俳諧伝授 -4ページ目

平安二十歌仙 第二

 第二 明和三丙戌年臘八長松下会


御次男は馬が上手で雪見哉         太祇
 けむる木葉の埃(ごみ)くさき亭(ち)ン   随古
唐様の湯殿雪隠物好キて          嘯山
 言に訥(にぶ)きをうち守る也        祇
月ほのか楼船(ろうせん)の風のとぎれより   古
 洗ひ鱸(すずき)のちりりちりりと      山


つくばへばこける斗(ばかり)にふとられて   祇
 小銭商ふ町宿の御(お)師(し)        古
あたたかな冬に伸たる福寿草         山
 人噛(か)む犬を狩たつる声         祇
布織を荷主の伽(とぎ)に突付(つきつけ)て   古
 掛(かけ)流しなる筺(かたみ)なりけり    山
走り書(がき)ちと読メまひ(い)と思へども  祇
 打つけ打つけ蛸(たこ)をかぞへる      古
明石潟武備花やかに城建(たて)て       山
 淋しき月や正月の旅            祇
先々の餠かびかるた碁双六          古
 又しつぽりと雨が降(ふる)なり       山

名残の表
文歟(か)それ弓に肩ぬぐ袂から        祇
 星をさされて二度と出(で)兼(かぬ)る    古
とや角と四ッの時(と)斗(けい)もはや打て   山
 音仰(ぎやう)山(さん)に煤(すす)の鼻かむ  祇
掬しても歯にしみわたる御供(ごくの)水    古
 詩つくる少女月を怜(アハレ)み       山
梶(かぢ)はなし桐といふものの候へば     祇
 鳴り来る鷲(わし)に薬堀(掘)すて     古
恵林寺や天目山の秋ふかく          山
 墨の所のくちぬ証文            祇
矢屏(びやう)風(ぶ)の姿は夏の道具也     古
 剃(そり)こくつてもまだ若衆顔       山

名残の裏
白々と足袋脱(ぬい)であるまくら元      祇
 あつめに廻る朝の行(あん)灯(どん)     古
くり返しぴいよろこひの鳶(とび)啼て     山
 門のはしら柱や油(あぶら)揚(げ)の棒    祇
宿の衆御(お)室(むろ)の花に世話ながら    古
 大橋小橋蝶の飛かふ            山