今回は「り」。なかなかうまくいかなくて難渋しました。難渋の過程をそのままお見せすることにしました。レポートも長いのでお急ぎの向きは終わりの方の尾っぽだけをご覧ください。
正読み逆読み二重構造の二重俳句もこういうことがあります。
り——ぬ
離婚懲り/糸瓜売らんと/心逸りぬ (三秋)
りこんこり へちまうらんと しんそりぬ
塗りそんじ/貪老街へ/離根懲り (初秋)
季語:糸瓜・三秋。燈籠・初秋。
離根(りこん):別離のつらさ。
貪老(どんろう):貪欲な老人。欲深な男。
女房に逃げられた。つらさを紛らわせるためにヘチマを売ろうと思い立ちこころが逸った。
別れのつらさに、売り物の燈籠を塗り損じてしまった。悔やんだところで今となってはどうしようもないことなのだが———
婚姻に皆憧れるけどどうしてでしょうね。どんなメリットがあるのでしょうね。同棲で十分じゃないのですかね。
「貪老」ははじめ、「燈籠」だったのですよ。季語が消えたらまずいですよ。困った。「初秋」の季語で「リ」で終わるもの——
初鳥狩(はつとがり)。焼米売(やきごめうり)。槙(まき)売。真菰売・梶葉売。木曾踊(きそおどり)。盆踊。阿波踊。音頭取り。盆替(ぼんがわり)。秋の藪入。魂送(たまおくり)。墓参(はかまいり)。乞巧針(きっこうばり)。楮の毬(こうぞまり)。路刈(みちかり)。…
こんなにあるとは思いませんでした。で、作り直し。
リマの地か/糸瓜売らんと/塩熟りぬ (三秋)
りまのちか へちまうらんと しほなりぬ
塗り直し/貪老街へ/梶の毬 (初秋)
リマ:ペルーの首都。Lima 日本語には無い言葉です。固有名詞を使うのは「もってのほか」なのですが、辞典に記載されているコトバとしてご寛容を。
梶の毬(かじのまり):蹴鞠の家元である京都飛鳥井家の邸宅跡の白峯神宮で、七夕の日に行なわれる蹴鞠会。七夕の二星にたむけられる。季語 初秋。飛鳥井の鞠/梶鞠/七夕の鞠/楮の鞠/七夕の蹴鞠など。
きちかうの露にもぬれよ鞠袴 几董(『井華集』)
ここは南米かよ。ヘチマコロンや咳止めや垢すりは聞いたことがあるが、塩漬けにして大量に売り出すだって?
色の剥げてささくれた中古のボールを塗り直して街に持ってゆく? 誰が買うもんかね。今日は七夕蹴鞠会だよ?
ちょっとウマクない。で以て作り直し———
竜胆や/むらさき悲母尼/刳りめぬ (仲秋)
りんどうや むらさきひぼに さくりめぬ
ぬめり草/匂ひ来去らむ/養豚里 (初秋)
季語:竜胆・仲秋。滑草・初秋。
刳り(さくり):動詞「刳る(さくる)」えぐる。の連用形から畑の畝の溝。
ぬ:連体修飾語を作る格助詞。の。
滑草(ぬめりぐさ): 田の畔や湿地に生える一尺高のイネ科一年草。葉は線形で揉むとぬるぬるする。
匂ひ来去らむ:匂いが行ったり来たりしている。
可憐な花を咲かせている、りんどうの紫色は、なんというか、無償の慈母の愛のように胸をえぐるのです。
花なんて咲かしてなどいられないのよ。豚小屋をあちこちで飼っていてその臭さったらもう…とぬめり草が吸いこんだ栄養分を反芻しながら言いました。
デキがよくないですが、巡礼にご報謝。ウロボロスにご容赦。
これでカンベンしてください。
今日は、「ち」です。「すぐアタマに浮かんだのがチンチロでした。オノマトペは逆読みと相性が悪いのですが、挑戦してみました。
正読みと逆読みの両様の意味を一句の中に作ろうという不当な要求です。
世の中、こんな横車を、増長を、無視していいものでしょうか。
ち——り
ちんちろの/庭の此は吉/眩みけり (初秋)
ちんちろの にはのこはきち くらみけり
離家見らく/千木箱の端に/のろちんち (仲秋)
季語:・ちんちろ(松虫)・初秋。千木箱(ちぎばこ)(生姜市)・仲秋。
ちんちろ:松虫。
眩む(くらむ):強く心に働き掛けるものに出会い正常な判断力を失う。
見らく(みらく):「見る」のク語法(活用語の語尾に「く」をつけて名詞化する語法)。「思はく」「恐らく」など。見ること。見るところのもの。
千木箱(ちぎばこ):生姜市江戸芝明神で九月の祭礼で売る経木製の絵箱。箪笥に入れておくと衣類が増えるというまじない。
のろちんち:愚鈍なトモダチの家。
これはすごい。庭はマツムシの大合唱だ。吉兆が凄すぎてしばらく、ぼおっとなっていたよ。
となりのトモダチののろちゃんたら、買ってもらった千木箱にはもうちゃんと自分の名前が書いてあるんだ。見つけたときはオドロイタよ。ノロマのようで案外ちゃっかりしたところもあるんだよ。
今日は市の検診で街まで行ってきました。銀杏通りは亭々とした銀杏並木が市民の自慢でしたが、大きくなり過ぎたこととて、切り倒され細い苗木が風に揺られていました。ぽっかり空き過ぎた青い空‥‥うっそうとした木陰の花屋さんや、手作りの絵葉書屋さん、洋菓子屋さん、…様になっていたお店のかずかず。
ノロちゃんちは…どこへいったかな?
正読みと逆読みの両様の意味を一句の中に作ろうという不当な要求です。
世の中、こんな横車を、増長を、無視していいものでしょうか。
ち——り
ちんちろの/庭の此は吉/眩みけり (初秋)
ちんちろの にはのこはきち くらみけり
離家見らく/千木箱の端に/のろちんち (仲秋)
季語:・ちんちろ(松虫)・初秋。千木箱(ちぎばこ)(生姜市)・仲秋。
ちんちろ:松虫。
眩む(くらむ):強く心に働き掛けるものに出会い正常な判断力を失う。
見らく(みらく):「見る」のク語法(活用語の語尾に「く」をつけて名詞化する語法)。「思はく」「恐らく」など。見ること。見るところのもの。
千木箱(ちぎばこ):生姜市江戸芝明神で九月の祭礼で売る経木製の絵箱。箪笥に入れておくと衣類が増えるというまじない。
のろちんち:愚鈍なトモダチの家。
これはすごい。庭はマツムシの大合唱だ。吉兆が凄すぎてしばらく、ぼおっとなっていたよ。
となりのトモダチののろちゃんたら、買ってもらった千木箱にはもうちゃんと自分の名前が書いてあるんだ。見つけたときはオドロイタよ。ノロマのようで案外ちゃっかりしたところもあるんだよ。
今日は市の検診で街まで行ってきました。銀杏通りは亭々とした銀杏並木が市民の自慢でしたが、大きくなり過ぎたこととて、切り倒され細い苗木が風に揺られていました。ぽっかり空き過ぎた青い空‥‥うっそうとした木陰の花屋さんや、手作りの絵葉書屋さん、洋菓子屋さん、…様になっていたお店のかずかず。
ノロちゃんちは…どこへいったかな?
回文俳句は、逆読みしても同じになる俳句ですが、ここでは別の俳句になるコトバ遊びに耽っています。言ってみれば二重構造。
季も変わります。
いろは順に今日は、「と」「ち」です。
と——ち
とほほの子/いくさ二転で/柵目何方 (雑)
とほほのこ いくさにてんで さくめどち
血止草/てんでに作意/この朴と
(三秋)
季語:血止草・三秋
とほほ:【感動詞】情けない気持ちを表す。
二転(にてん):二転三転。ころころ変わること。
何方(どち):【代名詞】「いづち」の転。不定称の指示代名詞。どちら。
血止草(ちどめぐさ):弁慶草の別名。セリ科の多年草。葉を傷口に貼り止血に用いる。
てんでに:それぞれ勝手に。
作意(さくい):意図。工夫。たくらみ。
センソウごっこの子、やれやれ、戦況は二転三転、どうやら負けそう。柵で囲まれた空き地を占領するのはどちら?
チドメグサが生えているのは心強い。朴木のしたで作戦会議を開いたが、ばらばらの意見がまとまりそうにない。
子どもはごっこ遊びが好きです。「ごっこ」は「つもり」の補助線です。「つもり」は以前「心算」という漢字を当てました。心はウラのほうに実体があるのですよ。
この漢字は中国語から来たものです。
いい風が通るね!と言ったら台風が近いのだそうです。しのぎやすいのは助かる。
季も変わります。
いろは順に今日は、「と」「ち」です。
と——ち
とほほの子/いくさ二転で/柵目何方 (雑)
とほほのこ いくさにてんで さくめどち
血止草/てんでに作意/この朴と
(三秋)
季語:血止草・三秋
とほほ:【感動詞】情けない気持ちを表す。
二転(にてん):二転三転。ころころ変わること。
何方(どち):【代名詞】「いづち」の転。不定称の指示代名詞。どちら。
血止草(ちどめぐさ):弁慶草の別名。セリ科の多年草。葉を傷口に貼り止血に用いる。
てんでに:それぞれ勝手に。
作意(さくい):意図。工夫。たくらみ。
センソウごっこの子、やれやれ、戦況は二転三転、どうやら負けそう。柵で囲まれた空き地を占領するのはどちら?
チドメグサが生えているのは心強い。朴木のしたで作戦会議を開いたが、ばらばらの意見がまとまりそうにない。
子どもはごっこ遊びが好きです。「ごっこ」は「つもり」の補助線です。「つもり」は以前「心算」という漢字を当てました。心はウラのほうに実体があるのですよ。
この漢字は中国語から来たものです。
いい風が通るね!と言ったら台風が近いのだそうです。しのぎやすいのは助かる。