僕は歯が悪く、52歳から入れ歯をしている。
歯はすっかり弱り果て、かつてのように硬いものを豪快に噛み砕くことはできない。

煎餅を食べていると、上手く噛めずクチャクチャ言ってしまう。
妻の詰子が言ってくる。
「オツトくん、クチャクチャ言ってるよ」

そんなことは言われなくても分かっているが、
「言ってないよ」
と、とりあえず誤魔化してみる。

すると詰子は、堪えきれずに大笑いした。
「ハハハハ」

「詰子ちゃん、そんなに面白い?」
僕は苦笑しながら問いかける。

詰子は少し考えて、笑いながら答えた。
「ん~、面白くない。ハハハハ」
「大笑いだよ」
「ハハハハ」

ツボだったようだ。
 

あとがき

平気な顔して嘘を言う僕に呆れているのか、誤魔化していることがくだらないと思ったのか分かりませんが、ツボにハマったようです。

さて、歯が悪い僕にとって入れ歯は「なんでも噛める魔法のアイテム」だったのですが、最近ぴったり合わなくなってきました。
歯医者に行って調整してもらうのですが、どうもイマイチ。

そのせいか、入れ歯と噛み合う相手の歯もおかしくなってきて水が染みるようになってしまいました。
はぁ~、つらい。

煎餅をボリボリ食べたいな~。
 

 

先日、実家から帰るとき、母からお土産をもらった。
スナック菓子で「お米でつくったふんわりチップスえび味」と書いてある。

家に戻って妻の詰子に見せると、すぐに封を開けて食べはじめた。
食べるとサクサクの食感で、口の中に入れた途端、溶けてなくなる。
とても気に入った様子だ。
詰子が嬉しそうにしていると、自分まで嬉しくなる。

「これ、すごく美味しい」
「ホントだ」
僕もひとつ摘んでみると、確かにその食感は不思議で、軽やかだ。

「はじめて見たね。高いんじゃない?」
「どうだろう?」

調べてみると、6袋で1690円とある。

「これ、どんどん食べちゃって、すぐなくなっちゃう。食感が軽すぎて、食べた気がしないよ」
「気に入っちゃった?」
「うん、気に入った」
「また買っちゃう?」
「買っちゃおうかな。おかわりするわ~」
「ハハハハ。さすが詰子ちゃん」
 

あとがき

母がどこで手に入れたのだろうと考えたところ、販売元が新潟の会社でした。
新潟味のれん本舗が作るお米チップス。
母は新潟出身なので在所から送ってもらったのだと思います。

どういう訳か数量限定の販売で、注文受付が2025年12月23日16時まで。
詳しくはこちらで確認してください。
https://www.ajinoren.co.jp/shop/g/gF531/

ということで、詰子はおかわり発注しました。
数日後、箱で届きました。

 


 

その素早い行動も頷ける美味しさです。
皆さんもぜひ。
 

 

母は昨年末に脳梗塞を患った.
あのときは覚悟を決めたが、今では奇跡的に復活した。
たまにボケたことを言うが、それが病の後遺症なのか、ただの老化なのかは定かでない。

そんな母から電話がかかってきた。
「ドコモからメールが来たんだけど読んでも意味が分からんから一度来てほしいんだわ」
「わかった。たぶん営業メールだからそのままにしておいて」
それだけを伝えて、電話を切った。

3日後に実家に行ってみる。
「ただいま〜」
「あら? 何しに来たの?」
母は首をかしげる。

「メールを見に来たんですけど……」
そう言うと、母は少し斜め上を見つめ、考えるように間を置いた。 
そして、ゆっくりとした調子で言う。。
「何のメール?」
「ーーーー」
 

あとがき

母は、とりあえず元気です。
母は昔からボケたことを言う人、つまり天然なので、今回の出来事も山田家では通常運転です。

脳梗塞になる前にも似たようなことがありました。
妹の誕生日の日、母と妹が電話で話を終えようとしたとき、妹が「今日、誕生日なの」と伝えたところ、母は間髪入れずに「誰の〜?」と答えたのです。

すごいでしょ?
強いでしょ?
僕の母はそういう人です。

そして妻の詰子に言わせると、僕と母はそっくりなんだそうです。
全然、似てないと思うけど……。

脳梗塞を患ったわりに、まだ身体は元気なので、このまま普通に日常生活を送ってほしいです。

 

 

妻の詰子が、背中が痛いと言う。
筋を違えたようだ。
ここ最近、このような不調が続いていて辛そうだ。
きっと運動不足か食事が偏っているか、生活の歪みが積み重なっているように思えた。

そんな詰子は、今日、月に一度の診察日で血液検査を受ける。
病院の駐車場で待っていると、詰子が診察を終えて戻ってきた。

「詰子ちゃん、検査はどうだった?」
「安定してるって。肝臓も中性脂肪も大丈夫」
「良かったじゃん」

車を走らせて家に向かう途中。
赤信号で止まったとき、ふと横を見ると、詰子が眉をひそめていた。

「詰子ちゃん、どうしたの?」
「オツトくんがブレーキを踏むと背中が痛いだわ」
「ハハハハ」
 

あとがき

血液検査の結果は良かったのですが、背中がダメでした。
世の中、難しいですね。
ひとつ良くなると、ひとつ悪くなる。
健康も仕事も人間関係も、どれも全てが思い通りになることはありませんね。
わかっているけど求めてしまう……悲しい性です。

さて、いつも診察後、美味しいランチを食べに行きます。
今回は詰子が背中が痛いと言うので、手っ取り早く食べられるマクドナルドに行きました。
ビッグマックって美味いな。

詰子ちゃん、背中が治ったら別の美味しいランチに行こうね。

 

2泊3日の南紀白浜の旅も、最終日の朝を迎えた。
妻の詰子と朝食会場に足を運ぶと、部屋のカードキーがないことに気づいた。
僕には昔から、手に持ったものをどこかへやってしまう悪癖がある。

「あれっ、カギがない」
慌てる僕に、詰子は落ち着いた声で言う。
「おいオツト、よく探してごらんなさい」
ポケットを探ると、すぐに硬い感触が指先に触れた。
「あったわ」
詰子は呆れ顔で笑う。
「ハハハハ。あのさ〜、オツトくん、毎回言ってるよ」
「あっ、そう?」
「ないんじゃなくて、あるに決まってるの。今までになかったことがないの。いちいち騒ぐのはやめて」

いつものやり取りで朝は始まったが、詰子がいてくれるから僕は安心して慌てられるというものだ。

チェックアウトして帰路につく。
途中、道の駅に立ち寄る。
みかんや柿、産地の野菜などが所狭しと並び、秋の色彩が目に鮮やかだ。
しかし、何かがおかしい。

「あれっ、スマホがない。クルマの中かな?」
「またか」
詰子の声は冷ややかだ。
ポケットを探る。
「あったわ」
「おいオツト、いい加減にしろよ」
 

あとがき

詰子の言うとおり、見つからなかったことはありません。
でも、そのときは本当に無いと思ってプチパニックになっているのです。
出川哲朗のように「ヤバイよヤバイよ」となっているのです。
詰子は絶対にあるから落ち着けと言いたいようですが、反射的にそうなってしまうのです。

さて、おかげさまで、無事に帰ってきました。
帰りは京奈和自動車道を使ったのですが、この道路、橿原高田ー橿原北が繋がってない。
15時頃とあって、渋滞にはまりノロノロ運転。
先に言ってくれよ~、という気分です。

でも、京奈和道で帰ってきたおかげで、途中に寄った道の駅「青洲の里」で直産の果物を買うことができて、詰子は大喜び。
和歌山は柿とみかんですね。

詰子ちゃん、また行こうね。


みかん





ホテルから見える美しい夕日