帰らない黒猫 | 梟霊のブログ

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帰らない黒猫
(′・ω・)第六話、猫に戻った猫
 
 
 話とは、なかなか進まぬもの。かといって早すぎてもついては行けぬもの。私をそっと下ろした後、彼の母親と奴は、家の奥へ消えていった。正確に言えば、奴が、彼女に引き摺られていった、と言うべきか。私は、それをぽかんとした顔で見送った。
「おい、黒。」
私は、弥勒のその一言ではっとして、振り向いた。弥勒と、リコと呼ばれた妹が、こちらを真剣な眼差しで見つめていた。はて、何かしたかなと、耳を折りたたみ首をかしげ考え込む。
「ねぇ、おにぃ・・・。しゃべったよね?」
妹の一言で、呼ばれた理由が理解できた、気がした。彼の体が、一瞬びくりと跳ね上がる。
「さぁ、なんかの勘違いじゃね?第一、しゃべったんなら、それ以外のことだってしゃべっただろう?」
なんともいえない顔で、答えている。
「え?それ以外も?しゃべってたの?おにぃ・・・。」
妹の顔が、体が、徐々に近く、低くなってきている気がするが、捕まらない限りは大丈夫だろう。それよりも、よほど動揺しているのか、墓穴を掘っている。呆れた。そして、じりじりと恐ろし気に妹の手が伸びてくる。
「と、にかくだ!猫がしゃべるわけ無いだろう!!」
私は、耳を少し動かしながら、近づいてくる手に注意しながら、小声でにゃうんと皮肉めいた声を出した。
「な、な!?やっぱ猫だろ!?」
妹の隣で、苦しそうに笑う弥勒。どうしたものかなと、妹を真顔で注視しながら考えた。が、いい回答は見当たらない。そうこうしているうちに、伸びた手が、私の腕が伸びる範疇に入ってきた。ピシリと叩き落としたのは、言うまでもない。だが、それで諦める妹でもないようで、また伸びてくる。また叩き落とす。伸びてくる。叩き落とす。伸びてくる。叩き落とす。
「・・・・何やってんの?御前ら?」
「ら?」
「!、いやいや、御前だよリコ・・・」
「んー、また捕まえてみればしゃべるかなって・・・。でも、また引っ掛かれたらどうしようっておもって。」
真剣にこちらを見ながら答える妹、その後ろでさっさと上に行けと合図する弥勒。しかし、この居間のドアを開けることができないのは御前も知っているだろうと睨みつける私。奇妙な三角図が出来上がった。ちょうどその時。家の奥から、悲鳴と言うか、怒号と言うかそんなものが聞こえた。私も含め、皆、ビクンと体を跳ね上げ、そこから動きが止まった。
『あなた!いったいいつそんなもの買ってきたんですか!!この前も新しいもの買って来ましたよね!?』
『いやぁ、それは、そのこのドライバーが俺を呼んでいたというか、なんというか・・・。』
『なにぃ!?』
『いや、その、すいません。』
『この前もその前も、同じ理由でしたよね!?』
『はい・・・』
『このおしいれのゴルフ道具の山!!使いもしないのにいったいどうして此処までなったんですか!?』
『いやそれはその・・・』
『黙りなさい!!』
『はい・・・・。』
普段、間の抜けた声の母親が、切れ味の良い言葉を発している。私は、それが不思議でもあったし、意外でもあったし、違和感すら覚えた。
 ところで、こやつら、固まったまま動こうとはしないのはなぜだろう。狭い空間で、私だけ、尾をゆらり、ゆらりと動かしている。しかも、次第に、顔が暗くなっているというか、沈んで行くと言うか。
「リコ・・・。」
「なに?おにぃ・・・。」
「逃げるぞ・・・。」
「そう、だね・・・。」
『あんたたちは其処を動くな!!!』
「・・・・・・・終ったな。」
「そだね・・・・。」
なんとも面白い光景である。
 
 
 
 
 
 
 
 
by幻想師キケロw