「何すか!?ここで停まるっすか!? 」
Yくんが驚いたのも無理は無い。気合十分と言わんばかり、午前中から張り込んでいたにも関わらず、彼には消極的に映ってしまったのだろう。
「あぁ、ここで飛び出したら不自然だろう… 」
「まぁ、そりゃそうっすけど… 」
体調の悪さを隠し言い訳する私。実際には一度結構な距離が開いてしまうと、対象がどこかで長時間停まってくれない限り、道路上で追い付くのは難しい。分かってはいるのだが、この時の私は熱発しているのが自分でも分かるくらいの体調不良に陥ってしまっていた。
「何すか?社長、気分でも悪いっすか? 」
「…いや、大丈夫だ」
あまり多くは無かったが、数台の車が目の前を横切り、暫くすると眼前の信号が青に変わる。私は頭を振って気合いを入れ直すと、右折してアクセルを踏み込む。
唯一の救いは京子が乗る車のボディーカラーが「赤」で、前を走っていればすぐ目に付く事だ。しかし、私が走る車列にその「赤」は見えない。
「Yくん、念の為位置情報を確認しておいてくれ」
「っす! 」
可能な限りスピードを上げてみるが前の車が必要以上に安全運転で、2台前の車との差がどんどん開いていく。尾行する者にとって、これ以上のストレスは無い。
「何だよ…前の車、お年寄りかぁ? 」
尾行は言わば私達の都合なので、前の車を間違っても煽ったりする訳にはいかない。しかし、溜まりに溜まったストレスが余計なひと言を口走らせてしまう。
「大丈夫っすよ。概ねっすけど1㎞くらい先を北上してるっす」
Yくんが宥める様に呟いた。勿論、わき道に曲がる可能性は低いので、そう知らされてしまえば、溜飲は随分と下がる。私はひとつ大きなため息をつき、自分を落ち着かせる。
「社長! 」
「? 」
「ほら、山鹿市に入ってすぐの交差点あるっす。そこを菊池方面に右折したみたいっす」
「分かった」
昨日とは少し勝手が違う様だ。目の前を走っていた安全運転の車が左折してくれた事で、前方の視界が広がると同時に、私は更にアクセルを強く踏み込んだ。
国道3号線の両脇を、暫く続く田園風景を通り過ぎて大きな橋を渡り、やがて山鹿市中心部へと入る。Yくんが言っていた交差点が見えてきた所で、確認する様にYくんに尋ねる。
「あそこでいいんだよな? 」
「っす! 」
信号は赤に変わったが右折指示が青に点灯したので、私は滑り込む様に右へハンドルを切った。
「……信号2つ先のショッピングモールで止まってるっす! 」
「本当?そりゃ良かった… 」
思いの他、早く追い付くチャンスが巡ってきた事に少し安堵する。身体の痛みが少しずつ酷くなっていくのが分かるが、今はそんな事を言っている場合じゃない。
「あそこだよな? 」
「っす! 」
何気にそこへ掲げられている看板を目にした時、偶然なのかドラッグストアBの看板が目に入った。
(続く)
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