僕は、耳を疑った。はっきりと、とてもはっきりと聞こえたからだ。
誰もいなかった。そして、僕が居た灰色の夢の世界が、いつの間にか草原になっていた。
「・・・・、何だろ今の声・・・。」
くすくすと風が笑い、僕の右にいる巨木が苦笑いを浮かべ軽く頭をなでた。
そんな気がした。首が、かくかくと曲がる。
「にゃ~ん・・・・。」
左のネコが、相変わらず不思議そうに見上げていた。
その黄金の瞳に移った僕は、とても滑稽なのだろう。
またもや、そんな気がした。
【だから!なんなのだお前は!?我輩の横に軽々しく座りおって!!】
僕は、二度目の声を聴いた。思わず立ち上がった。見渡したが、やっぱり居るのは僕とネコだけ。
静かな草原がどっと笑い声を上げた。その光景は、海、そのものだった。青空は、何処までも蒼穹で
何処までも静かで、そこに浮かぶ雲は形を変えながら何処かへ去ってゆく。
光がぽかぽかと、あったかい。
でも、声の主が・・・わからない。
立ち尽くした。
【君は、我輩の言っていることが聞こえんのかね?】
「あぁ~・・・っと。」
僕は、認めたくなかった。そして、聞こえているのではなく・・・・。
直接、届いていた、が正しかった。頭の中に。
僕は、眼をだるくして、きっとそうであろうと知りつつも見ず。
草原の果てに向かって、言った。
「僕は・・・、僕の名前は、天宮。天宮一也〔あまみや かずや〕だ。君は誰だい?」
笑っていた風が、黙り込んだ。
【ほう・・・。うむ、やはり聞こえていたのだな。しかし、反論も混乱もせず、自らの名を名乗るとは・・・。いまどき珍しい人間の子だ。それに免じて、我輩も名乗らせてもらおう。我輩の名は、フォン・カルテッタ・レイウォンディン・アンボルシン・ベイロウンヤヴォウルト・ウル7世だ。長いのでなフォン、もしくはカルテッタでいい。】
僕は、突っ込んだほうがよかったのだろうか・・・。むしろ、なんか・・・そんなところに居る僕がおかしいのか。
そう思いながら、ネコをちらりと見た。
ネコは、なにか偉そうに頷いていた。
続く