事例⑨8歳(小学2年生)で発語したKくんのセラピー過程 | 国分寺発達障害児学習指導教室smileのブログ

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今回は、小学2年生の終わり頃から言葉が出てきたKくんのケースについて書きたいと思います。


Kくんは、3歳から小学2年生の夏まで当教室に通ってくれました。

小2の夏(8歳)の時点で、セラピーは終了となりましたが、その後、半年に一度くらいの間隔で、親御さんからご連絡をいただき、単発のセラピーを受けに来てくれました。


小さかったKくんは、今、小学3年生です。

先月会いに来てくれたKくんは、思ったことを伝えられる男の子になっていました。

そんなKくんとの長いセラピーの記録を見直してみたので、まとめて考察したいと思います。



〈初回セラピー時〉

初回の体験セラピー時、3歳5ヶ月。

動作模倣、指差しができず。

音声指示の理解も難しい。

手先課題は好き。目をよく使っていて視覚優位。


この時点で、Kくんの『発語を妨げている原因』は、

①ボディイメージのつきにくさ(自分の身体の固有感覚が不十分)

②あらゆるものを弁別できていない状態であること(指示理解ができていない&内言語を確立できていない)

③社会性の欠如(他者への興味関心が薄い)

だと思いました。


また、Kくんの武器となりうるのは『視覚優位』であるとも思いました。


〈3歳代〉

主に取り組んだ課題→

マッチング、名詞&動詞絵カード(語彙、指差し)、動作模倣、音声指示、色、大小、上下、積木(構成)。


PECSの使い方の理解が早く、セラピーでも自宅でもPECSで要求することができ、使いこなす。

耳から入る音声言語を弁別しにくく、口頭のみの指示理解が難しい。

物の命名は出来ているが、確実に指差すのが難しい。

動作模倣は4パターンできるようになるが、できる時とできない時がある。

大小、色の命名、上下は理解している。


〈4歳代〉

主に取り組んだ課題→

絵カード、動作模倣、音声模倣、音声指示、物の用途、色&形、構成課題(積木、パズル)、手先課題(ハサミ、スプーン、箸、運筆等)


動作模倣を上手にできるようになる。

音声模倣ができるようになり、「あ」「い」「う」「え」の4音を言えるようになった。

舌を動かすのは難しい。

笛はしっかり吹け、ロウソクの火も吹き消せる。

絵カードを指さしで選ぶのが上手になってくる。(意識の向き具合により、波がある。)

手先課題は、よく出来ている。


〈5歳代〉

主に取り組んだ課題→

絵カード(受容的命名、表出的命名)、動作模倣、音声模倣、物の用途、意志のyes・no、手先課題(箸、はさみ、運筆)、ひらがな


舌を上下左右に動かせるようになり、音声模倣で20音程度言えるようになる。ただ、言えた音を言えなくなることが多く、安定しにくい。言えるようになった音を獲得しにくく、言えたり言えなかったりする。

絵カードの指差しができるが、できなくなる時もあり、波がある。

セラピストの後に続いて、絵カードの名称を1音ずつ言えるようになる(半音声模倣として)。


〈6歳代〉

主に取り組んだ課題→

ひらがな、音声模倣、絵カード、なかま(上位概念)、数、構成課題、手先課題(箸、運筆、ひもむすび)


5歳代に音声模倣で言えるようになった音を言えなくなる。母音も消失することがあり、感覚の混乱に苦しむ時期がある。

ひらがなの識別ができ、単語文字を覚えてくる。(1文字ずつの読みも覚えてきている。)

数の概念を理解できるようになり、指示した数を5個まで取り出せるようになる。


〈7歳代〉

主に取り組んだ課題→

音声模倣、ひらがな、数、絵カード、手先課題(箸、運筆、ひもむすび)


音声模倣では、母音は確実に獲得。他、子音も20〜30音程度、明瞭に発声できるようになる。

絵カードを見て、6単語、自分で名称を言えるようになる(コップ、いぬ、うま、りんご、ねこ、ボール)が、言えなくなる時もある。

ひらがなをよく読めるようになる。1文字ずつはまだ確実ではないが、覚えた単語文字が増える。


〈8歳代〉

主に取り組んだ課題→

音声模倣、ひらがな、数、手先課題(箸、運筆、ひもむすび)


音声模倣で35〜40音程度言えるようになるが、日によって波があり、言えたり言えなかったりはする。

言えるようになった単語も、言えなくなる時もある。

ひらがなの文字があると発声しやすく、文字が発声時のシンボルとして機能しつつある。読める文字が増えているが、1文字ずつの読みをまだ全て覚えてはいない。

数の理解がすすみ、安定して指示した数を取り出すことが出来る。



8歳3ヶ月の時点で、Kくんのセラピーはいったん終了となりました。

遠方から通ってくださっていたので、小学校に上がってからは、いらっしゃるのは特に大変だったことと思います。


セラピー終了時、Kくんは、まだ自由自在におしゃべりをしている状況ではありませんでした。

私は、Kくんは言葉は出ると思っていました。

なので、ご両親にはずっと、「喋れるようになると思う」と伝えてきました。

ですが、セラピー最終日にはそのような状態に完全に導くことができておらず、申し訳ない気持ちでいました…。


私は、Kくんの発語をただ闇雲に信じていたわけではなく、発語の全ての条件を満たしてきていることから、喋れるはずだと判断していました。

逆に、なぜ自発語が出ないのか、不思議で、ずっと考えていました。


セラピー終了時から半年後、お父様からご連絡をいただき、Kくんのおしゃべりが増えたと聞いた時は、嬉し過ぎて涙が出ました。

半年ぶりに来たKくんは、ひらがなを完全に覚え、全ての絵カードの名称を自分で言うことができました。

「おせんべい、ちょうだい」と自分から言うこともできました。

さらに半年後である先月来てくれた時は、もっと発声が上手になっていて、自信を持っていろいろなことを言っていました。

 

Kくんの様子を見ていて、何がKくんの発語を最後まで妨げていたのか、また、何が必要だったのか、を私なりに考えました。

似たようなお子さんの参考になるといいなと思います。 




まず、

Kくんの発語の決定的な後押しとなったのは、

文字の習得

だと思いました。 

文字が、かなりシンボルとして発声時に機能している様子でした。

確実に1文字ずつの文字の読みを覚えたことで、言えるようになった音の口腔イメージを留めておけるようになっていました。

文字さえあれば言える!といった様子で、どんな単語も文章も自信満々に読めて(言えて)いたのが印象的です。

コツコツと続けてきた構成課題とひらがなの課題が、実を結んだのだと思います。

(3、4歳代で、積木やパズル、輪ゴムパターンボードを使った構成課題に取り組んだのは、ひらがなを識別するためのスキルを高めるためです。

よく出来るようになるにつれ、文字もしっかり識別出来るようになりました。)

また、視覚優位であるKくんの強みが生かされたということもあります。


そして、

Kくんを最後まで苦しめていたのは、

感覚の混乱のようなものではなかったか、と思います。

一言でいうと、「感覚統合障害」です。

Kくんは、小さい頃は、教室内を壁にぶち当たる直前までダッシュで走ることがありました。

感覚統合がうまくいかない子によく見られる行動です。

聴覚過敏もあり、日によって耳をふさぐことがありました。日によって触覚過敏も見られる時がありました。

言えた音を消失してしまうこともよくあり、感覚に波があるようでした。

絵カードを見ていくつかの単語を言えるようになったと思いきや、1か月後にはまた言えなくなる…ということもありました。

『感覚の困り事に支配されている』

という状態に見えました。

行きつ戻りつ、を繰り返したのは、感覚統合の不十分さによるところが大きかったのだろうと思います。

小学3年生になって、Kくんは身体も大きくなり、体幹もしっかりしてきました。

感覚の面で、質的な変化があったのではないか、と想像します。


Kくんの発語は「感覚待ち」だったように見えます。

感覚が統合されてきて安定してきた時に、

音の口腔イメージをつなぎとめる『文字』を習得できていたことで、

音と口腔イメージをしっかりと合致させられた

のだと思います。

それで「言いたい言葉」を一気に言えるようになりました。

文字を覚えていなかったら、もっと時間がかかってしまったか、獲得しきれなかったのでは…という気がしています。


また、音を出すスキルを音声模倣によって得ておいたことも、やはり必要だったと思います。

発語には臨界期がある、とよく言われますが、やはり6歳頃までには1音でも「意識的な音の出し方」を習得しておかないと、6歳以降に発語を出すのは難しいのではないかな、と思うのです。

Kくんは、行きつ戻りつを繰り返しながらも、音声模倣によって、意識して発声をするスキルを得ていました。

絵カードと文字と音声模倣を合わせて、名称を『言う』練習を続けていました。

内言語に音をのせ、発声するやり方をしっていれば、

感覚さえ追いついて音を作れれば、

どんどん言えるようになります。


今現在、まだ発音が難しい音があり、もどかしさを感じることもあるようですが、

一度、言語を機能的に使うようになると、生活は言語中心のものに変化していくと思うので、そのうちに発音しにくい音も自分でみつけて言えるようになるだろうと思います。 



余談ですが、

先月Kくんとのセラピー中に、私は2度、Kくんに間違いを指摘されました笑

私がトークンの「4個目」を「3個目」と間違えた時、「4(よん)」だと、目を見て言ってくれました。

絵カードに書かれていた絵を「鶴」だと言うと「フラミンゴ」だと訂正してくれました笑

今までも、私の間違いはたくさんあって、そのたびにKくんはモヤッとしていたんだろうなあ、と思いました😅

その後、足に何かを落としてしまった時、とっさに「いたい」と言っていました。

気持ちを言葉で伝えられるようになった瞬間を見て、Kくんはこれからもっと言葉が増えていくだろうと確信しました。


Kくんは、もともとお話しをする力を持っていたとは思いますが、療育やご家庭の支援で引っ張ってきた、という感じがしています。

「何もしなくてもお話ができるようになる」というタイプではなかったと思います。

音声模倣をやっていなかったら、発語は難しかったのではないか、と思っています。


音声模倣は、誤解をおそれずに言い換えるとすると、「無理やり音を出させる」行為です。

無理やり、というと語弊がありますが、お菓子等のご褒美を設定し、本来なかったはずの動機をつくり、音の出し方を積極的に教えることです。

音声模倣を何年も繰り返し取り組み、何音か言えるようになっても、なかなか自発語につながらないでいると、不安になってきます。

本当に必要なことなのだろうか?

と。 


しかし、PECSを使うことができ、絵カードを選べて、口腔機能的に発声のスキルを得ていれば、必ず、言葉をのせることはできると私は考えています。


今、音声模倣を頑張ってやっていらっしゃる親御さん達にも知っていただきたいなと思います。


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