Scratch/木村カエラ
¥2,940
概要: 2007年に発表された、木村カエラのメジャー3枚目のアルバム。木村カエラ自身、全曲シングル曲候補になりうると語り、その自信の程が伺えるが、事実このアルバムで初のオリコン1位を獲得した。また、木村カエラ初作曲の楽曲もお目見えしている。
総論: 基本的に作曲を自分で行わないアーティストのアルバムは飽きがきにくい。 自身で作詞・作曲を行うスタイルは一般的ではあるけれど、曲調やアレンジが似たりよったりしてしまって飽きが来ることもあります。
このアルバムでは、同じ作曲家による作品が全13曲中2つのみ で、しかもほとんど楽器のみというトラックもあり(なおかつそれがタイトル曲!)ということで、ロック調有り、ポップス調あり、バラード有りというなかなか面白いアルバム だと思います。
ただ、裏を返せば、1曲1曲での好き嫌いがハッキリしてしまう、という点もある のですが…
このアルバムを全曲通して聴いてみて、ふと思ったことが、「1拍ずらし」 の手法が耳についたことと、王道「Aメロ-Bメロ-サビ-展開部(間奏含む)-サビ」というパターン が多いなと感じたことです。さらに最後のサビ前で静かになる という。
安心して聴きやすくはあったけれど、その分面白味的な部分は半減(とまではいかないかな)してしまいました。
抄説: ★は5つが満点で☆は0.5点。さらに違う色のタイトルにクリックしていただくと偏狭な思い入れの記事に飛びます。
1.L.drunk ★
まずはギターのかき鳴らしから始まる、若干のロックテイストの歌からはじまります。
1曲目から言うのも気が引けますが、
サビが全然好きではないなぁ ということで、個人的な評価は低め
さらに、そのあまり好きでないサビをラストで繰り返すあたり、
「うーん」 という感じ。
そのラストのサビの繰り返しでは、サビの前でのみ3拍子になる(
1拍ずらしのパターン )のですが、ここでは全然効果的のようには思えませんでした。
まあただ、木琴が一貫して奏で続けられているという部分は面白いなぁとは思います。
ロックに木琴 とはなかなか。
2.Magic Music ★ ★★
こちらはミディアムテンポのロックにポップスを混ぜたような感じの歌ですが、1曲目と比較した場合、
こちらの方がまとまっている感じがして、サビも好きです
1番のAメロでは楽器少な目からはじまるのですが、2番に入るとエレキ・ギターのミュートとベースによる刻みで厚みを感じます。ドラムもサビ前のバタバタする感じ、いいです。
さらに2番Bメロからのエレキ・ギターの4分音符のはっきりした刻みが、ミディアムテンポの、ともすればたるみがちになるサウンドにアクセントをもたらしているように感じます。
3.Snowdome ★★★★
きちんと音楽は鳴っていながらも、
どこか幻想的で童話のような印象 を受けました。やはり「スノードーム」ということで、そのキラキラした感じを音で表現したんでしょうかね。
具体的にその幻想的な雰囲気をどうして感じたのかという理由ですが、
①1番Aメロのドラム(スネア)のリズム取りが2拍+4拍ではない。
→ その後も単純な2拍+4拍打ちではないので、躍動感がある。
②アコースティック・ギターのアルペジオ(さらに2番サビ前ではハーモニクスを使う)
→ サビはアコースティック・ギター、ギターのピコピコ音(左の方で鳴る)、ギターのジャーン音(右の方で鳴る)
③2番サビの繰り返し部分から、ラストのサビも含め、鉄琴の音がさりげなくプラスされている。
という部分でしょうか。
さらに、間奏が終わって一端静かになり、ギターのアルペジオのみで歌が続きますが(
サビ前静かパターン )、なかなかこの感じ、歌詞の雰囲気と重なり、切な目で上手く仕上げているなぁと思います。
最後は次第に音数を増やしたサビで持って行きますが、4:05~のカエラさんの裏声が、なかなか痛切な感があり、素敵です。
4.ワニと小鳥 ★★★★★
この歌、かなり好きなんです 個人的にはこのアルバム中1位。
まず惹かれたのはその歌詞なんですけどね、可愛らしいんだけどなんだかテーマが曲調に合わないハードというか残酷というか、皮肉っぽいというか(最終的にやっぱりワニ、小鳥食う「パクッ」って音入っちゃってるし)。
この歌のキーポイントとしては、
ハモり
ハモりが綺麗で、しかもハモっていなくても1番Aメロやサビの一部分以外はユニゾンで歌われています。なんとなく、このハモりの嵐がYUKIの「ハミングバード」を髣髴とさせる感じがしました。
ハモりの中では
特に「でもね~、僕は臆病だ~」からの所が素敵 です。
このメルヘンチックな音楽をよく聴いてみると、
エレキ・ギター音が聞えません 。その代わり、シンセサイザーやアコースティック・ギターが多用されているので、そう聞えるのかもしれません。
さらに
歌の展開が面白い。
2番Bメロから、サビに入ると思いきや、2:25から展開部が始まり、そこからサビに行きます。なかなかです
5.dolphin ★★★★☆
やはり亀田誠治
キャッチーで分かりやすいメロディに仕上がっております 。さらに亀田さん自身ベース弾きなので、アレンジの面でもベースのラインが秀逸です。
さらにこの歌ではストリングスがいい伴奏をしているので、切ないバラードです。
サビ前などに出てくる、ギターのキュルルという音は、「イルカの声か?」と思ってしまういい演出。
驚くことに、前曲とは異なり、
この歌ではハモりがない んです。
なので、
ストレートに小細工なしの声が響く 。おそらく、このアルバム中一番ドラマティックなんじゃないかなぁと思いました。
ちなみに、この歌も
サビ前静かパターン です。
6.sweetie ★★★★
スルメ曲 です。最初はそこまで良い印象はなかったんですが、聴けば聴くほどいいなぁと思います。
「Snowdome」からこの曲までの流れはなかなかの名曲ぞろいです。
2番からアコースティック・ギターが参戦し、なかなか面白い音色。サビの声はユニゾンで歌われているのでしょうか。
7.きりんタン ★
うーん・・・
個人的には箸休めだと思っています。
ハモりが単調でメロディも全然好きではありません 。残念
サビも無いので、面白みもないし。。。
さらに、ボンゴがポコポコ鳴っています。
きりん → アフリカ → ボンゴ という連想でしょうか?
8.Scratch ★★★★★
この作品が
木村カエラさん初作曲 のものです。
歌は最後の方に入っている感じで、ほぼ曲なのですが、いやいや、これが飛ばすことは出来ないくらい
良品 です。
その
透明感、浮遊感半端ない です。
それは、ピアノが綺麗で、さらにハモりも美しいということ。
または、微妙に入る電子音や、わざとアクセントをはずしているということからも分かります。
さらに、何と言っても
ドラム 。ピアノなどとは対照的に荒い印象もあるのですが曲の雰囲気は壊さずもよく目立ち、見事なバランスです。
歌の部分はなんとなくアンニュイで、Coccoの歌声のようにも聴こえました。
9.SWINGING LONDON ★★★
サビのコーラスとか曲調が、
な~んとなく古臭い感じがする 歌。まあ爽快感はあるんですがね
LONDONとタイトルに付いているあたり、確かになんとなく洋楽のような雰囲気を醸しています。
が、2:03からの展開部、
なんか歌が曲に乗り切れていないんじゃないかなぁ という気はしました。
10.never land ★★★
敬愛してやまないバンド、the band apartのような透明で
面白いコードのエレキ・ギター音から始まり ます。
太いベースも入って きて、凄く期待が膨らみます。
1番が終わり、2番に入る直前、ここでもこのアルバムに多く見られる
1拍ずらし の手法が。
具体的には1:21ですが。「ポワーン」というギターの音。
ここは効果的 だと思います。
展開部が終わり、前奏のコードが再び現れますが、エレキ・ギターがもう1本加入。
このもう1本のギターの浮き出ている感じ、すごく好きです 。ハモっていないで好き勝手やっているようでハモっている感じ。いいなぁ。
でもですね、
この曲のサビ、なんか違うんだよなぁ~
もったいないなぁという気が個人的にはします。
さらに、ラストサビに入る直前の3:07、
ここ1拍前に持ってくればいいのに
なんで2拍開けちゃうんだ、今まで散々拍子をずらしてきていたくせに。と感じました。
11.TREE CLIMBERS ★★★★
ズシリとしたドラムで始まるカッコいい曲。0:18以降は疾走感がいいですねぇ
Aメロは前奏の余韻そのままに、こもり気味の声、情熱的なドラムで始まり、その雰囲気は壊れることはありません。
さらに
サビではさりげな~くアコースティック・ギターのアルペジオが追加 され、曲調はクールで暗めなんだけど透明感が追加されるんですねぇ。これが暗さの中の一端の光のように感じました。
12.JOEY BOY ★☆
前曲のかっこよさがまだ余韻を引いているためか、この木村カエラ調ロック(ロックっぽいけどどことなく遊んでいる女の子っぽいガーリッシュな感じ)は
印象が薄くなります 。
サビも弱く、曲が流れていってしまっているように感じます 。間奏のギターも面白くないし。
しかし、
異様なのは2:56からの後奏 。ここだけ異常に素敵な美メロ。ハモりも綺麗だし。
13.Ground Control ★★★☆
ラストを飾る曲は、より洋楽っぽく、そして木村カエラ調ロック だと思います。
サビはなかなか疾走感があって、曲と歌声も合っていていいんですが、前奏と
「Hey!」 っていう掛け声はなくてもいいような?
間奏はLitaの「悲しみのハンター」で聴いたことあるような切ない音。ギターかな?キーボードかな?
ちなみに、この歌も
ラストのサビ前に落ち着きを見せます 。