オモテ(ふつうの詠み方、左から右へ)、ウラ(右から左へ、逆読み)の二重にかさねた俳諧の遊びです。きょうは、イロハ順に「か」ー「よ」です。次回は「よ」ー「た」です。
「か」—「よ」
数へ日の/流離九年に/死期来もよ (仲冬)
かぞへびの りうりくとせに しごきもよ
蓬ごし/偽徳利売り/伸びへ素娥 (三春)
季語:数え日・仲冬。蓬(よもぎ)・三春。
数え日(かぞえび):年末の残り少ない日々。「数え月」は十二月のこと。
流離(りゅうり):故郷を出て他国をさまよい歩くこと。流浪。
もよ:【連語】係助詞「も」に間投助詞「よ」の付いたもの。詠嘆の意。
素娥(そが):月に住むという伝説の仙女。月の異名。「素」は色が白いこと。
ことしも終わりに近づいた。思えば国を出て流浪することもう九年になるのだなあ。生涯がこんなだったとはなあ。
よもぎ越しにインチキ陶磁器売りが声をかけてきた。「月へ行くにはどう行けば?」と言う。聞きつけた月の仙女が腰を伸ばした、とさ。
「にせ」には、「偽(にせ)」のほかに「二才(にせ)」もあり、意味は「若いひと」「青年」です。
お内儀が大掃除をはじめました。あちこちに追いやられています。まるでゴミ扱いです。まあ…毎年のことで、空を眺めて〈行く年やァ〉……そう言えば、鳥もみなくなりましたねェ(シミジミ)