ごほうびって必要? | 国分寺発達障害児学習指導教室smileのブログ

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国分寺市にて、発達に不安のあるお子さまを対象に、個別指導を行っております。
ABA(応用行動分析)を基盤に、一対一体制・60分のセラピーをやります。
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「お菓子のごほうびは必要でしょうか?」

と、お問い合わせの時などに、親御さんから聞かれることがあります。

その場合、心配されているのは、「お菓子のごほうびがないとできない子」になるのではないか、ということのようです。


私は、小さいうちの「チャレンジ」には、ごほうびはあったほうがいいと考えています。

そして、「お菓子がないとできない」にはならないと、断言できます。


お菓子のごほうびで獲得して「できるようになったこと」は、できるようになった時点で、もはやそれ自体が「楽しいこと」に変わりますので、ごほうびなどなくてもどんどん自分からやるようになります。


逆に、ごほうびを設定せず、「やりなさい」という単なる命令でやらせたとしたら、たとえその時はやったとしても、「命令」がないとできなくなります。


同じ「やる」という行動でも、行動連鎖が異なるのです。

ごほうびが欲しいから頑張ってやってみた、という行動は、自分の意思で動いています。

それでやってみて、練習して、出来るようになり、達成感や充実感を知ります。その後は、達成感や充実感を得るために自主的に行動するようになります。


「やりなさい!」と命令されて、あるいは怒られて、その嫌悪から逃れるために起こした行動は、端からみたら同じようにやってはいても、自分の意思ではないので達成感や充実感を得にくいです。そして、「命令」や「叱責」という先行刺激がないと行動しなくなるので、自主的にやるようにはなりにくいです。


「できそうなこと」

「できること」

には、ごほうびは必要ありません。

そういうことは「やりたい」ことのはずなのです。

しかし、「できないこと」「わからないこと」を、やりたいと思う子どもはあまりいません。

特に発達障害のある子どもは、できなくて傷ついた経験をもっており、「できなそうなこと」を自分で回避しがちです。

そういう場合に、ごほうびが必要なのです。


では、ごほうびは、お菓子でなくてもいいのでは?と思われる方もいらっしゃると思います。


当教室でのセラピーでは、親御さんのご了承を得てから、お菓子のごほうびを使っております。ごくたまに、お菓子を使いたくない、と希望される方もいるので、その場合はごほうびを他のもので設定しますが、正直言って、オモチャのごほうびより、お菓子のごほうびのほうが、セラピー自体はスムーズに進みやすいです。

なぜなら、オモチャのごほうびだと、いったん意識がオモチャに向くので、概念理解を進める時、集中がその都度途切れます。そして、オモチャを回収する度に、どうしても嫌悪刺激も伴います。

オモチャのごほうびで、うまくセラピーを進められる場合ももちろんありますが、お菓子のごほうびに比べるとやはりロスタイムが多くなります。


ごほうびシステムになじみのないまま大きくなった発達障害のあるお子さんでよく見かける状態があります。

それは、「自分がやりたいことしかやらない」というものです。

やってみたら色々なことができる力を持っているのに「やらない」のです。

おそらく、「やってみてできなかった」あるいは「やらされてできなかった」経験で、傷ついたことがあるのでしょう。

「できなかった」という経験は、実は子どもにとってとても辛いものです。

定型発達のお子さんだと「何度かやればできるだろう」ということが本能的に分かっているのか、できなくてもチャレンジし続けたりします。チャレンジすることが喜びだったりもします。

しかし発達障害のある場合は、ここが大きく違います。「できなかった経験」は、しぶといトラウマになります。

それから、できなそうなことは「やらない」に発展していってしまいます。

これは、とてももったいないなあと思います。

せっかく力を持っていても、できないままになり、自信も持てず、悪循環です。


ごほうびは、「できた」ことに対してあげるのではありません。
「チャレンジした」「やってみた」ことに対してあげるのです。
チャレンジして、良いことがあった。
ということを体感することが大切です。
小さいうちは、お菓子のごほうびがわかりやすいです。もちろん褒め言葉やくすぐりなど、社会的強化子も有効です。必ず言葉でも褒めたほうがいいですが、発達障害児は、褒め言葉が、そんなにはごほうびになっていないことが多いです。特に小さいうちは、大人が思っているよりずっと。

やりたくないことに取り組めないとか、すぐに離席してしまうとか、自分の状態をコントロールしにくいお子さんは特に、ごほうびシステムを早く取り入れたほうがいいと思います。
「我慢」が難しいのですから、「我慢」をするお手伝いをしてあげる必要があります。

「お菓子で釣る」ような場面は、まるで動物の調教のようで抵抗がある、という気持ちは、私も分からなくはありません。
しかし、それは大人目線であり、子どもにとっては「頑張ってやってみたら得をした!」という経験であるだけです。
「やりたくないなあ」という気持ちを否定するものでもありません。

「やってみるか」 
「がまんしてみるか」
という気持ちを起こさせるお手伝いをしてあげるということが、ごほうびを設定するということです。