回文短歌いろは歌留多「な」その21 | ouroboros-34のブログ

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こころに映りゆく由無しごとを其処は可となく書き付けて
ごうなっだのでありますぐるらめ。

[な] ドストエフスキー

波返(なみがへ)し 罪(つみ)とはなにか 罰(ばつ)とはと
  図(づ)馬鹿(ばか)に「なば」と 御厨子(みづし)へ寄居子(かみな)

———どどおんどどおんと岩に波が打ち当っている。ドストエフスキーの「罪と罰」のことを考えている。老婆は「調理されるのだからヤドカリが台所にあるのは当たり前」と思っている。老婆のカネは老婆の懐にあるべきだし、居候の分際で「そのカネ寄こせ」とは烏滸(おこ)がましい。

罪と罰(つみとばつ): ロシアの文豪フョードル・ドストエフスキーの実存主義的な考え方を示す代表作。
頭脳明晰ではあるが貧しい元大学生ラスコーリニコフが、「一つの微細な罪悪は百の善行に償(つぐな)われる」「選ばれた非凡人は、新たな世の中の成長のためなら、社会道徳を踏み外す権利を持つ」という独自の犯罪理論をもとに、金貸しの強欲(ごうよく)狡猾(こうかつ)な老婆を殺害し、奪った金で世の中のために善行をしようと企てるも、殺害の現場に偶然居合わせたその妹まで殺害してしまう。この思いがけぬ殺人に、ラスコーリニコフに罪の意識が増長し、苦悩する。
波返し(なみがえし):①打ち寄せる波を受けて返すこと。②雅楽の青海波にある秘伝の太鼓の打ち方。ここでは②もサウンド効果として聴こえてる?
図馬鹿(づばか):ヅは、特別の、の意の接頭語。図は当て字。「図太い」「図抜けた」など。擬態語「づば」の短縮語。ど阿呆。
なば:接続助詞「ば」が、ナ行変格活用動詞未然形に付いた形です。順接の仮定条件の意味になります。なお、ナ変動詞は古語では「死ぬ」「去ぬ」の二語だけで、「去ぬ」は現代語では、廃語(死に体)なので、ここでは「なば」が即、「死んだら」の意味になるという面白い言葉です。
御厨子(みずし):①厨子の敬称。②厨子(台所)で働く女奉公人。厨女。水仕。
寄居子(かみな):がうな。ヤドカリの古名。カニにもエビにも似ている。俳句の季語・春。そして、「居候(いそうろう)」の隠語。

罪はあっても罰は無いに等しい。「罰を犯した者、本人が不当に思わない罰は罰ではない」と思うのだった。

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地球旅行の土産に「波返し」はどうだ?と閻魔(えんま)に訊いたら「雲手風足(うんしゅふうそく)」と答えた。で、リュックに果実を一個詰めて持って行く。地球には借用証の代わりに短歌を残す。
闇雲(やみくも)に 風(かざ)よ勿来(なこそ)と 遮(さへぎ)りき
    辺境(へざと)其処(そこ)なよ 釈迦(さか)に捥(も)ぐ果実(み)や

極楽旅行中のミナサン。おげんきですか? せいぜい楽しんでください。ニンゲンに生まれるというチャンスはそうそうあることではありません。健康でこの世を満喫しましょう。グッド・ラック! ハイチャイ!