O テーマは『踊る大捜査線』。これは過去にも取り上げたことのあるテーマなんだけど、T君もぜひ語りたいとのことなので、再び取り上げてみました。

 

T 前回O君がやったときとは違った切り口で語れたらいいね。

 

O 『踊る大捜査線』はファイナルも公開されて、区切りがついたところではあるけど、僕らが語ると古い話が中心になってきますかね。

 

T まずはファイナルの感想から入っていこうかね。

 

O ファイナルの感想ですか。それはまだ観てない人もいると思うので、ここで言ってしまうのは…

 

T え?今日はネタバレ禁止って設定なの(笑)?そうしたら話題の範囲が狭まっちゃうから、それはやめようよ。

 

O まずファイナルの感想というか、今回の映画にはファイナルというタイトルが付いてるけど、僕の中でのファイナルはMOVIE2で迎えてて、そこでこのシリーズは終わってると思っているから、今回のについては外伝というか、その後のエピソードとして捉えているね。だから取り立てて強い感想というのはないけど、3よりは面白かったかな。

 

T それはわかるな3はちょっと駄作だったからね。

 

O 3は一度観たらお腹いっぱいという感じになっちゃって、何回も観たいとまでは思えないな。湾岸署が要塞と化したり、青島が杭を持ってそれをぶち破ろうとしてたり、ツッコミどころは多かった気がする。

 

T スピンオフあたりからちょっとおかしな方向に行ってしまっている気もするな。

 

O スピンオフと言えば『容疑者 室井慎次』のときもがっかりした経験がある。我らがヒーロー室井さんがフィーチャーされているということですごく期待して観たんだけど、ちょっと話も地味で残念だった。

 

T 容疑者といっても、すぐに釈放されるしね。そして新宿北署にいる哀川翔のような刑事が出てきてしまうのも残念。このシリーズにああいう刑事を出したらだめだと思うんだが。

 

O 『交渉人 真下正義』に出てきた木島さんもそうだったね。「バカヤロー!」って。

 

T 何度も言うが、モノマネしたって文字にしたら伝わらないから(笑)。とにかくこのシリーズは旧来型のいわゆる「デカ」と言われるような刑事が出てこない、組織捜査を前面に出したことが特色だったはずなのに、それが台無しになってしまっている気がする。作中では刑事のことも「デカ」とは呼ばず、「捜査員」などと呼んでいたし。

 

O でもテレビシリーズのタイトルには「デカ」を使っている回もあったね。「少女の涙と刑事(デカ)のプライド」といった具合に。「刑事」のところに「デカ」と振り仮名が振られてた。

 

T そういうのはあるけど、会話の中で使われることはないね。実際の警察も「デカ」とは呼んでないだろうし。

 

O そういった意味では「犯人」も同じだね。昔のドラマでは「ホシ」と呼ばれてたけど、この作中では「被疑者」とか「マルヒ」とか呼ばれたりしている。

 

T リアリティを追求した、警察も会社と同じだよというところに一番最初のこの作品のコンセプトはあるからね。

 

O そうだね。だからこそ、ファイナルもあるけど、やっぱりT君とは初期のテレビシリーズのことを語りたいな。

 

T ではそこに移る前にファイナルや3を僕の中で結論付けさせてもらうと、単発の作品だったとしたら及第点だと思うけど、『踊る大捜査線』シリーズの中の作品と考えるとアウトってところかね。スピンオフもそうだったけど、2が邦画史上最高興業収入を記録するヒットとなったんで、商業主義に走りすぎちゃったかなって感がある。

 

O たしかにヒットすると続編を作る風潮ってあるからね。抱き合わせ販売みたいに(笑)。『踊る大捜査線』もその例外ではなかったってところでしょう。

 

T さて、テレビシリーズの話に入りますか。僕は今でも第1話の「サラリーマン刑事と最初の難事件」が最も名作だと思ってるね。

 

O このシリーズの原点はあの回にあるからね。

 

T まず青島は全く活躍してないからね。運転手やっただけで。だけど和久さんには「お前はこの事件で運転手をやった。これはお前の事件だ」って言われてた。

 

O そもそも青島は運転してるときに室井さんにこれこれこうじゃないですか?と意見を言ったけど、「黙って運転だけしていればいい」と跳ね返されちゃってたね。

 

T でも実際、現実社会で自分一人がヒーローになることなんてそうないからね。ヒロイズムを排除し、所詮は誰しもが組織の一部にすぎないという、サラリーマンがみんな感じているようなことをドラマの中できちっと描いたところに『踊る大捜査線』の素晴らしさがあると思う。

 

O すみれさんのセリフにもあったけど、刑事も公務員だからね。

 

To Be Continued...

O 最初の雫が作ったコンクリートロードの歌詞にケチをつけるあたりも何かの作戦だったのかね?「コンクリートロードはやめたほうがいいぞ」なんて言ったりして。ツンデレを装ったつもりかな。

 

T 後になって「コンクリートロードも好きだけどな」とか180度違うこと言い出したりするんだよね。「この前はやめろって言ったじゃん!」「あれ?俺そんなこと言ったっけ?」って。おいっ(笑)!

 

O 腹黒いな、天沢聖司。でももしかしたらツンデレキャラでいこうとしたのではなく、ただ単純に照れただけか?

 

T 忘れたお父さんの弁当を持ってったときには「お前の弁当でかいんだな」なんて捨てゼリフも吐いてたね。そしてコンクリートロードを口ずさみながら立ち去って行くという、すごく嫌な奴(笑)。案外嫌な奴を装ったほうがモテるのかもね。

 

O そう思うでしょ?でも現実世界でああいう嫌な奴を装ったら、本当に嫌な奴になっちゃうからね(笑)。物語の中だからこそ成り立つんだよ。

 

T まあ、そこはジブリですからね。

 

O だけどそんな天沢聖司も、最後には見せてくれるね。自転車の荷台に雫を乗せて坂道を駆け上がったりして。

 

T 「雫を乗せてこの坂上るって決めたんだ」って。だけど途中で雫も手伝って自転車押すんだよね。

 

O 「お荷物なんて嫌だ」って言って。「そうだよ、お荷物だよ」なんて思ったり(笑)。

 

T あれはもう夫婦の共同作業ですか?っていうぐらい妬けるシーンだね。あのときも天沢聖司がイタリアから戻ってきて、家の前をうろちょろするっていう得意のストーキングをしてたら(笑)、たまたま雫が起きたっていう。

 

O あれも「雫が顔出さないかなと思ったら本当に顔出した。俺たちすごいよ」みたいなこと言ってたけど、実は顔出すまで毎日通ってたかもしれないよね(笑)。

 

T 朝早くからチャイム鳴らすのも迷惑だし、お父さんお母さんに会うのも気まずいし、念を送るしかなかったんだろうね。

 

O 要は聖司くんは変態なんだよね(笑)。

 

T だけど何にしてもタイミングは良すぎるね。中盤にあった「バイオリン弾くからお前歌えよ」ってシーンも、タイミング良くおじいさん達が入ってきて伴奏してくれたりする。ロマンチックすぎるって。

 

O おじいさん達もあんなちょうどよく帰ってくるものかね?

 

T そりゃあ楽しかっただろうにね。で、帰り道に2人で歩いてるところをクラスメイトにフライデーされて、「恋人同士みたいだった」って学校で言われたりする。それを聞いて杉村がピクンってなる。

 

O 杉村かわいそう!僕は杉村派だから杉村に同情するよ。そういえば雫は物語を書くことを目標にしていたけど、結局大学には行くことにするんだっけ?

 

T 高校進学することに決めるんだよ。

 

O そうか、雫は中学生だったね。今まで高校生だと思って話してたわ(笑)。そう考えると聖司くんは相当進んでるね。高校行かないでバイオリン留学しようとしているのか。

 

T たしかに冷静に考えてみるとすごいね。

 

O あの沢木さんですら世界を回ったのは20歳をすぎてからだったのにね。

 

T おじさんが向こうにいて、住み込みで勉強するとかそんな感じじゃなかったかな。

 

O それで自分はその分高校に行ってがんばろうと雫は思うわけか。

 

T 物語は書いてみたものの結局は全然できなくて、それでやっぱり高校に行ってちゃんと勉強しようと思うんだね。

 

O 満足いくものが書けなかったんだっけ?

 

T おじいさんには「率直で荒削りで未完成」と評されていたよ。まだまだこれからなんだろうね。

 

O 高校に行ってもっといろんなことを勉強したら知識の幅も広がって、さらに良いものが書けるようになるだろうね。夢のある話だ。

 

The End.

O そういえばT君は舞台になった街も見てきたそうで。そのへんの話を聞きたいな。

 

T 京王線の「聖蹟桜ヶ丘」って駅の周辺だけど、街並みはけっこう映画そのままだよ。場所によっては実写に近いところもある。地球屋があるロータリーもあったし。

 

O 地球屋自体はないの?

 

T 地球屋はさすがになかったね。

 

O 京王線だと東京競馬場もわりと近くにあるよね。前に東京競馬場に行ったとき、路線図を見ていて聖蹟桜ヶ丘を見つけたんで、寄ってみようかと思ったけど、反対方向になるし、面倒くさくなって結局行かなかったってことがあった。

 

T すごく住みやすそうなところだよ。東京に勤めてたらこんなとこ住みたいなと思えるところ。だからこそジブリも目をつけたのかもしれない。

 

O たしかに、昔その近辺に住んでたって先輩も絶賛してたよ。良い街だって。

 

T 物語に話を戻しましょうかね。

 

O 気になったんだけど、お母さんはなんで大学に通っているんだろうね?

 

T 知らねぇよ(笑)!そういう家風なんじゃないの?お父さんも図書館に勤めてるし。

 

O お父さんは図書館の給料だけで娘2人とお母さんを大学にやれるのかなと心配になるんだけど(笑)。お姉ちゃんも大学生だったよね。その上お母さんも大学に行って、お父さんはきりきり舞いなんじゃないかと。

 

T そういう現実的な世界観を持ち込まないでくれるかな(笑)。これは高台の上に地球屋という店があって、そこにはバイオリン職人を夢見る少年がいるっていうメルヘンチックな話なんだから。

 

O T君がそんなこと言い出すのがどうも信じられないんだけどな。普段何事も穿った見方をしている君が(笑)。

 

T 僕だってたまにはこういうものに魅かれることもあるんだよ。

 

O ではそういう姿勢でいくようにしますか。この話のすごいところは普通の街を舞台にしているところだね。現実世界が舞台になっている作品でも、例えばトトロなんかは舞台そのものがもう幻想的になっているけど、これは普通の現代の街が舞台になっているのにメルヘンチックな雰囲気が出ている。それってすごいことだと思う。

 

T 雫が住んでるところもただの集合住宅だしね。

 

O 部屋も二段ベッドを境に2つに区切ってお姉ちゃんと共同で使うような質素な感じだった。でも聖蹟桜ヶ丘なんだから、良い街には違いないんだよね。

 

T ちなみに走ってる電車は京王線ならぬ「京玉線」(笑)。その京玉線に猫が乗ってる。

 

O あの猫は結局何だったんだろうね?すべてのきっかけがあの猫にあった。あの猫は空気を読んであんな行動をしたのかな。「俺がここで行けば女の子も付いてきて、そしてロマンスが生まれるだろう」とか思って。だとしたら化け猫か何かだ(笑)。

 

T 実際、聖司も「ほとんど化け猫だよ」と言ってたよ。

 

O 魔女の宅急便のジジみたいなものかな。ジジがキキとの間だけ言葉が通じるように、一般の人にはわからないけど聖司とだけは言葉が通じているのかもしれない。聖司が「女の子呼んで来い」とか命令して、「人遣い荒いな」とか思いながらしぶしぶ連れてきてたりして(笑)。

 

T 新たな仮説を立てやがったな。

 

O そういえば猫の名前は「ムーン」だったよね。「月島雫」に「ムーン」に、「月」が続くね。

 

T でも「ムーン」はその名前固定というわけじゃなくて、あちこちでいろんな呼ばれ方をしてるんだよ。

 

O あ、わかった!聖司くんは「月島雫」からとって「ムーン」ってつけたんだよ!うわぁ、チョー気持ち悪い(笑)。

 

T (笑)。

 

O 本当は「しずく」とかつけたかったんだけど、それだと直接的すぎちゃうからひねりを加えて、月島…月…ムーンという具合に考えたんだよ。絶対そうだよ。

 

T なら「もんじゃ」にすればよかったんじゃないのかね?

 

O それも直接的すぎるでしょ。「聖司くん、何でもんじゃって名前なの?もんじゃ…はっ、まさか…」ってなっちゃうじゃん(笑)。

 

T 「俺、もんじゃ焼き好きだからさぁ」とか言えばいいんじゃない?

 

O 「だってもんじゃって月島でしょ?聖司くん、もしかして私のこと…」って。気持ち悪っ(笑)。そもそももんじゃ好きだったとしても猫に「もんじゃ」なんて名前つけないだろ。ハンバーグ好きだったら「ハンバーグ」ってつけるのか(笑)?何か意味があると思われるよ。

 

T そして天沢聖司は「月島雫」の名前をつけた猫を頭なでなでして飼い慣らしてたってわけか。

 

O 天沢聖司のイメージは完全に地に落ちたな(笑)。ロマンチックな人たちが語ればきれいなイメージになっていくはずなのに、どうも僕らのような荒んだ大人が語るとダーティーな方向に向かって行っちゃうな。

 

T 「僕ら」って言わないでくれる?「僕」でしょ(笑)?

 

To Be Continued...