どうも( ^_^)/
タオルケットを新調した者です。
物持ちが良過ぎてもう何年振りかも覚えていません。
CIVILIANのアルバムは、なんと四年ぶりです。
Lyu:Lyu時代から数えても、フルアルバムと呼べるのは三枚目。十年以上一線でやれているバンドとしては破格の少なさではないでしょうか。
間が長く空く傾向は、自然、一枚一枚が“重く”なるということでもあります。
今回も、ずっしりと来ました。
01.遥か先の君へ
今日(2021.6/2)から3000年後の未来、終末を迎えた世界の手記をポエトリーリーディングで歌った曲です。
コヤマさんの読み方がとても上手いです。抑揚の付け方、リズム、声量、静かな佇まいから、曲と共に少しずつ熱を上げていく感情の入れ方も、素晴らしく上手くてほれぼれします。
バンドの挑戦だったのでしょうが、もうずっとこのスタイルでやっているかのような自然体がありました。
02.ぜんぶあんたのせい
ライブではたびたび演奏されていたアップテンポなロックソングです。吐き捨てつつ叩き付けるような高速リリックだったり、≪全部自分(あんた)のせい≫、≪全部自分(あんた)の“生”≫だったりといった歌詞の妙をようやく味わうことができました。
人生の業、原罪、目を逸らさずに生きていけよという叱咤に似た感情がぶつかってくる歌でした。
03.何度でも
宇宙的なシンセですが、冷たさはなく、グラグラと煮え立つようなCIVILIANのグルーブに乗ってどこまでも熱いです。
≪最後の0.001秒のさらに奥へ/核心まで≫と、振り絞るような熱量のCメロで、キラキラとしたギターと深いリバーブをかけたドラムが奥行きを演出するところが好きです。
グルーブは燃えてはいるんだけど、アンサンブルは計算され尽くされている、歪に整頓されているとでもいいましょうか、丁寧に大爆発するバンドだと思います。
04.懲役85年
俺もそういうところがあるのでよく分かる、と言い切ってしまいますが。
これは、四六時中死ぬことばかり考えている人だからこそ出てくるタイトルのひとつです。
暗く言葉を鈍器にしてぶつけてくるヴァースと、開けたコーラスで構成されたラップのような楽曲です。デトロイト発のラップを聞いているような爽快感があります。
05.千夜想歌
アニメの世界観にあわせ中国楽器のサウンドを採用しながら、CIVILIANの音に落とし込む職人のような仕事が光るアッパーチューンです。このイントロのフレーズ、自然にゾクッとさせますね。
音もそうですが、楽曲の構成がとても耽美です。
グッと重心を落として静かに鳴らすからこそ、盛り上がるところがよりドラマチックに、なによりロマンチックに響きます。
06.導
哀しみと、美しさと、激しい愛を描くバラードです。
CIVILIANはバラードが上手いロックバンドであることがひとつの特徴であり他と一線を画す部分ですが、この曲は“ディストーテッド・アガペー”以来の到達点なのではないかと思います。
ツーコーラスめからのベースがとても雄弁に楽曲を語っているので、ぜひヘッドホンで音量をグワッと上げて聴いてほしいです。
あと、サビのB'zみたいなオリエンタルサウンドのギターがとてつもなく美しいです。こちらも端正な中国楽器の音をフィーチャーしているんですが、それ以上にギターで表現してやろうという気概をビシバシと感じます。
07.本当
ここまでがレコードでいうところのA面の終わりだというように、壮大でホッとするバラードで一旦アルバムを締めてきました。
≪数多の不安や迷いや後悔の先で/その果てでちゃんとあなたを選ぶ≫
ただ喜びや楽しみや幸せだけを求めているだけじゃ得られない“本当”は、疑いや、恐れや、憎しみや嫉妬といった不出来でときとして不道徳と糾弾される感情を経たうえで得られる。否、そういったものを経ないと、愛なんてものを信用できないのかもしれません。
本当に、これでアルバムが終わってもいいくらいのテンションですが、続くんです。
08.人間だもの
地獄みたいなクリスマスを過ごしているらしい「僕等」の物語を追ったと思われる歌です。
予約したレストランの席で別れ話を切り出されたか、もしくは浮気がバレたか、想像はいろいろできてしまうんですが、ロクでもない場面なのはよく分かります。
「だって人間だもの」
「それを言っちゃあお終めぇよ」と俺の中の寅さんが叫びます。すごく深刻な曲なはずなんですけど、どこかおかしみを感じ喜劇的にも聴こえます。
09.残火
アルバムの中盤で重めなバラードを続けてきますが、“本当”で一回締まったおかげで冗長さを感じさせません。
愛に飢え、乞う人の歌でしょうか。それとも終わってしまった恋を自分のせいだと嘆く歌でしょうか。
渇望は悪徳と仏教ではいわれますが、求めずにはいられない人の宿業を認めてどこか優しく歌ってくれているようです。
人生の残り時間で、この歌の主人公はもう誰も愛さないつもりのようにもみえます。しかし火は未だ残っているというところに、救いを見出せもします。
10.夢の奴隷
あれ、俺SUPER BEAVER聴いてたっけ?と思ったわけではないですが、「うわぁ!?急に青春スポーツアニメのOP始まった!!」とは思いました。
どうやらベースの純市さんはこの曲がお気に入りだそうで、あまりに直球な夢を叶える人を応援するような8ビートにびっくりします。
なんですか、今度は『ハイキュー!!』のOPの話が来てるんですか。と冗談は置いて、こういう軽やかさを出す余裕が生まれたんですねと感慨深くもあります。
11.正解不正解
こちらはぜひライブバージョンを聴いてほしいです。
しかし、『魔王学院の不適合者』が二期をやれるほどにまで跳ねるのは、自分の中で昨年ちょっとした事件でした。
アニメーション制作陣と演者の熱量が予算を跳ね返していたというか(←ド失礼)、その中には確実にこの楽曲の爽快感が手伝っていたはずです。
タイアップに恵まれるんじゃなくて、一緒に掴み取っていくんだというサクセスストーリーを描いた曲だったんじゃないでしょうか。
12.フランケンシュタイナー
誰かに笑われることを気にするあまり、全身を自分と違うものに取り換えていってしまう人の哀しき物語を描いた歌です。
“顔”第二章とでもいうか、コヤマさんが長年患っているらしい神経症的な部分が大いに出ています。
身体醜形(しんたいしゅうけい)障害なる疾患があって、いくら整形しても満足できない人というのもいるそうです。
さて、主人公は頭まですげ替えてしまったのでしょうか。最後に描かれたフランケンシュタイナーの本当の望みを解読すると、踏み止まったのではないかと思えるのですが、どうでしょう。
13.世界の果て
いつだってここが時間と世界の終点で、誰もがここから始まっていく。宇宙が五秒前に始まったわけではないけど、五秒先も分からない日々を生きる人々へのエールを歌った爽やかな楽曲です。
どこかエンディングテーマっぽい雰囲気があります。みんなが上手から下手に駆け抜けていくような絵が浮かびます。
14.灯命
「いつまで生きるのか」が一生の命題になる動物は、おそらく今のところ人間だけでしょう。
永遠に続けと思う日もあれば、もう終われと思う日もある。義務と仕事にうんざりしながら懲役85年を生き潰していく我々の命は、しかし、実は灯(ともしび)のように儚いです。
このアルバムに至る道の途中、ボーカルとして、一つの危機を迎えていたコヤマさんの柔らかく美しいファルセットがとても綺麗に響いています。
その美しさは、やはり哀しみをたたえています。