AI時代の本当の壁──セキュリティとバックオフィスの現実
世の中は「人工知能の戦国時代」と言われています。確かに技術の進化は目覚ましく、個人レベルではもう手放せないほど便利に使っています。しかし、企業で本格的に導入しようとすると、途端に話が難しくなる。最大の障壁はやはり「セキュリティ」です。
「この情報をAIに入れても、本当に守秘義務は守られるのか?」
この一言に尽きます。
機密性の高いデータを生成AIに投げ込むことに、誰もが躊躇する。結果、「大丈夫そうな部分だけAI」「それ以外は今まで通り手作業」という中途半端な使い方になってしまうのが、多くの会社の現実ではないでしょうか。
私は経理の現場にいますが、正直な話、AIをガンガン使い倒せば圧倒的に楽になります。請求書読み取り、仕訳の提案、異常値検知……夢のような機能がもう目の前にある。でも、会社として「どこまで使っていいのか」の線引きを教えてくれる人がいない。これが最大の問題です。
ネットには「チェック一つで学習させません!」みたいな簡単なレクチャーは山ほどありますが、それで本当に十分なのか?
結局のところ、
企業として安心して使える基準はどこか
自前で専用AIを作るしかないのか
作るならどれだけのコストとセキュリティは本当に担保できるのか
という本質的な問いに対する答えを持っている専門家が、圧倒的に足りていません。
知り合いの会社で「うちはAIバンバン使ってるよ」というところは、ほぼ例外なく「自社専用に開発したAI」を使っています。当然、資金力のある会社限定の話です。普通の企業が同じことをやろうと思ったら、相当な覚悟と予算が必要です。
だからこそ「AIを使わない」という選択にも、それなりの理由がある。
その理由をちゃんと理解して、対応できる人材を育てていくか、外部の専門家をきちんと巻き込んでいくか。そこにちゃんと責任を持てる体制が整わない限り、本当の意味でAI時代に乗ることはできないと思います。
さて、少し話は変わりますが、経理・バックオフィスの現場を覗いてみると、もう一つの深刻な問題が見えてきます。
人が病気になるほど忙しいのです。
なぜここまでバックオフィスが軽視されるのか、本当に不思議でなりません。
企業が成長していく上で必要なのは、
① 売上を上げるチーム
② 戦略を考えるチーム
③ バックオフィスチーム
この3つの車輪が同時に回ってこそ、会社は健全に大きくなります。
売上が5,000万円〜1億円くらいまでの規模なら、多少バックオフィスが薄くてもなんとかなるかもしれません。でも、それ以上を目指すなら絶対に同時並行で強化しないと、数年後に必ず後悔します。
実際、私は何度もその現場を見てきました。
営業は増員、エンジニアは増員、広告費もガンガン使う。
でも、なぜか経理・総務・人事などのバックオフィスだけは「今の人でなんとか……」となりがちです。
結果、1人または2人で、会社の命綱とも言える仕事を抱え込む。量が増えれば増えるほど手作業では限界が来るのは当たり前です。
そしてここでぜひ知っておいていただきたいのが、
経理担当者に本当に必要な知識は、簿記だけじゃないということです。
それと同じくらい、いや場合によってはそれ以上に重要なのがデータベースの知識です。
請求書と契約書と入金データを正しく紐づける
顧客マスタと売上データを一貫性持って管理する
将来AIに気持ちよくデータを食わせられる形にしておく
これができないと、データはどんどん「ただのゴミの山」になっていきます。
そして担当者が病気や退職でいなくなったとき、後任者はゼロから推論しながらデータを紐解くという、途方もない労力を強いられることになります。「この会社名はおそらくシステム会社だろう」「支払いサイクルはこのくらいかな」……そんな推理ゲームをしながら契約書を探す日々です。
一度ぐちゃぐちゃになったデータを整理するには、膨大な時間とコストがかかります。
だったら最初から、データベースの考え方を学びながらバックオフィスを設計しておく方が、圧倒的に合理的です。
そしてこれからのAI時代においては、この「きちんと整理されたデータ」が最強の武器になります。
データがきれいに整っていれば、AIは驚くほど正確に情報をまとめてくれ、提案してくれます。
逆にデータがぐちゃぐちゃだと、いくら高性能なAIを入れても宝の持ち腐れです。
いくら「AI時代だ!」と叫ばれても、
現場を見れば結局のところ、情報を整理・管理するための設計図は自分で作るしかないのです。
もし自社でできないなら、専門家を呼んで一緒に作る。
それが嫌なら、バックオフィスのメンバーにデータベースの知識をしっかり持たせる。
どちらにしても、避けては通れません。
バックオフィスが強くなれば、
営業チームに正確な売上・入金データがリアルタイムで渡せる
経営陣に信頼できる数字がすぐに出せる
AIが本領を発揮できる土壌ができる
良い循環が確実に回り始めます。
AIをただの「便利ツール」で終わらせたくないなら、
まずやるべきことは目の前の地味だけど一番大事な仕事が、ここにあると私は思います。
今日は、華やかなAIの話の裏側にある、現場の本音を少しだけ書いてみました。
少しでもどなたかの参考になれば幸いです。