句解09霽・つゆ萩の
燈籠ふたつになさけくらぶる(前句再出)
つゆ萩のすまふ力を撰ばれず 芭蕉
安藤次男の句解のもはや転合(てんごう。悪ふざけ。安東が他の評者の評に頻りに遣っているコトバ)と鷹揚に構えていられない転合さを告発しているシリーズの句解6です。
「すまふ」を安東次男を含めてすべての先見が「相撲力」と解釈しています。そしてはなしの辻褄合わせに苦労している。「相撲」は陰暦七月の季語で「露」と「萩」とが重みを中に力比べをしているという。が、当然これは相撲のことではありません。露と萩が相撲をとるわけがありませんよ。比喩にしてもお粗末すぎます。芭蕉さんの句ですよ。
「すまふ」は、「住まう」と「争う」の二重の意味を掛けた言葉なのです。こうなります、
———露がどちらの萩に結ぼうかと迷うぐらいどちらの萩もなよなよとしている。
「露が結ぶ」(住まう)と「萩が微風に揺れている」(争う)の両義性の語「すまふ」を和歌(短歌)のように奥床しく表現した芭蕉らしい気配りのきいた句なのです。相撲をとる??
以下、辞書からすこしばかり———
住まふ(すまう):「住む」に継続の助動詞「ふ」が付いたもの。①居着いて暮らす。②(芝居の舞台で)登場人物が座り込む。
争ふ(すまう):ハ行動詞四段。①相手の意志に従うまいと反抗する。抵抗する。②辞退する。断る。
この句に野水が付けました。その付け合いは?
蕎麦さへ青し滋賀楽の坊 野水
今度は易しいですね。ただ、「さへ」の解釈に、皆さん、こまったようですよ。