T   ではこの前、テレビ東京の開局55周年記念としてドラマも放送されてた『二つの祖国』について話しましょう。O君は原作の小説も読んだことあるんだよね?

 
O   もう10年ぐらい前になるけどね。読んだことあるよ。
 
T   ではお互いドラマも見たし、小説も読んだということで、ドラマ版、小説版の両方の話をしたいところだけど、まずはドラマの話から入りましょうか。
 
O   ドラマ版の話をするにはまずどこからにするかというのもあるんだけど、僕は何よりも音楽(BGM)が気になりすぎたので、最初に音楽の話をしておきたいな。音楽の方向性がどうも読めなかったんだけど、どう思いました?
 
T   前編はとくに戦争に向かっていく暗いストーリーの中、ポップな洋楽が使われていたのが気になったかな。
 
O   ビートルズの『カム・トゥギャザー』とか使われてたけど、おい、どういう意味だよ?って思ったね(笑)。
 
T   世相と合ってないよね。アメリカの話だから洋楽を使おうということなのかもしれないけど。
 
O   思うに、とりあえず有名曲を並べてみましたって感じになっちゃってるのが残念で、もっと曲を厳選してほしかったな。例えば、『デスペラード』なら『デスペラード』に絞ってテーマ曲を構成するとか。関係者の方には申し訳ないんですけど(笑)、音楽が気になってドラマの内容が若干入ってこないところもあったね。
 
T   唯一グッときたのは『デスペラード』だね。『デスペラード』が持つ物悲しさがドラマの雰囲気に合ってると思ったから、『デスペラード』を中心にして、そのピアノ版とか、そういうのでBGMを構成すればよかったんじゃないかと思ったね。
 
O   そうそう、その通りだね!同じ山崎豊子作品のドラマでも、2年前ぐらいにやった『女の勲章』は、『追憶』っていう昔の映画の音楽をメインのBGMにしてて、それはすごく良いと思った。今回も『デスペラード』をそんな感じに使ってくれたら良かったんだけどな。
 
T   『白い巨塔』の『アメイジング・グレイス』であったり、『不毛地帯』の『トム・トラバーツ・ブルース』であったり、このドラマならこの曲だっていう一曲があるといいよね。
 
O   まあ、不満は音楽についてぐらいなので、先に不満を出し尽くしてから(笑)、本編の話題に入ったほうがいいですね。
 
T   途中でユーミンがかかったりもしてたね。
 
O   ああ、『ベルベット・イースター』がかかってたね。もともと曲自体が好きなので、あれは良かったな。
 
T   たしか日本に来てからの場面だったよね。日本に来たから日本の曲にしたのかなって思ったけど。そのへんは考えてるのかなと。
 
O   でも土地は考えても時代設定はまったく考えてないよね(笑)。たぶん1970年代の曲だから、時代は全然合ってない。
 
T   それを言い出しちゃうと、戦前の曲しか使えなくなっちゃうでしょ(笑)。
 
O   『同期の桜』とか(笑)。だけど土地への配慮があったのはまったく気づかなかったな。
 
T   だからアメリカ編のときは無理やりでもアメリカの曲を使おうとしてたのかと。
 
O   ビートルズはイギリスでしょ(笑)。その頃のアメリカの曲なら、カントリーとかジャズとか流したほうが合ってるんじゃないかな。『スタンド・バイ・ミー』とか。だいぶ音楽の不満が止まりませんね(笑)。
 
T   内容が暗いだけに暗い曲も使ってほしかったよね。
 
O   弟が兵隊に行くシーンでもデヴィッド・ボウイの『スターマン』が流れてたけど、そんな明るい感じの曲がかかるシーンかなって疑問に思った。
 
T   家族が悲しみにくれてるのにね。内容的な話をし始めると、まず冒頭の小栗旬の全裸シーン。テレ東もいきなりサービスショットを持ってきたなと(笑)。
 
O   そしてバックに流れるのはビートルズの『カム・トゥギャザー』で、一体どういうことなんだって感じだよね(笑)。どこに行きたいんだと。
 
T   グラビアアイドルの水着が雑誌の表紙になってたりする、あんな感じなのかもしれない。そこから時代背景が遡るって構成だったから、絶対意識してると思う。
 
O   不満はもうないって言っておきながらまた不満っぽくなっちゃうんだけど、あの作品を4時間ちょっとに収めるのは無理があるね。ハイライトっぽくなっちゃってる。『沈まぬ太陽』の映画を見たときも思ったけど。
 
T   とくに前編は移り変わりが激しすぎて、強制収容所もすぐ出た感じになっちゃってた。
 
O   そうそう、強制収容所の場面なんかは小説だとそこでの過酷な生活とかが描かれてたはずだけど、まったくなかったね。
 
T   とくに最初に収容されたサンタ・アニタ競馬場とか。
 
O   そうか、競馬場だったんだよね。僕たちもこれから競馬場に収容されるけど(笑)。
 
T   収容って、それは当時の日系人に対して失礼でしょ。僕らは遊びに行くんだから。政治家なら失言、辞任レベルだな(笑)。
 
O   もうこういうこと言っちゃってるから今日絶対勝てないよ(笑)。
 
T   あれは広い場所がなかったから、広い場所といえば競馬場ということで、とりあえず競馬場に収容したんだよね。
 
O   小説を読んだのはもう10年前で、記憶も薄れちゃってるけど、それでもその中の生活がいかに過酷であるかが描かれてたのは覚えてて、自分に非がないのに、日系二世というだけでそのような過酷な生活に耐えなければならない不条理がよく表れてたんだけど、ドラマではそのあたりが表現されてなかったね。
 
T   まあ、これに関してはどうしようもなかったというのはあるんだろうけど、もうちょっと丁寧に描いてほしかった思いはあるね。
 
O   今のところ不満しか出てなくて、スタッフの皆さんには本当に申し訳ない(笑)。
 
T   でも全体的には満足してるけどね。見てよかったと思った。ディテールを突き詰めると不満は出てしまうかもしれないけど。
 
To Be Continued...
O   あとは柴又に行ったんで、柴又の話もしておきたいな。まず柴又に行っての率直な感想は、意外に狭いってこと。題経寺への参道も映画で見てると長いように感じるけど、実際はそんなに長くないし、道幅もあまり広くない。
 
T   昔に比べるとある程度きれいになってるとは思うけど、今の日本ではああいう光景は貴重だね。
 
O   そして「とらや」という団子屋があるんだよね。昨日も草団子を一串買って食べてみた。そういえば映画の中の「とらや」は、途中から店名が「くるまや」に変わるよね。
 
T   それは本当に「とらや」という店があるから変えたんじゃなかったかな。
 
O   実際にある「とらや」はもともとその名前だったのか、映画に便乗して店名を「とらや」に変えたのか、どっちなんだろうね。
 
T   さあ、そこまではわからないが。
 
O   名前は「くるまや」のほうがしっくりくるよね。だって車竜造さんがやってる店なんだから。「とらや」って、寅さんは店にはまったく関係ないわけだし(笑)。
 
T   しかも「虎屋」って有名なお菓子屋さんもあるしね。
 
O   それまで「とらや」になってたのが不思議で、むしろ「くるまや」になって一般の感覚に戻ったのかもしれない。あと、題経寺もお参りしてきましたよ。御前様にはお会いできませんでしたが(笑)。
 
T   御前様をやってる笠智衆も良い役者だよね。よく日本のお父さんなんて言われてたりするけど。
 
O   そうなんだ。たしかに寅さんにとっての御前様もお父さんみたいな感じだよね。よく叱ったりしてるし。
 
T   日本の名監督に名俳優ありというか、同じ監督と役者がセットで仕事してるケースも多いよね。笠智衆は小津安二郎作品によく出てたけど、他にも黒澤明と三船敏郎や志村喬だったり、山田洋次監督は倍賞千恵子をよく使ってた。
 
O   志村喬や三船敏郎は『男はつらいよ』にも出てるよね。志村喬さんは博のお父さんの役で、何回か出てくる。
 
T   そういえば出てるね。あまりしゃべらないお父さんね。
 
O   三船敏郎さんは『知床慕情』に出てくる。熟年のカップルを寅さんが後押しして結びつけようという話だったと思うけど、あの話はけっこう印象に残ってるし、たしかネットで見た限りでも比較的人気作だった。
 
T   マドンナで印象に残ってる人はいる?
 
O   すぐには思いつかないな。竹下景子さんが何回も出てるよね。
 
T   しかも違う役で何回も出てるんだよね。浅丘ルリ子はリリーさんとして何回も出てるけど、同じ女優なのに違う役というパターンもある。
 
O   吉永小百合さんも同じ歌子さんの役として何回か出てるよね。
 
T   吉永小百合は本当に美人だと思ったな。
 
O   そうだね。吉永小百合ファンの人が当時たくさんいたって話も聞くけど、その気持ちはよくわかるな。
 
T   透き通るような感じというか、ああいう美人っていないと思った。それを映像で見れるのも『男はつらいよ』の一つの楽しみだよね。
 
O   話はマドンナから逸れちゃうけど、さっきの同じ俳優さんが違う役でというケースだと、2代目おいちゃんの松村達雄さんも違う役で何回も出てくるね。主要キャストを何回もチョイ役で使ってて、すごいなと思った(笑)。
 
T   たしかに一回はおいちゃんとして終わってるのにね。
 
O   同じ松村達雄さんなのに、「俺の知り合いに似てるな」なんてセリフがあるわけでもなく、寅さんも赤の他人として自然に受け入れてるんだよね(笑)。そういうパターンも珍しい。
 
T   あとは役者だと、脇を固める倍賞千恵子、前田吟もいいよね。後に主役級になってくる吉岡秀隆にも触れておきたいな。彼も子役の頃から『北の国から』とか名作に出て活躍してるよね。
 
O   満男は途中から吉岡秀隆になるんだけど、それまでは中村はやと君という子役がやってるんだよね。
 
T   よく知ってるね(笑)。
 
O   成長して役者が変わるってケースはよくあるけど、満男の場合は同じ小学生ぐらいの状態でいきなりスイッチする。で、急に吉岡秀隆になる。
 
T   それは子役あるあるじゃないですか(笑)。
 
O   でもそういった意味では、サザエさんとかとは違うのは、同じ家族を繰り返し描いてるんだけど、満男の成長を通して時間が流れていることが見えるね。
 
T   そうだね、目立って変わっていくのは満男ぐらいか。最初のほうだとさくらの結婚もあったけど。
 
O   あと、寅さんが満男に買ってくるお土産がいつもショボい(笑)。
 
T   それは時代背景とかってことじゃなくて?
 
O   裏の庭に鯉のぼりを上げてたら、寅さんが棒についてるちっちゃい鯉のぼりを満男に買ってきて、やりとりしてる間に博が慌てて下ろすってのもあった(笑)。
 
T   ああ、あったね!立派なやつを隠すんだよね。寅さんにけっこう気を遣うよね(笑)。とくに久しぶりに帰ってきたときは優しく迎えてあげようって雰囲気だから。
 
O   満男へのお土産パターンはあるね。寅さん買ってくるものショボいんだけど、みんなショボいとは言えず、でも満男は正直だからショボいとか言っちゃったりして、それで空気が悪くなる(笑)。
 
T   寅さん帰ってくるシーンは毎回面白いし、目玉でもあるよね。
 
O   なんか、前回よりも進歩したことは言ってないような気がするけど(笑)、とりあえずしゃべりたいことはしゃべったから終わりにしますか。
 
The End.
T   この前イチローの引退にあたってまた国民栄誉賞がクローズアップされてたけど、近年で国民栄誉賞を受賞してる人って、みんなスポーツ選手なんだよね。明確な記録があるスポーツ選手と違って、俳優は基準がないから賞をあげにくいのかと思うけど、その中で渥美清さんは国民栄誉賞をもらっていて、もらっても文句ないと思われるだけのすごい存在なのかなと思ったね。
 
O   文化人の人って、長年やってきたことがあるとき評価されるケースが多いと思うから、渥美さんも長年やってきて、名前のとおり厚みが出てきて(笑)、それで受賞に至ったんじゃないかな。
 
T   だから逆に文化人でもらってる人は、あの人なら相応しいって幅広い世代から支持を得た人たちなんだよね。渥美さんが生きてたときを僕らはあまり知らないけど、改めてすごい人だったんだな。渥美さんは亡くなった後にもらってるんだよね?
 
O   そうだよ。長谷川町子さんとかもそうだけど、文化人の人はわりと亡くなった後にもらうケースが多いんじゃないかな。死んだ後にもらってもどうかとは思うけど。
 
T   盗塁王の福本豊さんが「そんなんもらったら立ちションもできない」と言って辞退したという話もあるから(笑)、亡くなってからのほうがいいこともあるのかもしれないけどね。
 
O   話を『男はつらいよ』に戻すけど、最近改めて気づいたのが、『男はつらいよ』って変わったバリエーションの話も意外とあるってこと。ついこの前見たのだと、とらやに外国人が居候に来るって話があった。
 
T   寅さんがウィーンかどこかの外国に行く話もあったよね。
 
O   あったね。湯布院に行くと思って付いていったら、飛行機乗ってウィーンに行っちゃったやつ(笑)。
 
T   まさに珍道中だね。
 
O   そういうトリッキーな回も時々入ってくるから面白い。そしてネットで調べてみると、人気作と言われる回があることもわかってきた。前にマツコ・有吉の『怒り新党』って番組で取り上げられたときは、第1作とメロン騒動の第15作『相合い傘』が二大人気作になってたんだけど、それらと並ぶ人気作に第17作『夕焼け小焼け』があることがわかった。この三つがどうやら三大人気作らしい。
 
T   僕も全作品を見てみて思ったのが、それぞれ特徴のある回がたくさんある中、第十何作目の作品が『男はつらいよ』の絶頂期なんじゃないかということ。『相合い傘』も『夕焼け小焼け』もその時期の作品だけど、マンネリ化もしてないし、寅さんの恋の駆け引きも面白かったりして、全盛期だと思うな。
 
O   安定してきた時期なのかもしれないね。
 
T   安定かつ充実してきた時期だね。これより後の作品になると、恋愛色がだんだん薄くなっていくんだよね。寅さんがそこまでガチ惚れしなくなったり、作品のテーマが家族や人生の悲哀のほうにウェイトが置かれるようになったりする。
 
O   寅さんが色恋に溺れてるときがやっぱり一番面白いのかな。
 
T   『相合い傘』だと浅丘ルリ子だったりね。まあ、浅丘ルリ子は何回も出てるけど。
 
O   リリーさんね。リリーさんが出てくる作品だと、『ハイビスカスの花』を何回も見てるな。見ようかなと思ってつけると、また『ハイビスカスの花』(笑)。リリーさん三部作だと、前の2作品よりも圧倒的に『ハイビスカスの花』を見てる。あ、最後の『紅の花』もあるからリリーさんは四部作なのか。
 
T   やっぱり浅丘ルリ子との絡みが一番良いんじゃないかな。
 
O   しかもリリーさんに関しては寅さん側から逃げちゃうしね。
 
T   寅さんってけっこう最後は自分から引いちゃうこと多いよね。ここいっとけば結婚できるのにって場面があっても引いちゃう。しかも男は引くものだみたいにカッコつけちゃったりするけど、本当にそうなのか?って思う場面もある。
 
O   自分を美化しすぎなんだよ。本当はマリッジブルー的なやつになってて、このまま結婚していいのかな?結婚したら旅に出れなくなっちゃうとか思ってるんじゃないのかな(笑)。
 
T   それはあると思うね。だから逆にそんなに本気で考えてないんじゃないかと思うときがある。
 
O   本当に結婚するつもりあるのかと聞いてみたいね(笑)。
 
T   結局は恋愛を楽しんでるんじゃないかな。ずっと青春でいたいのかもしれない。というか、寅さん結婚したら映画にならない(笑)。
 
O   シリーズ終わっちゃうね。
 
T   最後には結婚させて終わらせるって噂もあったみたいだけど。
 
O   でも実際には結婚したら旅なんか行ってる場合じゃないよね。それにその程度の稼ぎじゃ食べていけないから転職も考えなきゃならないと思うし。
 
T   えらい現実的な話になってきたな(笑)。
 
To Be Continued...