に居た子だよね?」
不意に声を掛けられた。ぬかった。と思い飛び起きると、まったくの決め事のように、足を滑らせて落ちた。浅いように見えたこの水溜りも実は案外深い。まるで、宙に放り投げられたかのようだった。かろうじて、鼻先は出ているものの驚いたせいか体が思うように動かない。
「ちょっとー!何やってるのこの子!」
「ふっ、・・・・ふっ・・・・。」
「あーっもう!!」
大きな音と共に、大きな波が私を呑み込んだ。それと同時に、何か柔らかいものに抱き寄せられた。
「ちょ・・・痛いよ。猫ちゃん。もう大丈夫だから、ね?」
荒い呼吸でしかも、妙にこわばった体の一部は、その助けてくれた女の子の肌を数箇所切り裂いていた。
「めっぐぅ~?おーい、めっぐー?」
「は~い。ここだよぉ~りっちゃん。」
「え~?・・・・。なに・・・やってんの?」
「えへへ・・・。ちょっとこのやんちゃ君がおぼれてたから・・・・つい。」
「はぁ~・・・・まったくもう。今タオル持ってくるから、拭き終わったら保健室いこ?三時限目はその服の変わり着てからだね。」
「ん、そだね。」
私は、助けられたという安堵から彼女に身を預けて大人しくしていた。何と言うか、今までこういうつながりを持ったことがない私には、なんというか、歯がゆいものが込み上げてくる。とはいえ、恩人には変わりなく、未だに抱きかかえたままの腕を、二、三礼の代わりにもならないが舐めてやった。彼女は、それに優しくおかしそうに微笑むばかりだった。
by幻想師キケロw