「詰子ちゃん、やっちゃったよ」
「どうしたの? 何をやっちゃった?」
「歯医者、行くの、忘れてたもん」
「ふっ」

詰子は鼻で笑いながら、冷ややかに返してきた。

僕たちはお互いの予定を共有して、仕事や旅行の段取りを組んでいる。
そんな僕の抜けっぷりを見て、詰子が気を利かせて言ってくれた。

「今度から、私が気づいたら、言ってあげようか?」
「お〜ん、頼むわ〜、もうボケボケだもん」
「ボケボケなのは前から知ってるよ〜」
「ーーーー」
 

あとがき


慌てて歯医者に電話して、「日付を勘違いして行きそびれました」と伝えました。
本当は勘違いじゃなくて、ただ忘れていただけなんだけど……。

若い女性の受付スタッフが対応してくれました。
「次は〇月×日ですから、忘れずに来てくださいね」と言われました。
忘れていたことがバレバレで、全て見透かされています。

たぶん、そう言う老人が多いんだろうな。
はぁ〜、まだ55歳だけど、僕もその老人の仲間入りですわ。
いや、もう55歳か。

 

 

新大阪のコートヤードから梅田に移動した。
今日は大阪ステーションホテルに泊まる。
立体交差が幾重にも重なり、合流と分岐が絶え間なく現れる大阪の道は、まるで巨大な迷路のようで、慣れない運転に神経を使う。
ナビがあるから何とかなっているが、自力ではとてもたどり着けそうにない。

このホテルは妻の詰子が以前から来たがっていたホテルで、朝食が美味しいらしい。
チェックインを済ませ37階の部屋に向かう。
部屋の扉を開けた瞬間、窓いっぱいに広がる眺望が目に飛び込んできた。
高層階ならではの景色に、思わず息をのむ。

少し休んだあと、梅田周辺を散策することにした。
KITTE大阪から地下街を歩く。
阪神百貨店を抜けて阪急百貨店と行き、また戻る。
次は北新地方面に向かい、途中、大阪駅前第2ビルの飲食店街をぐるりと回って、また戻る。

詰子がスマホのアプリを見ながら、ため息まじりに言う。
「あぁ~疲れた。一万歩以上歩いてるよ」
「さすが大阪。デカいな」

名古屋にはない街の雰囲気をたっぷり味わったものの、楽しい散策の反動は思いのほか大きかった。 
暴飲暴食ぎみの生活が続いていたせいか、疲れが一気に押し寄せ、胃腸もどこか重い。

それでもこの日もKITTE大阪にある「すし酒場さしす」で、たらふく飲んで食べた。
しかも、帰り際に「ポーたま」までテイクアウトして夜食で食べた。
そして翌日、いよいよ詰子が楽しみにしていた朝食だ。

ところが、朝起きると腹が痛い。
トイレに行くと下している。
最悪のパターンだ。
面倒なことになったなと、ついため息が出る。

「詰子ちゃん、お腹が痛いよ」
「大丈夫?」
「朝ごはん、あまり食べられないかも」
「う〜ん」

詰子は心配そうにこちらを見つめているが、その一方で、ローストビーフ、寿司、マンゴー、モンブランと、朝からこれでもかというほど食べている。

「詰子ちゃん、どう? 美味い?」
「お〜ん。美味い。けど……メロンがないもん」
「めろん!?」

詰子の事前情報によると、かつてメロンが提供されていたようなのだが、それがないみたいで残念がっている。

それに対して僕はといえば、結局、腹痛で食欲が起きず、納豆ごはんを食べただけで、残念な思いをしている。
 

あとがき


詰子が楽しみにしていた朝食バイキングだったのですが残念な結果になりました。
僕は食べられなかったけど、詰子はご満悦。

さて、さすが大阪梅田ですね。
とても大きい街に感じました。
大きさは名古屋駅と変わらないんだろうけど……。
名古屋の場合、どこに何があるか分かっているし、慣れているので大きいとは感じないのかもしれません。

そして、大阪駅前第2ビルの地下2階をひと回りしたのですが、デカいですね。
店が多すぎてどの店に入っていいか分かりません。

今回も飲んで食べてからの体調不良。
奈良、新大阪、梅田と3回にわたって記事を書いてきたけど、実はそれ以外にも飲み食いしています。
安くて美味しい店が多く、ついつい暴飲暴食になってしまいました。
はぁ~、情けない、歳ですね。
無理が利きません。

このあと、昼すぎにチェックアウトして、名古屋に帰りました。
体調不良はあったけど、総じて今回も良い旅になりました。


部屋はこんな感じ。


1781年創業の老舗「神宗」の飲む出汁。「冷蔵庫の中身含む備え付けのお飲み物は全て無料でご利用いただけます」とのこと。これで出汁を取って焼酎入れて飲んでみたら…美味かった。こんなことやってるから胃腸がやられるんだな。


「すし酒場さしす」でいただきました。


寿司屋のポテサラ


本マグロ三昧とサーモン三昧


うなカツサンド


とろ鉄火巻


エビ7。大量の漬け海老の下に酢飯が隠れています。美味い。


本日のかま焼き。この鯛、美味かったな~。



朝食はこんな感じ。


寿司とローストビーフ


果物いろいろ


モンブラン


オツトの納豆ごはん
 

 

奈良から大阪に移動した。
今日はコートヤード・バイ・マリオット新大阪ステーションに泊まる。

妻の詰子と新大阪駅を探索しようという話になり、駅構内にある新大阪アルデに行ってみることにした。
大阪ならではのお土産屋さんや飲食店が多く並び、名古屋とは違った雰囲気を醸し出している。
ぶらぶらと散策していると明石焼きの店の「たこ昌」を見つけた。

念願の明石焼きだ。
学生のときはじめて食べてとても美味しかった記憶があり、ずっと食べたいと思っていた。
これまでに大阪、神戸と関西方面に来ることがあってもタイミング合わず、食べることができなかった。
約35年ぶりに本格的な明石焼きを食べることにした。

店に入りメニューを見るとたこ焼き860円、明石焼き1100円だ。
もちろん明石焼きを注文する。
ビールセットもある。
本当は明石焼きをつまみにビールを飲みたいところだが、飲みすぎると胃腸を壊してしまうので、ここはぐっと我慢する。

「オツトくん、ビールは飲まないの?」
「うん、やめとくわ~」
「なんで?」
「今日の夜も、明日もあるからね。調整しておかなきゃ」
「ハハハハ、なんの調整? でも念願の明石焼きだね」
「お〜ん」

美味しい食事とともに美味しいビールをいただくための調整に決まっているが、あえて何も言わず、ビールの代わりにキンキンに冷えた氷水をひとくち飲む。

「あぁ~っ。氷水が歯に染みるわ」
「おいオツト、いちいち声がデカいんだて」

大阪に来てもいつものやり取りだ。
詰子は呆れた顔をしている。

しばらくして明石焼きが運ばれる。
箸で持ち上げると、驚くほど軽い。
フワフワな食感と出汁の香りが絶妙だ。
35年ぶりの明石焼きを美味しくいただいた。
おやつ感覚で食べたが、思いのほかお腹が膨れた。

ホテルに戻って風呂に入る。
風呂上がりのビールが待ち遠しい。
しばらくするとカクテルタイムの時間になる。

「オツトくん、カクテルタイムだけど、ビール飲めそう?」
「うん」
「ハハハハ」

飲めるに決まっている。
さきほど我慢した甲斐があるというものだ。
早速ビールをグラスに注ぎグイッと流し込む。

「あぁ、美味いな」
「よかったね」
「詰子ちゃん、さっきの氷水は歯に染みたけど、このビールは全く歯に染みないよ」
「もうさ〜、アホなこと言うのヤメてくれる〜」

またまた、いつものやり取りだ。
 

あとがき


たこ焼きが860円の時代なんですね。
ひと昔前はは400~500円くらいだった記憶だけど。
いいお値段ですね。

明石焼きを少し調べました。
小麦粉の代わりにじん粉を使っているから、あの独特なフワフワ食感になるんだそうです。
浮き粉とも言うらしい。

明石焼きにはタコが入っているので、フワフワなたこ焼きと思っていましたが違うようです。
明石焼きはたこ焼きでなく卵焼き。
それで納得。
確かにフワフワなオムレツと似た食感ですね。

今度作ってみようと思います。

コートヤード新大阪にはじめて宿泊しました。
車で向かったのですが、ホテルの駐車場は事前予約が必要でした。
予約していなかったものの、ちょうど空きがあったため運よく停めることができました。
もし満車だった場合は利用できず、離れた場所にある駐車場を探さなければならないところでした。
車で行かれる方は要注意です。

あと、面白いのはラウンジにナイトスナックという時間帯があること。
22:00~23:00に、カップ麺が提供されます。
普段からイヤと言うほど食べているのに、嬉しい気持ちになるのは不思議です。

 


たこ昌メニュー


明石焼き


部屋はこんな感じ


ラウンジのおつまみ


カップ麺


朝ごはん

 

 

妻の詰子と奈良にやってきた。
紫翠ラグジュアリーコレクションホテル奈良で一泊する。
奈良公園の西端にあり旧奈良県知事公舎を利用したホテルだ。
すぐ隣には東大寺がある。

建物の中に入ると厳かな雰囲気だ。
チェックインをするための部屋に案内され、ホテルスタッフがお茶とおしぼりを用意してくれた。

「山田様、ようこそいらっしゃいました。〇〇茶でございます」

よく聞き取れなかったが、産地のお茶だということは容易に理解できた。

「ありがとうございます」

礼を言ってから、ゆっくり口に運ぶ。
上品な香りが鼻を抜け、程よい苦味が旅の疲れを癒してくれる。

「詰子ちゃん、このお茶、何茶って言ってた?」
「ハハハハ。うんうんって説明を聞いてたじゃん。本当に適当だな〜。全然、人の話、聞いてないもん」
「ーーーー」

そう言う詰子も聞いておらず、結局、何茶を飲んでいるのか分からずじまいであった。
 

あとがき

はぁ〜、僕たちダメ人間ですね。

説明する側も、同じ説明を何回もしていると言葉が滑るように出でくるので無意識に速くなり、はじめて聞く側は聞き取れないんだなと思います。

まあ、老化で単に言語処理能力が追いついていないだけの可能性もありますが……。

さて、このホテルは旧奈良県知事公舎とあって、なかなか趣が深いです。
多くの世界遺産に囲まれた立地ですし、昭和天皇がサンフランシスコ講和条約で署名した部屋「御認証の間」があって、歴史の重みを感じます。

今回の部屋は温泉付きの部屋でした。
部屋に入って、まずは温泉を楽しみます。
案内してくれたスタッフが温泉をどこからか運んでいると説明してくれたけど、こちらも聞き逃してしまいました。

シャンパンをフリーフローで楽しめる「ガーデンディライト」があるということなので、詰子と出かけます。
普段、シャンパンを飲むことはないので詳しくないですが、贅沢な時間が過ぎました。
ほろ酔いになったところで、近鉄奈良駅まで繰り出して、居酒屋で晩ごはん。

明日は大阪に移動します。


この部屋でチェックイン。


聞き取れなかった問題のお茶。


部屋は道路を挟んで東側の敷地にある。


部屋はこんな感じ。


お風呂はこんな感じ。


ホテル内に入ってくる鹿さん。


御認証の間。


ガーデンディライトでシャンパンをいただきました。


歴史ある雰囲気。


朝食のおしながき。


朝食の一の膳。
 

 

妻の詰子には持病があり、月に1回のペースで医者に通っている。
血液検査をして医師の指導を受けるためだ。
診察を終えて、詰子が車に戻ってきた。

「詰子ちゃん、今日はどうだった?」
「カリウムが少ないんだって。ヤバいレベルなんだって」
「やばい!?」
「だから野菜と果物、例えばトマトやバナナを食べるといいんだって。でも私の場合、果物を食べ過ぎると血糖値が上がっちゃうから、それは良くないというという話になって……」
「それで?」
「『じゃ~トマトのするわ』って言ったら、『やってみて改善がなかったらカリウムの錠剤を処方します。それを飲まないと不整脈が起こるから』だって」
「ふせいみゃく!?」

なかなかヘビーな話になってきた。
続けて詰子が言う。

「じゃ~、今からハンバーグを食べに行きます」
「はんばぁーぐ!?」
 

あとがき


カリウムについて、少し調べました。

カリウムは余分な塩分(ナトリウム)と水分を体外へ排出しやすくし、血圧の正常化やむくみを解消する効果があるようです。
野菜、果物、海藻、いも、豆類、肉類、魚介類などに幅広く含まれるミネラルで、特にバナナやアボカドなどの果物、ほうれん草やサツマイモなどの野菜類、納豆や大豆製品に豊富に含まれています。

医者が勧めてくれたトマトにカリウムが豊富に含まれているという情報は見つかりませんでした。

しかし、カリウムを適度に含み、日常的に手軽に食べられる代表的な食材であることは間違いないようです。

ちなみに、僕がざっと調べたところ、カリウムの含有量は以下のようでした。

ほうれん草(生100g):約690mg
ほうれん草(ゆで100g):490mg
トマト(生100g):約210mg
アボカド(生100g):590mg
バナナ(生100g):360mg

まぁ、トマトに限らず、野菜と果物を意識して取るようにするしかなさそうです。