さかしら伊呂波50撰(2)「お」 ハイドン | ouroboros-34のブログ

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こころに映りゆく由無しごとを其処は可となく書き付けて
ごうなっだのでありますぐるらめ。

回文短歌(逆から読んでも正読みと同じになる短歌)を偉人をテーマに詠み継いでいます。今回は冠文字「お」で「ハイドン」で纏めてみました。

[お] ハイドン
オラトリオ 清し流れて 遠く凪(な)ぐ     
  程(ほど)照(て)れ愛(かな)し よき澱(おり)と羅宇(らお)

———おらとりお きよし ながれて とほくなぐ
    ほどてれかなし よきおりとらお

———教会から合唱曲が流れてくる。清い。遠くまで敬虔な穏やかさが満ちてゆく。日差しはよわまり、優しく、すべてのものが愛おしくなる。側溝にとめた羅宇屋。水のよどみも煙の煤(すす)も。

オラトリオ:oratorio【イタリア語】。宗教物語の演劇音楽。ヘンデルの「メサイア」、ハイドンの「天地創造」「四季」など。聖譚曲(せいたんきょく)。「天地創造」は、「旧約聖書」の「創世記」第一章とミルトンの「失楽園」を元にして書かれた。
羅宇(らお):キセルの吸い口と、刻み煙草を詰める雁首(がんくび)をつなぐ竹筒(たけつつ)の部分。昭和の初めごろまで夕方、町内をゆっくりまわる羅宇屋(ラオヤ)の笛が聞こえた。リヤカーにはボイラーを載せ、修理とヤニ掃除が仕事のほとんどだった。
程(ほど):程合い。ちょうどよい程度。頃合(ころあ)い。

「お」で終わるニホンゴは無い。「を」に変わるのがほとんどで、「青(あを)」「魚(うを)」「竿(さを)」…、「ほ」に変わるものがいくらかあって、「庵(いほ)」「顔(かほ)」「塩(しほ)」…。「頬(ほほ)」だけは、ホホと読んだりホオと読んだりして決まっていない。ここの「羅宇(らお)」や、「包(ぱお)」は、外来語。
「お」は、尊厳の意味を一字一音でもっている特別な音らしい。辞書では「お」は「御」だけだ。
仮名文字「お」「オ」の出処は、ひらがなもカタカナも、あいまいに、置き字の「於」であることに納得した。「於」は、「於母影(おもかげ)」と「於胡海苔(おごのり)」の2語だけ。置き字(おきじ)というのは本来訓読(くんどく)のとき読まない字。お飾りの助字(じょじ)。「焉(えん)」「乎(こ)」「呵(か)」…

***
———〈雲手風足〉
「お」すなわち「於」を四字熟語にすると〈雲手風足〉になる。そもそも正体のつかみどころがないから雲に囲まれていることさえわからない。雲に巻かれると、なにもかもわからなくなる。風の形は無いのに存在がわかるときがある。動くときだけ明確にわかる。しかし、だからといって、これ、と指し示すことはできない。
どちらも形は無く流動することによって具現化する。 
中国語はしばしばことばを擬人化する。

興にまかせて余分なことを書きました。気分を紛らしているのです。取り付かれた帯状疱疹の痛みがそろそろピークを過ぎるとあって、ソッポ向いているのです。左の腕は発赤だらけでまるでマーシャル群島です。失楽園の島民です。冬眠したいです。
それにしても急に寒くなりましたね。お天気のいい日に「更衣」することにしましょう。といっても、来たきり雀のオイラは夏のものと冬のものの入れ替えなんて空想しただけで終わってしまうのですよね。
ハイごきげんよう。塗り薬の時間です。