ただの“物語音楽”なだけじゃない~BUMP OF CHICKEN/The Living Dead | ライブハウスの最後尾より

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邦楽ロックをライブハウスの最後尾から見つめていきます。個人的な創作物の発表も行っていきます。

どうも( ^_^)/

 

暖房のタイマーが長過ぎて事実上一晩中つけっ放しな者です。

 

 

BUMP OF CHICKEN

The Living Dead

 

 

 

インタビューでもたびたび「悪夢のようなレコーディングだった」と語っている、一週間スタジオ缶詰突貫工事のアルバムです。

 

 

なのにそのギリギリの切迫感、緊張感が醸し出す楽曲の素晴らしさ。物語音楽というコンセプトの明確さなどから名盤となった―――なってしまったといってもいい産物です。

 

 

そして、このブログは、なんとなくアルバムを聴きながら感想をツイートしていったら一枚聴き終える40分程度で一本の記事くらいまで膨らんだので、急遽加筆しまとめてしまおうというものです。

 

こうして改めて聴くと、物語を彩る音も、とても魅力的であることに気付けました。

 

 

 

01.Opening

 

“プレゼント”の最初と最後の部分を抜き出して、アコギのみのシンプルなアレンジで、アルバムのイントロダクション/アウトロダクションとして配置された曲です。

 

杓子定規ではありますが、アルバムとなると十曲というのがひとつの目安ですから、なんとかして曲数を揃えようと苦心したあとが伺えます。

 

本当に、いろいろギリギリだったんですね。

 

 

 

02.グングニル

 

Cメロから明らかに走ってるんですが、それらも全部楽曲の呼んだ展開に聴こえてきます。あと「ワンピース読んでたんだなぁ」と想像できます。

 

後に“Sailing Day”などが生み出される嚆矢になったと思われる熱きハイスピードチューンです。

 

 

歌詞はもう、「人の夢は!!終わらねェ!!!!」ってやつです。笑われていきましょう。

 

 

 

 

 

03.ベストピクチャー

 

チャマさん作曲のスイートなミドルバラードといった風情の曲です。

 

坂の上と下、持つ者と持たざる者が、絵というものを通して逆転する構成が見事です。やはり藤原基央は優秀なストーリーテラーです。

 

 

当時はとにかく歌詞にしか耳が行ってなかったので、こうしてじっとすべての音に耳を澄ませてみると、ギターが大暴れしてて聴きごたえがあります。当時は藤くんがリードギターも全部弾いてたらしいですが、やっぱ若いですね。

 

 

04.続・くだらない唄

 

イントロから、乾いた郷愁を感じさせるギターが飛び込んできます。

 

“くだらない唄”と同じ主人公だとすると「お前何があったんだよ」と心配するレベルのささくれ具合です。恐らくは、楽曲のそれ以上にバンドとしての状況が焦燥と疲労に満ちていたのかと思います。

 

 

初期バンプの魅力の一つはなんといっても歌メロとの喧嘩も辞さないベースラインを弾かないベースですが、これは雰囲気に合っててばっちりですね。 終盤歌メロが上昇してるときにベースが下降していくところなんか超オシャレです。

 

 

05.ランプ

 

バンプの記念すべきファーストシングル。ランプという、こじんまりした印象のある物にくべる火としてはちょっとデカすぎるくらい歌詞が熱いですが、新人バンドの荒々しさがよく出ています。

 

 

シングルとして切るには曲が長いし、ドカンと盛り上がるJポップとも違い、アメリカ南部っぽい乾いた土の匂いを漂わせる異質さを感じます。きっとこういうところが「こいつらまだ上手くはないけど何か光るものがあるよな」って受け入れられたのだと思われます。

 

 

“ガラスのブルース”もですが、初期の名曲は、めちゃくちゃ歯応えのあるよく火の通った肉みたいで、百回くらい噛んで味わいたくなります。熱すぎてちょっと焦げちゃってるところもありますが、熱いので美味しいです。

 

 

 

 

 

06.K

 

今に至ってもライブでたびたび演奏される名曲であり、名作。一曲で一篇の物語が描けることを証明したハイスピードストーリーロックです。

 

NightとKnightの仕掛けを知ったときは絶頂並みの快感があったし、きっと歌詞を書いてるときも絶頂したと思います。はいすみませんでした。

 

 

ツーコーラス目のAメロでキュインキュインしてるギターリフが狂おしく好きです。まだまだ技術的にテンポキープが大変そうな中、それでも手数を抑えるような愚を犯さないドラムの勇気も素晴らしいです。

 

 

 

 

 

07.リリィ

 

ここから≪ベイビーアイラブユーだぜ≫までくるのに二十年かかりました。初期バンプの、青く刺々しくもグッとくる頑固で気難しそうなシンガーとそれを包み込み「勝てやしない」と思わせる恋人とのラブソングです。

 

 

イントロとAメロに使われてるギターフレーズ、“アンサー”にも通じる感があります。ラブソングなのに、ずーっとベースが重くブォーンって鳴り続けてる重心の低さがいいですね。最初はギターかと思いました。

 

 

 

 

 

08.Ever lasting lie

 

長い長い物語が始まったことを告げるイントロ、何だか身構えてしまいます。朗々と詩を物語るように歌うのは、のちに“ゼロ”などに繋がっていきます。

 

 

ギターの音が今作中一番カッコいいと思いました。そんな絶妙な歪みの中で鳴らされる、混沌として長尺な間奏も砂漠で“夢を掘る”人の過酷さをよく表してます。

 

 

歌詞については、とにかく、天寿をまっとうしちゃってるのがマジですごいと思いました。≪ろくに動けなくなって≫までも生き抜いたというのは、運命とか絶望とか、そういった類のものに“勝った”といって良いのではないでしょうか。

 

 

 

 

 

09.グロリアスレボリューション

 

Glorious 壮麗な、美しい、といった意味の形容詞だそうです。一筆書きのガレージパンクロックといった趣きがある楽曲です。

 

 

こういうケースもあるというリアリズム そんな目で俺を見んな

 

歌詞にオチを付けたのは、パンクなメッセージがちょっと恥ずかしくなってしまったんでしょうかね。 インディーズ時代からメジャー初期のバンプは、生来の人見知りか、恥ずかしがり屋なところをそのまま出せない可愛さがありますね。

 

 

終盤≪エラい頑丈に造っちまった 自前の手錠をさ グローリアスレボリューション≫がブレス無しなので歌うときは要注意ですね。酸欠なります。

 

 

 

 

 

10.Ending

 

後に“プレゼント”をフル尺で聴いたとき、ここまで曲の印象が変わるものかと思ったものです。

 

この“Ending”は、ストーリーテラーにもストーリーがあるのだと、行間で知らせる歌詞です。

 

 

で、“プレゼント”は……こんど『Present from you』の感想がまとまったら、書くことにします。