歌仙「霽の巻」の句解を試みました。(その34) | ouroboros-34のブログ

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こころに映りゆく由無しごとを其処は可となく書き付けて
ごうなっだのでありますぐるらめ。

句解34霽・おもいかねつも

   かげうすき行燈(あんどん)けしに起侘(おきわび)て    (前句再出)
   おもひかねつも夜る((ママ))の帯引(おびひく)      重五

夜る:夜ル。「ル」は、添え字(そえじ)。捨て仮名(すてがな)。本文の字の横に添えた小さな字。自分の意図どおりに読ませるため漢字のしたに添える小さな仮名。「黒ロ」(コクでなくクロ)「心ン」(ココロでなくシン)川柳・俳句でよく使われます。よく似たものに「迎え仮名(むかえがな)」があります。これは漢字の上に添えておく漢字の読みの最初の仮名。やはり川柳・俳句に多い。「や宿」(シュクでなくヤド)

 諸注はいずれも誤りとしているが、重五はあやまったのではなく、「夜」はヤと読むことが多い字でヨルと読んでもらうための捨て仮名を、短冊に筆書きするのに勢いの形から生じたものです。普通は書き終えてから、付け加える。添え字の存在に俳があり面白いと思います。現代では見かけませんが誰かやってくれませんかね。

「おもひかねつ」「夜」「帯」の三題噺ではありませんが、こう揃うと大概(たいがい)「恋」の句と考えます。しかし挙句のしかも花前の、お開きを目前にして「恋」は無いでしょう。「恋」句は既に六句目に芭蕉が詠んでいます。恋の句ではないと思います。
「おもひかぬ」:思ひ兼ぬ。下二段。①恋しさを抑えきれない。②考え及ばなくなる。考えあぐねる。持て余す。

帯引を古注は艶(つや)事(ごと)としていますが、「帯解く」と混同しています。
帯引(おびひき):①遊戯の一。阿弥陀(あみだ)くじのようなもの。運試(うんだめ)し。②遊戯の一。綱引きのようなもの。力比(ちからくら)べ。

———夜っぴて帯引き(連句)をしてしまったので、考え倦(あぐ)ねて、もう頭がくたびれるやら、朦朧(もうろう)としてどうやら朝の行燈という体(てい)たらくでございますよ。

次は

   おもひかねつも夜ルの帯引(おびひく)         (前句再出)
   こがれ飛(とぶ)たましゐ((ひ))花のかげに入(いる)    荷兮

もうすぐ、おしまいです。ニンゲンはもうちょっと生きていそうなので何を書こうかと考えています。
別に小説を試作しました。『be動詞の犯歴』という題です。オカネが無いので紙の出版は諦めて、ネット出版にしようかな、なんて考えています。