歌仙「霽の巻」の句解を試みました。(その21の2) | ouroboros-34のブログ

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おはようございます。けさのニュースで、「安部前首相がコロナウイルスに罹患した」そうですが、ご存知ですか?
さてつづき。

句解21霽・おかざきや(その2)

  真昼の馬のねぶたがほ也    (前句再出)
  おかざきや矢矧の橋のながきかな   杜国

前回は二十吟と首尾吟に変異するいきさつを述べました。
首尾吟(獅子ともいう。16句構成の連句)の組合わせもゼロからのスタートです。言われている順序(ここでは「旧」と名付けておきます)は、
  ae cb ed ba dc ae cb ed
頻度は、  長  短  計
a 2  1  3
    b 1  2  3
    c 2  1  3
    d 1  2  3
    e 2  2  4
合計  8  8  16

これが文献に残された分担で、eの荷兮が1句多いのと、長句・短句の不平等を除けば均等の持ち分です。

しかし伝えられている連句は誤りで本当は次の順序であったと思います。

  ab cd ee ba dc ae cb ed

前半3組は歌仙のスタート時の順序①、後半4組は歌仙平句部分の組合わせ② となっています。eeの組合せが奇妙ですが、もともと、efとなるべきところでf(正平)にかわって芭蕉が覆面出句すべきところを芭蕉dには挙句にまわってもらうことにして荷兮が受け持つことになりました。この変更による計16句に於ける分担頻度に変化はありません。
修正の合理的であることが以下の検証で明らかになります。

  ◆

首尾吟として修正された発句・脇・第三…のくだりを再掲しますと、
   ——
おかざきや矢矧の橋のながきかな(雑)   杜国  (発句)
晦日をさむく刀売る年    (冬)   重五  (脇)
捨し子は柴苅長にのびつらん  (雑)   野水  (第三)
襟に高雄が片袖をとく    (雑)   芭蕉  (四句目)
雪の狂呉の国の笠めづらしき  (冬)   荷兮
庄屋のまつをよみて送りぬ  (雑)    f 正平 (代荷兮) …折端
あだ人と樽を棺に吞みほさん  (雑)   重五  (初折ウラ) …折立
(以下変更なし)
   ——

このように組み替えると発句・脇・第三・以下ともに式目に反しない自然な連句
になります。当季が冬なので冬発句にするところですが、雑発句にしたところがミソです。

今回は首尾吟(歌仙霽の巻後段)の発句です。前段「二十吟」の終わりに杜国が準備していたものです。

当季発句の歌仙では、雑の句を発句にすること自体、ありえないのですが、ここは二次発句として例外的な扱いで当用です。二次発句としては芭蕉宗匠のお墨付きを得て、二重切字御免と大威張りです。おまけに「ながさ」から「長久」を兼題に採用されて大喜びの杜国が目に見えるようです。

岡崎の矢矧部を尋ねてきた人は初めてきたのでしょう。その名にし負う橋の長さは聞いていた以上に長大で驚いたのです。「かな」は切字としての用よりも、本来の意味の詠嘆が強く表れています。従ってこの句の切字は「や」のみです。

古注では「橋板にことことと音する馬の穏やかなる足掻の響も聞こゆる心地す」とか「…ながきかなのかなが取って付けしやうに不随にぶら下がれるが半ば眠り居る気分におつりいてまことに妙なり」とか、安東次男は、「(橋の)長さをもてあます情を誇張し滑稽化し連衆に伝えたったか」といずれも、解釈をもてあましています。 首尾吟のはじまりと気づけば前句に拘る必要はさらさらないことになり、不即不離の杜国の句立ての妙に納得がゆくことと思います。

———いやあ聞くと見るとは大違いだな。矢矧の橋の長いのには心底たまげた。

みごとに家人にかつがれました。今日はエイプリルフールなのでした。
冒頭のフレーズが、今朝早々家人にヤラレたニュースでした。