ギブス/椎名林檎 | こだわりのつっこみ

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勝訴ストリップ
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作詞者:椎名林檎
作曲者:椎名林檎
編曲者:亀田誠治・椎名林檎

概要:2000年に発表された、椎名林檎の5枚目のシングル。2枚目のアルバム『勝訴ストリップ』の4曲目にもエントリーされている。ここでは『勝訴ストリップ』の音源から。

展開:A-B-C(サビ)-A-B-C-D-C-C

独白:
1番 Aメロ・Bメロ
 この曲は、椎名林檎の吸う息から始まります。もちろん意図的であると思いますが、みごとな緊迫感の演出。
 さらに、それに続いて「ずずずん・・・・・・」というバスドラムを叩いたような電子的な低音と、「ぼんぼんぼんぼん・・・・・」というピアノの低音で刻まれる8分音符が見事にマッチして、さらなる緊張感とその後の展開を期待させます。
 続いて、もう1回AメロとBメロを繰り返すのですが(0:39付近)、そこで高音が降ってくるような印象のストリングスが追加され、この曲はいよいよ緊迫していきます。
 しかし1:10付近、「それすら嘘に~」の部分で、ずっと鳴り続けてきたドラムの音が消え、低音がないままの緊迫感をサビの直前でフライング気味に出てしまうエレキギターが壊してしまうのです。 
このフライングされたギターの音色はそれまでの音の厚みと、サビの音のアレンジを巧くバトンタッチできています。すばらしい!

1番 C(サビ)
 編成は、ギター、ベース、ドラム、ストリングス、ピアノでしょうか。
 一気にこれまで溜めてきたものが放出されている感があり、豪華でいて、非常に爽快。
 
 サビが終った間奏、ギターがピッピピッピ言ってるわ、ベースが歌ってるわ、1:55あたりからハープみたいな音がぽろろろろんとするわで、ここもいい繋ぎです。

2番 A・B
 2番に入るとまたギターやドラムやベースは引っ込んで、1番の繰り返しの静けさがやってきますが、しかしそれでもストリングスのようなシンセが上の方でヒューヒュー鳴っており、1番とは全然違う印象。
 椎名林檎の「だってカートみたいだから~」の伸ばしの部分で変化を出している所、すごくいいです。
 やがて、Bメロで隠れていたベースも次第に音を強くしていって、1番では静かになったサビ前、2番ではそのまま突き進み、さらに音を大きくしたところから、サビ前!1番でフライングしたギターと共に、今度はドラムも一緒にフライングするという

2番 サビ
 編成は1番と基本的には同じですが、違う部分として、ギターのような高い音でオブリガードを奏でているのが秀逸でしょう。「I 罠 B ~」の「B」と一緒に出てくる高音のやつです。 何かを求めているような、何かを叫んでいるような音で、すごく歌詞と合っています。
 林檎さんの「昨日のことは」の「ことは」の歌い方とハーモニー、なんか好きです。
 そして、Dの展開部にそのままのテンションで移るのですが、この橋渡しとしてベースが中低音で出てきます。

展開部 D
 基本、自分は展開部がある曲が好きなのですが、この曲は展開部も見事ビックリマーク
 ギター・ベースが冷静にしかし分厚い音で2分音符を鳴らし、ドラムのシンバルが色味を出し、歌手は叫び、さらに3:20付近の「同じ日のことを」の直前では不意にピアノが顔を覗かせる。素晴らしいです。
 ギターソロの「思い出して~」は1拍目「思い」、2拍目「出し」、3拍目「て~」と歌い、おやおや4拍目はどうするんだいと思ってよく聴いてみたら、4拍目「ドドドン」とドラムを叩いてくれていました。アレンジすごいなぁ。

 そのままギターソロの間奏に入りますが、自分としてはここの主役はベースと思ってしまいます。それほどベースは歌っているのです。ベースはさらにラストサビでも美音を響かせてくれます。

ラスト C・C
 最後は2度、サビを歌うことになりますが、1回目の編成は、なんと冒頭のピアノとシンセドラムに戻るのです。
 なんて憎い演出!ここにきて緊迫感が再登場します。
 違うところは先ほど言ったように、ベースが「明日のことは~」のところで入り、しかも中低音の優しい響きを聴かせてくれるのです。

 もちろん、最後は再び盛り上がって終るのですが、お決まりの最後の最後のサビ前のフライング。
 今回はギター君、ドラム君はもちろんのこと、なんと林檎さんまで「I 罠 B」の「I」の部分をフライングして歌っているのです。
 なんてっこったい、ちくしょう、すばらしいじゃあないか。

 ラストのサビは2番のサビのように盛り上がりますが、先ほどのオブリガードも健在、さらにエレキギターもソロを弾いているかのごとく暴れています。そしてなんと言っても、林檎さんの叫ぶような声。メロメロですねこりゃ。



余談:
 椎名林檎は好きな歌手で、アレンジの亀田誠治さんも大好きな作曲者・編曲者です。このギブスはそれがすべて巧くマッチし、極上のバラードに仕上がっているのだと思います。林檎さんはもちろん、ギターもベースもピアノも、ドラムでさえも全ての演奏家がうたっているかのように感じることができ、また無駄な音は一切ない、音の入り方や盛り上げ方も無理がないお手本のような曲だと思います。
 歌詞については深く言及はしませんが、彼女の書く、「今」という時間、「今」の関係を何よりも大事にするという想いは凄く共感するのであります。
 私は男ですが、この歌が素晴らしすぎるので、時々カラオケで歌わせていただいています。もちろん白い目で見られますが。女に生まれたかったと思う瞬間の一つです。