歌仙「霽の巻」の句解を試みました。(その20) | ouroboros-34のブログ

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句解20霽・真昼の馬

  うれしげに囀る雲雀ちり〱と(前句再出)(「〱」:繰り返し記号)
  真昼の馬のねぶたがほ也    野水

安東次男は「馬のねぶたがほ」を、「…滑稽のたねに李白の詩句から出た格言「馬耳東風」を含ませたところがみそだ。」と絶賛しています。「馬耳東風」は、「ひとの異見や批評を聞かないこと」の意味で、「春眠」と意味を取り違えているようですね。しかも「馬耳東風」がカクゲン⁉ 安東次男は漢字が四つならんでいたらカクゲンだと思う浅はかさ…

古注でも「長閑ヲ眠ル馬也」とか「東海道を旅する心地す」とか言っています。ソウジャナイ!!

馬は馬でもウマチガイ。「真昼の馬」と言えば「付け馬」のことです。
つまり遊郭で遊びすぎて未払いの遊興費を取りたてるために客といっしょにうちまでついて行く若い者(牛太郎(ぎゆうたろう))のことです。牛太郎は夜の商売なので朝の遅い客について行く昼が大の苦手です。

「也」は切字の顔をしていますが「俳句の切字」ではありません。勘定書きの「〆て~文ナリ」のジョークです。
付は前句、口さがない雲雀(町の衆)に対するうま(妓夫(ぎゅう))の物付。

———は、は、は、うまを連れてやがらあ。ぱっとしねエつらしやがってよウ。おてんとさんも笑ってるぜ。

さて、これまでも古人の解釈は不当なものでしたが、いよいよ次の句からまったく解釈不能な妙ちくりんな句並びになります。
じつは句会が酒乱の場と化して、だいこんらんになったことを抜きにしては訳が分からないことになるのです。
幸い(というか)ワタクシメはボケが大いに進み、酒を飲まなくても飲みすぎて前後不明の状態に近くなっているので、この芭蕉たちのことがよく理解できるようになっています。
なにはともあれ、つぎの句を見てください。


  おかざきや矢矧の橋のながきかな   杜国

切字、「や」と「かな」がふたつもあるのですよ⁉
ここは発句ではないので切字を入れてはいけないキマリなのです。それがふたつも・・・(絶句)
古人(安東次男も含めて)ギャフンとなったところです。

異常連句のハジマリで~す。