漂うは、一枚の羽だけ
照りつける太陽に
うんざりだと誰もが塞ぎこむ
滴る汗を
なんども拭いて
睨みつけること
何度目の空だろう
どこぞから
ふらふらと
ふわふわと
楽しそうに、降りてきた
一枚の白い羽
立ち並ぶ
銀色のどれを見ても
鳥の影など一羽として居ない
零れ落ちる水を忘れ
私の手のひらに立ち止まり
飛び立つか
どうか迷っている羽を見つめた
照り返す光に
誰もが、うんざりだと逃げ出している
手の中の羽を握りつぶさぬようにして
私も
狭い木陰の中に逃げ込んでいた
それでも
止まることを知らぬ汗は
ゆっくりと
ゆっくりと
スーツの漆黒を変えていく
ただ、この不思議な羽が
その不快さを忘れさせてくれる
なんだか無邪気なあの頃を
見ているようで
懐かしい気分になるんだ
微かな風に
ゆらゆらと揺れている
姿そのものが
あぁ、帰りたいな・・・
都会の激流にかき消されて
小さな波紋は
その影すらも失ってしまった
今か今か
羽が左右に大きく揺れだした
どうやら
お別れのようだ
ビルとビルの間から
どんと風が舞い降りて
それを
灰色と青の空へ舞い上げた
雲よりも低く
私より儚げで
社会より自由なそれは
その色が在るようでなにも無い空間を
どこまでも高く
いつまでも宙へ
真っ白に輝きながら
虚空の果てへ消えていく
あぁ、漂うは、一枚の羽だけ
この背中にある鉛が
これほど邪魔になるとは
一時の出会い
そう呼べるかどうかも解らない
ただ、一瞬
誰よりも
ほかでもなくその羽よりも
高く飛べたらいいなと
思った
その現実との落差に
水を浴びたかのようになったスーツが
大きく肩を上げ
そして
すっと下がった
気がつけば
木陰すら
私から逃げていた・・・
by幻想師キケロw