O   続いてのテーマは夏の風物詩「高校野球」なんですが、今回は我々の出身校とかの情報がバレるリスクを大いに含んでいます(笑)。

 
T   最初にお話しておくと、僕らは高校の同級生なんですが、僕らの母校が今年めでたく甲子園に出場しました。
 
O   あ、もう49校に絞られましたね(笑)。昔の対談で県も言っちゃってた気がするので、もうわかっちゃうかな。
 
T   出場を記念する意味も込めて、まずは母校についてのことから話していきましょう。
 
O   そうですね、もう学校バレとかどうでもいいですね(笑)。
 
T   僕にとっては母校の野球部の存在って大きくて、実は入学を決めたきっかけも野球部だったんだよね。中学3年のときに一時期、地元の球場に高校野球の応援に通ってた時期があって、後に母校になる高校の応援にもよく行ってた。それを知った担任の先生が、それなら地元の高校じゃなくてそこを受けてみたらどうだ?って勧めてくれたのが受験のきっかけだった。
 
O   そんなことがあったのか。たしかにT君は学区外から通ってたから何か理由があるんだとは思ってたけど、そういうことなんだ。
 
T   覚えてるかわからないけど、僕らが中学3年のときのうちの母校の野球部ってすごく強くて、甲子園にも行ってるんだよね。
 
O   そうみたいだね。入学する前の年に甲子園行ってたのは知ってるな。
 
T   すごく良いピッチャーもいて、強かったから応援しがいもあったんだよね。だから熱狂的に応援してて、それが高校入学につながった。言ってみれば、あのときの野球がなければ、僕らが出会うことも、こうやって対談することもなかった(笑)。
 
O   なるほど、運命ということですね(笑)。
 
T   だけど我々が在学してた3年間は一度も甲子園に行けなかったんだよね。
 
O   ヒントがどんどん出てきてますね(笑)。
 
T   もっと言っちゃうと中学3年の年と、卒業した後の大学1年の年に甲子園行ってる。
 
O   あ、そこまで言っちゃいますか(笑)。
 
T   どっちかに1年ずれてたら甲子園行けたんだけど、結局在学中の3年間は行けなかった。実はその後も含めて僕はまだ甲子園に行ったことがないんだよ。
 
O   そうなんだね。僕は卒業して数年経ったある年に出場したときに甲子園まで応援に行ったよ。で、母校の話とは全然関係ないんだけど、母校の試合が始まる前の試合を外野で見てたら、ほんとすぐ近くにホームランボールが入ったのね。だから家帰ってから、『熱闘甲子園』を録画して食い入るようにチェックした。僕が映ってないかと思って(笑)。
 
T   再生と停止を繰り返したのね(笑)。
 
O   そうしたら、そのときは僕はエンジ色のポロシャツを着てたんだけど、画面はボールに焦点が合ってるから周りの観客はボヤけてるものの、なんかエンジ色が見える気がしたんだよね(笑)。ほんと全然関係ないんだけど、甲子園に応援に行ったときのことを思い出すと、そのことを真っ先に思い出しちゃう。
 
T   在学中に甲子園に行きたかったという思いはあるけど、でも中学3年のときに球場で見てた選手が同じ学校にいて、校内のソフトボール大会で対戦できたりもしたのは、憧れの選手に近づけた感じがして、感動したな。
 
O   あれ?でも高校のときにそんなこと言ってたっけ?
 
T   実は在学中に熱が冷めちゃったところがあるんだよね。外から見てる分には憧れの野球部だったけど、現実を見ちゃうと、こういうもんかって思っちゃって。
 
O   まあ、そういう気持ちはわからんでもないけどな。
 
T   理想と現実のギャップじゃないけどね。
 
O   僕は高校野球が一番身近にあった高校時代に野球にあまり興味なかったし、むしろ野球部に対してはひねくれた劣等感も持っていたから、高校野球を見ないで逃げてたところがあった。
 
T   言われてみれば在学中に一緒に応援に行ったりしたことなかったもんね。
 
O   高校野球に興味を持ったのは大学になってからだった。すごく覚えてるのは、大学4年の夏休みに実家帰って暇だったから高校野球見てたときのこと。年齢もバレるけど(笑)、田中マー君とかハンカチ王子が活躍した年で、早実と駒大苫小牧の2試合とか、そのちょっと前にあった帝京と智弁和歌山の試合とか、すごく面白い試合を立て続けに見て、高校野球ってこんな面白いものだったんだって気づいたんだよね。それと同時に、自分が現役の高校生の頃に見ていたら、もっとシンクロして見れたかなとか、そんな後悔も浮かんだ。
 
T   その気持ちはなんとなくわかるな。僕も高校入ってからは熱が冷めちゃって、あまり応援に行ってなかったけど、卒業して少し距離ができると、やっぱり母校かわいさの気持ちが出てきて、応援に行ったりしたな。社会人になってからは地方大会の決勝に進んだら見に行くというルールを自分の中で決めてて、そのときは休みを取って見に行ってた。そうすると、平日なのに会社の人がいたりするんだよね(笑)。
 
O   あるあるネタだね。僕が甲子園に行ったときもけっこう会社の人に会ったよ。
 
T   しかもあの人同じ高校だったんだっていうのをそのとき初めて知るっていう(笑)。上司に捕まって一緒に見たこともあったよ。でもそれが楽しかったりもする。
 
O   うちの部署にも毎試合必ず休みを取って応援に行く熱狂的な人がいたよ。それだけ面白いってことなんだね。
 
T   またそういうのがきっかけで会社内のOB同士のつながりができたりもするから、それで愛校精神がさらに強くなることにもなるね。
 
To Be Continued...
T   新海監督の作品には走るシーンもよく出てくるね。『君の名は。』だと彗星が落ちる前にみんなを避難させるシーンで走ってたし、今回も山手線の線路の上を走ったりしてた。走るっていう行為は青春そのものなんだろうね。
 
O   たしかに線路走ってたね。『スタンドバイミー』でも線路を走るシーンがあったけど、青春ものはやっぱり線路を走らせたくなるんだね。
 
T   走らせて、それで主人公の思いを叫ばせる。今の時代、こじらせ世代とか言われてるけど、その中でああやってストレートに恥ずかしい思いを叫ばせるのはやっぱりすごいと思うな。ポスト宮崎駿は誰かなんて言われたりすることもあるけど、新海誠監督はこの令和の時代にその地位を確立しつつあるかなって気がするね。
 
O   令和の宮崎駿ですか。
 
T   でも決定的に違うこともあって、ジブリでは新宿は絶対に出てこない。
 
O   まあ、たしかにジブリが描くのは完全にファンタジーの世界だからね。
 
T   せいぜい出てきて聖蹟桜ヶ丘。あの辺りのちょっと郊外ぐらいが限界かな。
 
O   やっぱりジブリは非日常感を大事にしてるんだろうね。新宿とか出しちゃうと途端に現実っぽくなっちゃうから。
 
T   逆に共通してるって思うこともあって、ちょっと宗教色というか神話的な部分があるところなんかそうかなと思う。新海監督の作品にも、口噛み酒とか、人柱とかが出てきたりする。
 
O   たしかに人柱は今作で重要なテーマになっていたね。
 
T   あと、陽菜さんが帆高よりも年上だと思われてて、実際本人も年上っぽく振る舞っていたんだけど、本当は年下だったっていう展開も面白かったな。
 
O   僕が見ててよくわからなかったのが、陽菜が年下だったってわかって帆高がすごく悔しがるんだけど、なんであそこまで悔しがるのかなと。なんでですか?
 
T   それは年下だって馬鹿にされてたというか、揶揄するような態度をとられてたわけだから、実際は逆だったと知って腹が立ったんじゃないのかな。そして、そのことをツッコみたくとも、ツッコむ相手がいなくなってしまった悔しさもあるんじゃないかな。
 
O   なるほどね。それに、本当は自分が一番年上で、しっかりしてリードしなければならなかったところを、年上って聞いてたこともあって陽菜に甘えてたから、自分がもっとしっかりすべきだったという、自分への怒りもあるのかな。
 
T   そうだね、そういう気持ちもあると思うな。
 
O   主人公たちの年齢が当初思われてたのとは違うって展開は『君の名は。』にも通じるね。『君の名は。』は同い年だと思われてたところが、実際には何年か前の時点で同い年だったので、三葉のほうが年上なんだよね。今回は年上だと思っていたのが年下だった。
 
T   『君の名は。』を見返してみて改めて気づいたんだけど、オープニングに東京で社会人になった三葉がアパートで暮らしているシーンが映ってるんだよね。
 
O   あ、そうなんだ。意識してなかったな。
 
T   だからよくよく見ると、三葉は死なずに生き残ったというのは、もう最初の時点で答えが出されているんだね。
 
O   なるほど、新海監督もけっこう大胆なことをするんだね。実は最初に結末を見せちゃってたって面白さがあったのか。
 
T   さすがに1回見ただけでは気づかないけどね。2回見てやっとわかる。だから時系列的には現在からスタートして、過去に戻るって作りになってるんだね。
 
O   そういえばこの前、仕事終わりに職場の人たちとジョギングに行ったんだけど、そのときに『君の名は。』のラストシーンで瀧と三葉が出会う須賀神社に行ってきたよ。
 
T   聖地巡礼ってことですか。
 
O   そう、思わぬかたちで聖地巡礼をすることになったんだよね。で、行ってみて思ったんだけど、設定上は電車乗っててすれ違って、それでお互い気づいて探しに行くって感じだったと思うけど、神社が思いのほか駅から離れてたから、なんであの場所で会ったんだろうと不思議に思っちゃった。ついこの企画をやってるとダメ出しするほうに目が行っちゃって(笑)。
 
T   あのシーンでいいなと思ったのが、お互いハッて気づくんだけど、よく考えたら知らない人同士だと一旦冷静になって、すれ違うんだけど、でもやっぱりって感じで勇気を出して声かけるんだよね。
 
O   あれ?「今振り返れば、あの人もきっと振り返る」ってセリフがあるのは『君の名は。』だっけ?それとも『秒速5センチメートル』だっけ?よくわからなくなっちゃったな。
 
T   あと、音楽はどう思った?
 
O   そうか、『君の名は。』と『天気の子』が似たような印象を受けてしまうのは、どっちも音楽がRADWIMPSっていうのもあるのかな。
 
T   ただ曲を提供してるだけでなく、音楽監督みたいな感じで制作に関与してるみたいだね。
 
O   たしかにスタッフロールで音楽RADWIMPSってなってたから、主題歌だけじゃなくて全部を丸ごとRADWIMPSがやってるんだね。
 
T   1アーティストが映画作りから参画してるケースもそんなにないんじゃないかな。とくに新海監督の作品と音楽は切り離せないしね。『秒速5センチメートル』の『One more time, One more chance』とか。あれは音楽が先にあったパターンだけど、今回は作品のために書き下ろしたというパターンだね。
 
O   『君の名は。』で『スパークル』が使われるシーンはすごく好きなんだけどね。日暮れ時の中を走ってくみたいな。そもそもああいう田舎の日暮れ時の雰囲気が好きなんだけど、その雰囲気と曲調がすごく合ってると思った。
 
T   そこにきらびやかな彗星も絡んでくると。
 
O   『君の名は。』は何回か見てるんでもう飽きてきちゃってるんだけど(笑)、あのシーンはそれでも良いと思うな。
 
T   僕が『君の名は。』で一番好きなシーンは、手のひらに名前をお互い書こうってなったのに、後から三葉が見たときに「すきだ」って書いてあったところだな。
 
O   僕の知り合いで『君の名は。』を好きって言ってる人もそのシーンが良いって言ってたな。「すきだ」のシーンが好きだって(笑)。
 
T   で、繰り返しになるけど、『天気の子』はホテルでのシーンが一番良かった。
 
O   『天気の子』はまだ一回見ただけだから、普通に良い作品だなってことで終わっちゃって、ダメ出しできるぐらいにはなってないな(笑)。
 
T   もう一回見てみよう。
 
The End.
T   僕が『君の名は。』よりも『天気の子』がいいと思ったのは、ストーリーの自然さだね。『君の名は。』は天変地異も出てきてダイナミックさはあるんだけど、現実離れしすぎてる感じもする。
 
O   たしかに『天気の子』は舞台が東京から動かないし、起こることも雨が降るというだけで、天災の域を出ないものであるね。
 
T   また新海監督は街の描写もすごくリアルだからね。
 
O   文字らないで商品名とかがそのまま出てくるから、最初のうちは商品名が気になっちゃってストーリーが入ってきにくかった(笑)。なんだか集中力を削がれちゃって。
 
T   コラボして広告収入とかもらってるのかなって思っちゃうよね。
 
O   商品名を直で書いてるってことはそういうことなんじゃないのかな。『君の名は。』のときはフォントとかは同じでも、商品名は多少文字ってた気がするけど、今回はマクドナルドなら「マクドナルド」って、そのままの名前が表示されてた。
 
T   しかもその「マクドナルド」をクビにされちゃうし(笑)。ああいうの描写するときは一応そのまま書いていいですか?って確認して、それでだめだと断られたら監督自身が説得に行ったってことはネットで読んだな。それだけ現実感と、現実感の先にあるファンタジーにこだわってるみたいだね。
 
O   逆に『君の名は。』には田舎と都会が舞台になってるって面白さもあったな。この前テレビで『サマーウォーズ』を初めて見たけど、あれも田舎が舞台なのが面白かった。やってることはバーチャル世界の戦いという現代的なことなんだけど、そのゲームをやってる場所が田舎という、その変な感じが面白いと思った。
 
T   『サマーウォーズ』も最初は憧れの女性の先輩に恋人のふりをしてほしいと言われて、いわゆる王道の学園ドラマっぽいストーリーなのかと思いきや、途中からコンピュータの世界になって、あれあれ?って展開だったね。
 
O   スペックを上げるために田舎の家にでっかいサーバーが納入されてくるのとか(笑)、面白かったな。
 
T   でも新海監督の作品を見てると、都会を美化して田舎をディスってる感じがする(笑)。『君の名は。』の三葉も早く東京に行きたいって言ってたし。
 
O   こんな村いやや!って、吉幾三みたいなこと言ってたね(笑)。
 
T   一方で瀧はカフェでリア充やってたし、今回の『天気の子』でも、帆高は島から早く出たいって思ってた。東京賛美の雰囲気は一貫して通されてるなって思う。
 
O   先生は地方をどんどん敵に回してますね。前回は村で、今回は島も敵に回した(笑)。
 
T   新海監督も地方の出身だったから、憧れて東京に出たって思いがあるのかな。東京一極集中で、それを是正しようという世の中の流れに完全に逆行してる(笑)。
 
O   まずいなぁ。でもだから今作では東京に雨を降らせて、東京は住めないから地方に住もうよって言いたいのかな。
 
T   いやいや、帆高も3年間我慢して結局は東京に出てきちゃってるから。島流しにあってたけどようやく出てこれたみたいな、流刑の地みたくなっちゃってる(笑)。
 
O   3年間は心を無にして過ごしたみたいなこと言ってたね(笑)。
 
T   完全に懲役を終えて出てきましたって雰囲気だった。
 
O   話の展開的なことで言うと、ドラえもんを見て育った人間としては、天気を晴れにできる能力を商売に使ってる時点で、絶対後から良くないことが起きるってわかるんだよね。ドラえもんだと道具を利己的なことに使ってると、それに対するお釣りがすごい来るみたいな展開が多くて、今回のもその展開だなって思いながら見てた。
 
T   僕もそれは思ってて、さっき『天気の子』はストーリーが自然だと言ったのは、良い意味で先が読めるってこともあるんだよね。絶対何かの代償はあると思ったし、「これが最後の仕事にしよう」ってセリフがあったときも何かのフラグだなと思った。とくに3人でホテルに泊まって、カップ焼きそばとかたこ焼きとかを、決して贅沢品ではないんだけど豪華にいこうよってみんなで食べるシーンはいわゆる最後の晩餐で、この後には別れがくるっていうのは目に見えてわかるんだよね。逆にだからその段階で胸にグッとくるものがある。
 
O   あのへんはグッとくるよね。周りの人からもすすり泣きのような音が聞こえてきたよ。僕は人が死ぬ系はけっこう感動しちゃうほうで、これはやばいな、泣いちゃうかなって思ったんだけど、そこから持ち直してなんとか泣かずにすんだ(笑)。
 
T   ホテルのシーンは僕も泣きそうだったな。
 
O   別れっていうのはつらいものがありますからね。あとこれはちょっとした小ネタなんだけど、平泉成が声をやってた刑事の風貌がコロンボみたいで、もしかしたらコロンボを意識してるのかな?と思いながら見てた。
 
T   ああ、平泉成出てたね。すぐわかったよ。
 
O   平泉成が刑事役で出てるってだけでもミステリー好きにはサービスだと思うんだけど、刑事コロンボ好きにはあの刑事がコロンボのように見えて、実際意識したところはあるのか監督に聞いてみたいな。
 
To Be Continued...