蝶は今も飛び続ける~和田光司/The Best Selection~Welcome Back! | ライブハウスの最後尾より

ライブハウスの最後尾より

邦楽ロックをライブハウスの最後尾から見つめていきます。個人的な創作物の発表も行っていきます。

どうも( ^_^)/


自分のお金でアニソン歌手のCDを買うのは初めての者です。


でも、よく考えてみれば、アニソン系アルバムは多くの著名な作詞/作曲家たちが腕を競うように作り上げた珠玉の宝庫です。その一種職人的な仕事の妙を体験できるとあれば、相当有意義で楽しい音楽体験なのではないかと、今更ながら買い集めてみようと思い立っている次第です。


その第一弾です。



和田光司/The Best Selection~Welcome Back!






懐かしい曲、初めて聴く隠れた名曲、いろいろあって、ときには思い出話が暴発していますが一曲ずつ聴いていきます。


01.FIRE!!


浮遊感のあるサウンドに上昇感のあるメロディが乗った楽曲です。俺は『デジモンフロンティア』は観ていなかったので、これで初めて聴いたはずですが、なんだかはじめましてな感じがあまりしません。


それだけ、和田さんの歌、山田ひろしさんの歌詞や太田美知彦さんの曲が耳に馴染んだものになっているのですかね。


飛び越えようとしたゴミ箱を蹴り飛ばしてしまいそうな自分ですが、このアニソンらしい無邪気な感性には未だ心惹かれます。


02.炎のオーバードライブ~カーロボットサイバトロン~


『カーロボット』っていつやってたっけ。と思い、調べると2000年だそうです。90年生まれの俺が10歳のときに観ていたアニメということですが、あんまり強烈に記憶には残っていないです。


でも、やっぱりこの曲はちゃんと憶えていましたね。デジモンシリーズもそうですが、アニメは“曲”で思い出にしていたようです。


忙しないシンセのキラキラとした音と、和田さんの若い、熱っぽい声が溶け合う“燃え曲”となっています。


03.Daybreak


暗い、というわけではない。世界が最も光を失う暁の冷たさを描写したようなA,Bメロが、果てしない陽性を持ったサビに導かれていく、千綿偉功(ちわたひでのり)さん作曲のロックポップソング。


恐らく『和田光司作家陣』の中では最も旧い付き合いであると思われる千綿さんはシンガーソングライターでもあります。彼の声もまた、突き抜けるほどに“陽”の気を持ったボーカルなので一度聴いてみてください。


04.風


数は多くないですが、和田光司本人作詞による等身大な歌です。大サビ前の「ハイッッッ!!!!」が良い感じ。


05.イノセント~無邪気なままで~


シリアスなイントロから始まりますが、そこからのメロディはとても開放的です。


まさにアニソン歌手に留まらない、歌を歌う人の命題ともいうべきタイトルではないかと思います。高音になっていくうち切迫していく歌声に爽やかな無垢を感じます。


06.僕は僕だって


ノンタイアップですが、どのアニメのEDテーマでも通用しそうな明るさと切なさが共存した楽曲です。サビのメロディを追いかけていくギターがエモーショナル。


07.With The Will


いわゆる『デジモンソング』の中で“進化用”と呼ばれる曲ですね。渡部チェルさんのシンセによる編曲マジックが光ります。


曲がフックに満ちているから、歌詞は率直そのものです。未来を抱えた少年のための歌。


08.ターゲット~赤い衝撃~


我が地元は、『デジモンアドベンチャー』不毛の地でした。


やっていなかったわけではなく、全国放送とは時間帯がかなり違っていたのです。


なんと、平日水曜(もしくは木曜)の夕方16時(か、16時30分)。


誰が観るんだそんな時間に。俺です。学校から寄り道せずまっすぐ家に帰って、さらには友達と遊びに行くような高尚な予定など組めなかった子供を狙っていたのだとしたら、東海テレビは大したタマです。


だから『02』がちゃんと日曜九時から始まったのは嬉しかったですね。これで来週の放送時間をいちいち確認しないで済むと。そんな気持ちで聴いていたOPテーマでした。


……曲の話をしろォ!と内なる怒声が届いたので全部打ち消し線を引きました。読まなくてもいいです。


イントロからドカンとくるのではなくじわじわと盛り上げていくクールさも持っています。しかし、歌詞はしっかり熱いです。続編として、戦いが世界中に拡散したアニメのないようにもがっちり合っていると思います。


そして、あれから15年、賢ちゃんはまたあのカッコを


09.The Biggest Dreamer


サビの歌詞一発で勝負は決まりだろうと思いました。きっと、作詞の山田さんもそう思っているはずです。


キャッチーであることは特にアニソンにおける第一原則ではないかという中、これは最高です。OP曲として据えたアニメ『デジモンテイマーズ』も、終盤がちょっと怖かったけど、大好きな作品でした。


10.an Endless tale


宮崎歩さんとともに切っても切れない関係であるAiMさんとのデュエット曲。どことなく木の匂いを感じるアレンジが優しい。


“tale”は“(伝説/架空の)物語”のようなStoryの古めかしいいい方だそうです。アニメのEDとしてはちょっと反則じゃないのと思いますが、いやいや、デジモンという物語は常に主人公を替えながらもエンドレスに続いてきたのだ。


11.Seven


『デジモンアドベンチャーtri.』のエンディングでこの曲が流れたのはグッときました。まるで『Tri.』という作品があることを見越して作られたかのようだったからです。


どこか普遍性のなかに無難な雰囲気も感じていた歌詞が≪Seven Try To Be Free≫というフレーズと『Tri.』という映画作品でかっちりとした輪郭を捉えたと思っています。


12.Starting Over


喉のトラブルに遭い、歌声が変わっていかざるを得ないのは最早、歌手の宿命です。が、流石に和田さんのそれは重すぎる。完全に声質が変わって、さらには完全に声を失うかもしれないところから復帰した歌もまた大きく変わっていました。


“Starting Over”の声は、いわば、“和田光司第一期”の集大成とも呼べる張り裂けそうなほどの強さを前面に出しています。作詞は和田光司本人、作曲は千綿偉功という完璧な布陣。


13.Butter-Fly


幼い頃に聴いた名曲は、年月を経て、その本懐に気付くことが多いです。


作詞作曲の千綿さんがどんな思いを込めていたのか、そのすべては知り得ませんが、この歌が語るのは≪無限大な夢≫ではなく、≪無限大な夢のあと≫であることは確かです。


産まれてからしばらく、我々は誰もが無限大の可能性の中を生きています。


しかし、産声の0.1秒後から既にその無限大は有限となり、加速度的に縮小していきます。


人一人の一生では、選べる道より、選べない道の方が多いという厳然たる切ない真実に少しずつ気付いてしまいます。


すっかり可能性の枝も限りなく一本に近づき、それなりに“進化”はしたけど究極体どころか完全体にもなり切れなかった我が身を省みるとき、和田光司さんのやや憂いを含んだ熱い歌声を求めてしまうのです。


実に三つものバージョン、先述した、和田さんの歌声が変わる度に歌い直されリリースされてきた、和田光司というアーティストのすべてが詰まった永遠の名曲。


14.Pierce


“和田光司第二期”の始まりを告げたのは、『デジモンセイバーズ』OPテーマ“ヒラリ”でした。アッパーだけどメッセージ性の強いその楽曲で復帰を果たした和田さんの喜びは、このアルバムのセルフライナーノーツにも書かれています。


そして、この“Pierce”。“貫き通す”と銘打たれた曲は、誰かへと向けて歌う体を取りながら、地を踏みしめ新たな戦いに赴く自らを鼓舞するような雰囲気を備えています。


和田光司作詞作曲によるロックソング。声は変わっても、ハートは変わらないと宣言するようです。


15.君の景色


死を乗り越えた実績のある人の言葉は、いっそ狡いとすら思います。


歌がそもそも賛美と祝祭の意味合いを持ったものだということもあってか、命の限りを、痛みを伴って知り抜いた人の歌は、そのすべてが遺言/遺書のような切ない輝きを放ちます。


実は和田光司の本領発揮でもある美しいバラード。もっと、もっと、ずっと聴いていたかった。


20160427181350.jpg