僕は寝酒に焼酎を飲む。
飲むときは決まってお湯割りだ。
夏だろうが冬だろうが関係ない。

お湯を沸かすときは電子レンジを使う。
沸いたのでカップを取り出したら、アツアツのお湯が手にかかってしまった。


「あっつ〜」

妻の詰子を見ると、呆れた顔をして言ってくる。

「はぁ〜、またひとりでやらかしとるな〜」
「めちゃくちゃ熱いよ」
「もっと、かんこうしてやりゃ~」(名古屋弁:よく考え、工夫してやりなさい)
「ーーーー」
 

あとがき

久しぶりに聞いたな、「かんこうする」という単語。
漢字で書くと、たぶん「勘考する」。
「観光」ではないよ。

子どものころはよく聞いた言葉だけど、最近はほとんど耳にしません。
失敗や間違いをしたときに、親や学校の先生に「勘考してやりゃ~」「勘考しなかんわ~」と言われることがほとんどです
この歳になって詰子に言われるとは変な気分です。

幸い、手にかかったお湯の量が少なかったこともあって、火傷することもなく大事にはなりませんでした。
詰子の言うとおり、次からはもっと勘考してやらないといけないな。

ちなみに「アツアツ」を名古屋弁で言うと「ちんちん」。
そして「ちんちん」の最上級、つまり「めちゃくちゃ、超アツアツ」を名古屋弁で言うと「ちんちこちん」。
 

 

風呂から上がって体を拭く。
バスタオルを見ると僅かだが血が付いている。
どこかから出血しているようだ。
ヒゲを剃るときにカミソリで斬ったかと思い、鏡を見るがどこも傷になっていない。
痛いところもない。

綿棒で耳掃除をしながら考える。
そういえば、顔を洗ってたら、左手の小指が鼻の穴に入ったことを思い出した。
たぶん、原因はそれだ。
妻の詰子に報告する。

「詰子ちゃん、風呂で顔を洗ってたら、左手の小指が鼻の穴に入って血が出たよ」
「はぁ〜」
「歳だな〜と思いながら綿棒で耳掃除をしてたら、今度は綿棒に血がついてるもん」
「ハハハハ」
「ビビったわ」
 

あとがき

「そんなことってある?」ということが、稀に起きます。
本当に驚きます。
そんな僕を見て、詰子は呆れてるようです。

さて、近ごろ、血管が弱くなっているせいか直ぐに傷になってしまいます。
例えば、段ボールを片付けるといつの間にか切れて出血しますし、少しぶつけただけで内出血して青あざになってしまいます。

歳だから仕方ないのかもしれませんが、だからといって人生を諦めたくない。
でも、目の前の事実は受け入れるしかない。

ん~、悩ましいですね。


 

 

妻の詰子は医者の勧めでリベルサス(血糖を下げる薬)を服用している。
巷で痩せる薬と言われているものだが、吐き気、食欲減退などの副作用があり、詰子は昨日から全く食事が喉を通らない。
かなりツライようだ。

「詰子ちゃん、大丈夫?」
「はぁ〜、1日食べなかったら体重が2kg減ったもん」
「あっそう、それはそれで良かったじゃん」

翌日、詰子はまだ体調が悪く、食べられない。
丸二日、食べてないことになる。

「詰子ちゃん、体重、またまた減ったんじゃない?」
「ん〜、さっき測ったら、全然減ってないもん」
「ハハハハ」
 

あとがき

不思議ですね。
世の中、そんなに甘くないようです。

それにしても、かなりツラそう。
今までも副作用でツラそうなことはあったけど、ここまでではなかったな。
今回は最上級。
あの詰子ちゃんが予定していた旅行もキャンセルするくらいだから。

人生100年時代、まだ先は長いので、一時的にツラいかもしれないけれど、これを乗り切ればあと40年楽しいことがあると思ってがんばってほしいな。

朝起きると、どうも体が重い。
リビングに行くと妻の詰子が朝食を取っている。

「詰子ちゃん、おはよう」
「おはよう」
「なんか、体がすごい疲れてるよ」
「どうしたの?」

詰子が心配そうに聞いてくる。

「なんか、最近、俺、自分のいびきが聞こえてるような気がするんだよね」
「ホントに聞こえてる?」
「うん」
「うるさいでしょ?」

どう答えようか悩んだが、正直に言った。

「ん~、うるさい」
「ハハハハ。オツトくんのいびきはホントにうるさいんだって~」
 

あとがき

僕はいびきがうるさいらしいのです。
酔っぱらって寝るとき、それが顕著のようです。

旅先では、僕と詰子はいつもツインの部屋に泊まります。
夜、詰子はスマホで動画を見るのが習慣なのですが、その再生音がうるさくて眠れないので音量を下げるようにお願いします。
詰子は音を絞ってくれるけれど、僕が寝入った途端、今度は僕のいびきが始まる。
しかもその音が、詰子のスマホの再生音をかき消すほどらしいのです。
そのくらい僕のいびきがうるさいのに、僕が寝るときだけスマホの音量を小さくしろと言うのが気に入らないようなのです。

申し訳ない気持ちでいっぱいなんだけど、いびきはコントロールしたくてもできないんだよね。

でも今回は自分のいびきがうるさいなと実感しました。
というか、そのとき、息してないかも。
苦しいから起きる、自分のいびきが聞こえる、睡眠の質が悪く体が重い……そんな感じでしょうか。
 

 

お腹が空いたので何か食べようと冷蔵庫を開けた。
奥に冷凍餃子を見つけたが、賞味期限を確認するととうの昔に切れている。
妻の詰子に相談する。

「詰子ちゃん、この餃子、賞味期限切れてるんだわ」
「いつまで?」
「去年の9月24日。ちょうど1年前だな」
「ハハハハ」
「どうしょうかな?」
「食べれる、食べれる」
「ぴょ〜」
 

あとがき

食べましたよ。
多少、冷凍焼けして皮がパサついて硬かったですが、味に問題はありませんでした。

それにしても、冷凍庫の奥って結構恐い世界がありますよね。
ぐるぐるとラップに包まれた得体のしれない肉塊とか出てきたりします。
もったいない精神で保存したんだろうけど、何なのか、いつなのか、全く覚えてません。

まぁ、細かいことは気にしない性格なので問題ありません。
というか、細かいことは気にしない性格だから、こんな風になってしまうのか。