大きな決断の結果って、意外とあんなものなのかもしれない~『アイアムアヒーロー』 | ライブハウスの最後尾より

ライブハウスの最後尾より

邦楽ロックをライブハウスの最後尾から見つめていきます。個人的な創作物の発表も行っていきます。

どうも( ^_^)/


ゾンビは歩く奴が好きな者です。


田中コロリ役の片桐さんが嵌り過ぎていてぜひ続編を観たいと思ってしまいました。


アイアムアヒーロー






並外れた身体能力を持つZQN(ゾキュン)の侵攻を受け窮地に陥った比呂美(ひろみ)とつぐみを助けるべく、英雄は隠れていたロッカーからおもちゃみたいなハンマー一個で飛び出していくことを決意します。


英雄=ヒーローと書いて英雄(ひでお)。そう名乗ってきた自分がついに本物のヒーローになるときです。狭いロッカーの先には二体のZQN。無謀な特攻の吉凶は、神のみぞ知るところです。


さぁ……行け!


雄叫びを上げながら勢いよく飛び出した英雄を、ZQNが襲う。必死の抵抗を試みるも万事休す。英雄は噛まれ、同じくZQNになってしまう―――


―――と、ここで、ハッと我に返る英雄。場所は狭い狭いロッカーの中。そう、今までの勇敢な行動はすべて英雄の妄想でした。漫画家らしいといえばそうですが、観客は「またか」と思う。


人々がリビングデッドと化すパニックの前から、英雄は何にも変わっていない。


鬱屈したアシスタント仲間に独自の漫画論で大演説をぶり、喝采を受けるのも妄想で実は一人でぶつぶつ喋ってるだけ。できる見込みのない連載の話で彼女を説き伏せ、結局ボツを食らい愛想を尽かされる。同期である田中コロリの連載作品を読んでつい「おもしれぇ~」と言ってしまう。


未曽有のバイオハザードで世界がひっくり返っても自分は流されるままに運よく助かって、扱えるはずの銃を一発も撃てず、女の子一人助けられない。


眠っている比呂美を襲ったりもしない。規範的といえば聞こえはいいですが、要は意気地なしです。


場面はまた、ロッカーの中。女性二人を助けるには一刻の猶予もない。今度こそ飛び出す―――が、ZQNに襲われてしまう―――と、それも妄想。


飛び出す。

ZQNに襲われて死ぬ。

我に返る。


飛び出す。

ZQNに襲われて死ぬ。

我に返る。


いい加減うんざりしてくるでしょうが、なにしろ自他の命が懸かっています。怖いに決まっている。当然、想像は悪い方向にばかり転がっていく。どうしようもありません。


そして、いよいよ決意してヤケクソ混じりにロッカーを開ける。次こそ現実。果たして―――


―――何が起こるかは、実際にスクリーンで体験していただくとして、既に鑑賞済みの方にも届くように書こうとすると


「まぁ、人生あんなものかもしれないね」


この一言になります。


何かを決心して、それを実行しようとする。先送りにすればするほど『やってしまった後』が怖くなる。誰もに経験があると思います。


そんな超個人的な視点での物語をゾンビ映画でやってしまう。『アイアムアヒーロー』は日本版『ショーンオブザデッド』と呼んでも差し支えない名作ではないかと思いました。


佐藤信介監督は、未だに謎が謎を呼び続ける原作漫画を尊重しつつ、うだつの上がらない漫画家(志望)を暗くて狭いロッカーの中から蹴り出すことで、一本の映画作品としてまとめ上げました。


そして、うだつの上がらない人間をやらせたらトップクラスの役者である大泉洋さんが見事に一人の英雄(えいゆう?ひでお?読み方は自由です)を演じ切り、ダメ人間のちょっとした輝きを見せてくれました。


映画館はすっかり『名探偵コナン』と『遊戯王』に染められていて、やっぱり日本の映画はアニメだなと感心していましたが、実写も面白かったです。是非観てみてください。