さかしら伊呂波50撰(2)「と」 モンテーニュ | ouroboros-34のブログ

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こころに映りゆく由無しごとを其処は可となく書き付けて
ごうなっだのでありますぐるらめ。

[と] モンテーニュ

訪(と)ふおとに 耳を欹(そばだ)て ねむる鶴    
胸出た羽(は) 其(そ)を 身々(みみ)にと追ふ音(と)

——とふおとに みみをそばだて ねむるつる
   むねでたはそを みみにとおふと
  
———音に気遣いながら眠る鶴たち。乱れてはみ出た羽を身繕いする音が聞こえるだけの、今は無音の世界です。モンテーニュの世界です。 

其を(そを):それを。
身々(みみ):その身その身。それぞれ。おのおの。
音(と):「音」の「お」が脱落した形。「足の音」(あのと)、「瓊な音」(ぬなと)、「遠音」(とほと)。

フランスのモラリスト、ミシェル・ド・モンテーニュが107の随筆を集めて刊行した書物『エセー』( Les Essais)もしくは『随想録(ずいそうろく)』は、エッセイ(随筆)という「特定の話題に関する主観的な短い文章」の形式を創始した。人間の営為を断片的な文章で省察することにより人間そのものを率直に記述しようとし、モラリスト文学の伝統を開いた。フランス語のessaiは「試み」や「企て」という意味である。

〈私を超える霊異は無い〉  (『随想録』)

〈107の断章のどれが欠けてもジグソーは完成しない〉
              (『私的随想録』)
本当に、「私」以上にフシギなものは世の中にありませんよね。