薄氷の3-0~アジアカップ2019 日本×イラン | ライブハウスの最後尾より

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どうも( ^_^)/

 

 

大迫がゴールを決めた瞬間に飛びあがって足を攣った者です。

 

 

俺はとにかくブラジルW杯の前から大迫推しだということはずっと書いてきましたが、いよいよファンである俺にダメージを食らわせてきましたね。

 

 

日本3-0イラン

 

 

現状、世界ランクトップ30に名を連ねるアジアの最強国イラン。具体的な凄みは、なんといってもカルロス・ケイロス監督による八年間にも及ぶ指導によって完成した見事なポジショナルプレーと攻守の切り替えの早さ。攻撃では流れるようなパスワークから華麗なゴール。守備では奪いどころを定めてボール保持者に三人が一気に群がって奪取する嫌らしさ。これに選手個々の屈強さが加わって対アジア三十九戦無敗という驚異的な記録を作りました。

 

 

それに対して、戦略家、森保一監督は試合開始直後から中盤を飛ばして一気に敵陣までロングボールを蹴り込ませ、サイドで競った大迫・堂安・原口らがサイドバックを引きつけ、空いたスペースにほかの選手が走り込んでチャンスを演出するという攻撃的サッカーを仕掛けます。

 

 

守備においては、イランの4-1-4-1の高い位置に原口・堂安を付け、パスの出所であるサイドバックに襲い掛かり封じるという作戦に出ました。

 

 

これはつまり、三年半ほど前から日本がたびたびやってきたデュエルに勝つサッカーで、大迫をトップにした十人は決して恐れず、勇気を持って、闘志むき出しで、バチバチ当たっていってくれました。

 

 

競り合いで頭がカチ合ってもひるまず、押し合いになれば負けずに相手を転ばせ、たとえ倒れてもすぐに起き上がる断固たるファイティングスピリットが南野→大迫の先制点を生みました。

 

 

イランのエースアズムンを完封した冨安の成長ぶりは白眉ですし、コンビを組んだ吉田の安定感は「これくらいはやって当然」と思わせるほどだったし、ポルトガル移籍が実現したらしい権田は「これなら欧州一部でもやっていける」と安心できるものでした。

 

 

が、イランだって手をこまねいてはいない。日本と同じくロングボールを多用し、日本の守備を下げさせ、攻勢に出ます。それによって、この試合は「いかに相手陣内にボールを入れ、プレーするか」というラグビーのパント合戦の様相を呈していきました。

 

 

日本が使えていたスペースを手早く埋め、デュエルも激しさを増し、決定的なシーンを作られます。

 

 

この時点で、日本とイランの力関係は互角。戦術に変更はない。両者ともにこのまま攻めて、このまま守る。事実上、森保一VSカルロス・ケイロスのジリジリした差し合いとなりました。

 

 

もし、権田のパスミスでコースを限定できるサイドではなく中央を突破されていたら。

 

もし、後半最初の酒井宏樹のハンドがPA内だったら。

 

もし、たった一度起こったCB同士の交錯が決定的なピンチを招いていたら。

 

 

互角の差し合いとはつまり、どちらかがミスをしたら負けということ。それが今回はイランに出た、いってしまえば、それだけの話なのです。どちらも完璧に近い堅いサッカーをしていたら、間違いなくスコアレスのまま、残酷なロシアンルーレットたるPK戦に突入していたでしょう。

 

 

そしてそれは、日本代表の立ち位置の確認でもあります。イランの実力は欧州の中堅国並み。ウクライナやトルコ、ロシア、ギリシャ、ブルガリア、ベラルーシ、ハンガリー、アイスランド。その辺りと日本は(親善試合ではなく)ガチでぶつかって五分五分の勝負をするということです。W杯でいえば、グループリーグの当落線上だし、アジアでなければ出場すら危ぶまれる弱くもないが強くもない位置です。

 

 

森保監督はリアリストで、冷徹な判断ができる指揮官だから、そのことはよく理解されているでしょう。

 

 

だからこそ、アジアカップは絶対に欲しいタイトルのはずです。

 

 

アジア最強を名乗れれば、コパ・アメリカではもっと厳しいガチ試合ができる。良い欧州遠征ツアーが組めるかもしれない。なにより選手の自信になる。さらに、それを過信にさせない人心掌握の手腕を、森保監督は持っています。インタビューを観ていれば分かる。彼は言葉を間違えるタイプの指揮官ではない。愚かな舌禍はなく、それでいて大事な情報を決して漏らさない統制もできる人だと思われます。

 

 

問題は、それらの安定感と調整力が、(遠くない時期にやがてくるであろう)負けが込んできたときの“おとなしさ”“覇気の無さ”、あるいは、語義通りの優しさではない、より悪いニュアンスを示す“やさしさ”と評価されるかもしれないことです。あらかじめ書いておきます。それは違うぞ、と。負けた後に必要なのは監督への人格攻撃ではなく、敗戦の詳細な分析と、少しの反省と、しっかりとした修正です。

 

 

もし、このイラン戦を負けていたら、それでも、俺は森保監督自身への評価は変わりません。戦術はちゃんと嵌っていたので、あとはもうゴールという奇跡を待つばかりだったからです。そこから先は、選手の技術の話だし、相手あっての話です。そう思えば、誰も何も言っていないのに勝手に審判に詰め寄るなんて高校サッカーでも見ないような大ボーンヘッドをかました責任をケイロス監督に問うのも酷です。

 

 

さて、決勝です。これを書いている時点ではUAEかカタールか、決まってはいません。自力的にはカタールでしょうが、地元+ザッケローニ監督が率いるUAEも応援はしたいです。今夜十一時から、観ていきます。

 

 

 

 

 

 

そうそう、原口のゴールは本当に嬉しかったです。ここまで死ぬほど走り続けてきた、ある種のボーナスです。いや、決勝ではツーゴールくらい決めてほしいところです。