【14時05分】
河野京子を助手席に乗せた白い小型車は、暫くその場から動かなかった。私もひーも同様に動く事が出来ず、車内からじっとその様子を窺うだけだ。
「しゃちょう、どうしよう? 」
「どうするって…このまま動き出すのを待つしかないだろう」
ハンディカムのズーム機能で既にナンバーは押さえてある。もしも、ここで2人が別れて帰ってしまえば尾行するのは難しい。しかし、今後の調査に参考に出来る事は間違い無い。
「おい、ひー! 」
「なに?? 」
「買い物へ行け! 」
「かいもの?なんで?? 」
「ここで2人じっとしてたら警戒されるかも知れないだろう。お前が買い物で売り場に降りれば少し流れが変わるかも知れない」
「え~おれ、なにしたらいいの? 」
「何でもいいよ。とりあえず色々見てこい! 」
「あくまで買い物」を偽装する為にひーを車から降ろす。ひーは並んでいる赤い車と2人が乗る白い小型車の傍を通り店舗へと降りていく。程なくしてひーから着信が入った。
「どうだ? 」
「うん、おとこのひとだったよ」
「そうか…で?どんな男だ? 」
「そこまではよくわからないよ」
「分かった。ご苦労、ひと段落着いたら連絡するから下でゆっくりしてろ」
「うん」
そんな話をしている最中に、男性が運転する小型車のバックランプが点灯したのが見えた。
「おい、ひー! 」
「なに!? 」
「白い車が動く!お前は入り口の近くにいて、その車がスロープを下りてきたら国道へ出たか裏口を出たか、そこだけ確認して欲しい! 」
「うん」
ほぼ間違い無く、この屋上にいるのは私と河野京子、謎の男性3人だけだろう。この車を屋上からまともに追いかけてしまえば、調査はバレバレになっても不思議じゃない。
イチかバチかの賭けだったが、ひーに出て行った方向だけ見定めてもらい、タイミングをずらして全力で追いかける。今、出来る事はそれだけだ。
「ザッ!ザッ! 」
「? 」
さっき事務所の中で聞こえた足音がまた聞こえた!意味が分からず周囲を振り返ってみるが何も無いし、今はそれどころじゃない。シートを横に倒して半分横になった格好で車の行く末を凝視している。
やがて頭をこちらに向けた白い車はゆっくりと動き始める。私は相手に見えるギリギリまでハンディカムを回し続けた。
「…… 」
短い時間だったが、ハンドルを握る男性の顔を確かに見た。先日見た「A」の幹部社員らしき男とは明らかに違う。
「マジか!?じゃあ誰だ!! 」
頭の中に数々の「?」を増やしながら、横をすり抜けた車を再びハンディカムに収める。やがてスロープを下り後ろ姿が見えなくなるタイミングで私も頭をスロープの方へと向け直し、いつでも急発進出来る態勢を整える。勿論、ひーとの電話も繋がったままだ。
「ひー!聞こえるか? 」
「うん、きいてるよ」
「そっち行ったぞ! 」
「うん」
徐々にスロープの方へと近付きながら、次の声を待った。
(続く)
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