俳諧伝授 -3ページ目

平安二十歌仙  第三

 第三 明和四丁亥年正月廿三日長松下会
 
江の梅や壇(だん)に踏(ふみ)ゆく貝俵     随古
 うつすり霞(かす)みひち曲る嶺(みね)    嘯山
春毎(ごと)にむかしの友の問あふて      太祇
 木馬の頬も撫られにけり           古
草の花雫(しづく)たりたる夕月に        山
 若きと云し銀(かな)山(やま)の秋       祇

とらまへた雁を道では売(うら)ぬ也       古
 追(おつ)手(て)先(さき)なる海こそ見ゆれ   山
筋つけてをのが門のみうつ水に         祇
 まけて帰るも親の気やすめ          古
人の脊のいつともなしにのろのろと       山
 夜ふけの給仕すこし懸(け)想(さう)す     祇
泊るにはよいかこつけの月時雨         古
 一里脇なる太鼓聞(きこ)ゆる         山
米借せと軍(いくさ)場(ば)よりの使来て     祇
 物に馴(なれ)たる社務の戯(たは)言(ごと)   古
花見せてあからせて置く面白さ         山
 井手の蛙の子の出来し池           祇

烏丸殿に巣をくふ鴉(からす)かは        古
 神慮(かんごころ)なる阿房(あはう)目出たき  山
酔(ゑひ)さめて旭涼しく起(おき)あがり     祇
 一字読(よめ)ると訳がさらさら        古
中々に若衆ごころの不敵にて          山
 看病人の孕(はら)むおかしさ         祇
立秋の田(た)面(おも)を見遣(や)る蚊屋の内   古
 霧間に遠く鶴渡るらん            山
在国のけふの月はと仰有(おほされ)て      祇
 下座(げざ)は功者にちやるめらを籟(ふく)   古
替(かは)らずも唯朱子学をもてはやし      山
 神田川こそ浅くなるらめ           祇

騎(のり)掛(かけ)に遣はぬ銭の見事なり     古
 師(し)走(はす)の果の野はらふく風      山
寒念仏笠がよく似た大(おほき)サが       祇
 名うて餅屋の暁の音             古
健(すこやか)に老ゆくぞ世の花なれや      祇
 春闌(たけなは)に牡丹莟(つぼ)める      山